衆院補選で2連敗の安倍政権が消費税10%延期「不可避」の訳

 

安倍首相は「2017年4月に確実に消費税を10%へと引き上げる」と断言した。それを信じるに足る根拠はあるかと問われ、アベノミクスによる賃金上昇をあげた。

「来年、再来年、そしてそのまた翌年、賃金が確実に上がっていく。名目所得が上がり、そして実質賃金も上がっていく状況をつくっていくことによって、そういう経済をつくっていきたい」

この会見から1カ月も経たない12月14日に投票された衆議院選挙は、安倍首相の思惑通り、自民党が291議席を獲得、公明党と合わせて議席数の3分の2以上を維持した。前回同様の大勝だった。

「賃金を上げて確実に10%に」という安倍首相の発言とは裏腹に、その後も実質賃金は下がり続けた。それでも、安倍首相は国会で「リーマンショック級の出来事が起こらない限り消費税を引き上げる」と答弁を繰り返した。

雲行きが怪しくなったのは16年5月に開かれたG7の伊勢志摩サミット直前だ。同年5月16日の衆院予算委員会で馬場伸幸議員の「消費税の増税は延期すべきではないか」という質問に対し、安倍首相はこう答えている。

「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り引き上げていく従来の方針には変わりはないが、いずれにせよ適時適切に判断してまいります」

その翌日の参院予算委員会で、さっそく櫻井充議員がこの発言を取り上げた。

「ちょっと従来と変わったような御答弁です。この適時適切というのは一体何を指しているんでしょうか」

方針は変わらないとしつつも安倍首相は「時期等も含めて、判断は適時適切に行っていきたいということでございます」と答えた。

時期の判断すなわち「延期を示唆しているとも受け取れる発言だった。

このすぐあとの5月26日から開催された伊勢志摩サミットで、安倍首相が「リーマン・ペーパー」と呼ばれる資料を各国首脳に配って、「世界経済が危機に陥る大きなリスクに直面している」と強調したのは記憶に新しい。そんな状況とはとうてい思えなかったからだ。

実は、安倍首相が国会で「延期」を示唆する答弁を行っていたころ、今井秘書官を中心とする経産省ラインでリーマン・ペーパーの作成準備が進められていたのだ。

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