国際交渉人が説く。ロシアが北朝鮮を生かしておきたい本当の理由

 

他の地域ではどうでしょうか?例えば、ベネズエラの未来を占うcasting voteは米ロがそれぞれに握っていますが、恐らく、ここでは実際のstakeは低いものと思われます。

表面的に見ると、1960年代のキューバ危機さながらの雰囲気がクローズアップされ、外交メディアは“はしゃいで”いるように見えますが、モスクワでの対応を見ていると、とても本気で対峙するつもりはなさそうです。ベネズエラ問題は、あくまでも対アメリカの“有効なコマ”であり、アメリカとの関係が改善したら、恐らく迅速に切りにかかるでしょう。あくまでも、対米外交において挙げられる争点の一つに過ぎません。

では、私も再三お話しているイラン問題へのロシアの対応はどうでしょうか。トルコと共にイランの後ろ盾として、トランプ政権によるイラン攻撃に対抗していますが、その理由は、『欧米に後れを取った中東進出の強い足掛かりとして』イランを味方に付けようと考えての一連の動きだと考えられます。

表面的には、アメリカによる一方的な言いがかりに対抗するイランへの肩入れと見せていますが、実際には、ロシアにとってさほどの案件でもありません。シリアも同じでしょう。ただ、プーチン大統領をリーダーたちが慕ってくれるので、外交的なコマとしてイランも扱っているように見えます。

中距離弾道ミサイルのコントロール・削減を謳ったINFからの離脱はどうでしょうか。射程距離500キロから5500キロメートルという、非常に幅広いrangeをカバーするミサイルで、先端に核弾頭を装着できるものですので、米ロ間の合意の破たんはさぞかし痛手かと思われましたが、実際にはアメリカが持ち出した中国の軍拡への脅威への共感から、表向きはアメリカの姿勢を批判しつつも、実際には“協力して”中国を巻き込んだ枠組みを作ろうと画策しています。

ですので、こちらも国際情勢において、クリミア問題への対応などで失点を重ねたとされるロシアの外交力の回復に寄与する材料となっており、非常にロシアは戦略的に動いていると思います。

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