プーチンの意図
では、プーチンの立場はどうなのでしょうか?
ロシアは、中国、韓国と共に「段階的非核化」を支持しています。なぜ?「完全非核化」すれば、アメリカが北朝鮮を攻めてくると信じているからです。なぜ?
プーチンのトラウマは、「NATO拡大」です。1990年10月、ソ連は、西ドイツが東ドイツを編入することを認めました。西ドイツは資本主義陣営であり、東ドイツはソ連側の共産主義陣営だった。
ソ連は、条件つきで、西が東を吸収することを許可した。条件とは、「NATOを東に拡大しないこと」です。アメリカは、確約しました。
ところが、1999年、2004年、NATOは大拡大。いまでは、東欧のほとんどの国、そして、旧ソ連のバルト三国までNATOに加盟してしまった。
結果、ロシアは29か国からなる「反ロシア軍事ブロック」と対峙することになった。これがトラウマで、プーチンは、決してアメリカを信用できないのです。
そして、リビアのカダフィの例もあります。カダフィは03年、核兵器開発を停止し、欧米と和解しました。しかし8年後の2011年、NATO軍の空爆を受け、欧米が支援する反体制派に捕まって殺された。というわけで、プーチンは、「段階的非核化支持」なのです。
それって、つまりプーチンは、「北の核保有を事実上認めている」ということでしょうか?だって、金は、アメリカをだまそうとしていて、全然完全非核化する意志がないのでしょう?そう、プーチンは、言葉には出さなくても事実上北の核保有を容認していることになります。なぜ?
ロシアから西を見ると、29か国の超巨大反ロ軍事ブロックが迫っている。彼からみると東だって油断できない。アメリカの同盟国、日本、韓国がいるからです。
そんなプーチンから見ると、北朝鮮は、アメリカ国の侵略を止めてくれる「緩衝国家」です。緩衝国家は弱いより強い方がいいに決まっていますね。日本だって、かつてロシアの南下政策を止めるために、韓国が強くなってくれることを望んでいたのです。
というわけで、プーチン、口では、「北の非核化を望む」といいつつ「段階的非核化論」を支持。これは、つまり「北が核をもったまま制裁を解除し、経済支援できる状況にして、救う」という意味。(「では、なぜロシアは、そもそも安保理の北朝鮮制裁に拒否権を使わなかったのだ?」という疑問はでるでしょう。2017年、核実験、ミサイル実験を狂ったように繰り返す北は「絶対悪」の存在でした。これを守ることは、ロシアにも難しかった。そして、日本や韓国に、「核武装の口実」を与えないようロシアと中国は、表向き「北の核武装に反対」の立場をとらざるを得ないのです)。