金正恩がわざわざ訪露してまでプーチンと「世間話」をした理由

shutterstock_168061298
 

段階的非核化を主張するもアメリカからは受け入れられず、すがるようにロシアに出向きプーチン大統領と会談を行った北朝鮮の金正恩委員長。しかし合意文書等の発表もなく、あくまで「意見交換のみ」に終わり、その成果に対して疑問視する声も各所から上がっています。そもそもこの会談の意図はどこにあったのでしょうか。国際ジャーナリストの北野幸伯さんが自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で分析しています。

金正恩プーチン会談の目的は?

皆さんご存知と思いますが、金正恩が訪ロし、プーチンと会談しました。

プーチン氏、経済・人道分野での協力の可能性に言及 

毎日新聞 4/25(木)20:22配信

 

【ウラジオストク(ロシア極東)渋江千春、大前仁】ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による初めての首脳会談が25日、ウラジオストクのルースキー島で開かれた。2月の米朝首脳会談決裂を受け、朝鮮半島の平和体制構築について意見交換し、地域の安定に向けた連携強化で一致。金委員長が自国の非核化を含む「朝鮮半島情勢の共同管理」の意義を強調するのに同調してプーチン氏も半島問題での外交的解決で積極的役割を果たすと表明し、両国の協力関係を強調した。

金とプーチンの単独会談が2時間閣僚を交えた拡大会合が1時間半。計3時間半話し合ったそうです。

合意文書はなく、朝鮮半島情勢、非核化、経済・軍事協などについて、「意見交換したということですね。

金正恩の意図

金は、何のためにロシアに行ったのでしょうか?それを理解するためには、彼の現状を知っておく必要があります。北は、「段階的非核化を主張している。なんでしょうか?

いきなり完全非核化はしない。北は、少し非核化する。国連安保理は、少し制裁を解除する。北は、また少し非核化する。国連安保理は、また少し制裁を解除する。このプロセスを繰り返しながら、最終的に完全非核化をする。

もちろんウソです。金が少し非核化して、一部制裁解除が実現すれば、中国・ロシア・韓国から大金が流れ込んでくるでしょう。金が入ってくれば、核兵器を手放す理由がなくなってしまう。

アメリカ、日本は、あわてて再び制裁を強化しようとするでしょう。しかし今度は、拒否権をもつ中国ロシアが反対するので制裁を再強化できなくなってしまう

だから、金は、「段階的非核化」。

「もう一部非核化したのだから、制裁を解除してくれ!」とトランプにいった。しかし、アメリカは過去に何度もだまされた経験があるので、段階的非核化に応じなかった。結果、金の北朝鮮は、経済的に非常に苦しい状況になってしまった。

彼は、何を目指してロシアに来たのでしょうか?

一つは、もちろん「経済支援を受けるためでしょう。実際、北が存続しているのは、中国とロシアが制裁違反の支援をつづけているからです。もう一つは、プーチンとつながることで、アメリカをけん制すること。

米朝関係がこのままだと、北はじり貧になってしまいます。

しかし、核実験、ミサイル実験を再開すると、アメリカが攻めてくる可能性がある。その時、「俺のバックにはプーチンがいるぞ!」「俺のうしろには習近平がいるぞ!」というのは、一定の抑止力になります。トランプだって、中ロ北をまとめて敵にまわしたくないでしょう。

print
いま読まれてます

  • 金正恩がわざわざ訪露してまでプーチンと「世間話」をした理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け