国際交渉人が説く。ロシアが北朝鮮を生かしておきたい本当の理由

 

逆に北朝鮮については、国連安全保障理事会の制裁に直面して、公式には外貨の獲得手段を失い、経済は破たん寸前となっているわけですから、ロシアからの外貨流入は生き残りのための絶対条件とされていました(問題は、国連安全保障理事会の制裁ゆえに、両国としては、それを公言はできないという点でしょうか)。

しかし、実際には(公には)、プーチン大統領は金正恩氏に対して、アメリカと同じようなトーンでCVIDを求めたため、金正恩氏が予定を早めて帰国するという結果になったとされています。

金正恩氏にとっては、2月のハノイでの会談時同様、何の成果もないまま、平壌に帰った上に、習近平氏の代わりにプーチン大統領からの後ろ盾を得ようと目論んでいたのが、見事に肩透かしを食らったと言えます。表向きには、北朝鮮はもう八方ふさがりで、崩壊は秒読みというように見えますが、実際にはどうでしょうか。

瀬どり行為、そして安保理決議違反については、すでに韓国の罪が認識されていますが、ロシアは恐らく韓国よりは巧妙に北朝鮮に対して支援を行っており、実質的に北朝鮮経済の存続に関するcasting voteを握っているとされています。

なぜロシアは(そしておそらく中国も)北朝鮮を生かしておきたいのか。それも核武装した形で。それは、北緯38度線による【対米陣営防御線】を死守しておきたいからでしょう。

核武装した北朝鮮は鬱陶しい存在であると同時に、強ければ強いほど、ロシアにとっては、アメリカや日本に対する緩衝国としての利用価値があります。仮にアメリカが北朝鮮の攻撃に踏み込んでも、難民問題を除けば、ロシアにはほとんど負の影響は及びませんし、仮に北朝鮮の存在が無くなったとしても、それまでのプロセスで韓国などの周辺国にも多大な被害が出ているでしょうから、この地域でのロシア(中国)のプレゼンスは、さほど苦労せずとも向上します。それを理解しての“働きかけ”を現在、活発化しているようです。これに対して、日本も韓国も、特段有効な対抗策は打てていません。

print
いま読まれてます

  • 国際交渉人が説く。ロシアが北朝鮮を生かしておきたい本当の理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け