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忘れてはならない「日ロ悪化なら利するは中国」という不変の法則

北方領土「戦争奪還」発言で、野党6党により議員辞職勧告決議案が提出されたものの、今のところ頑として受け入れる意思がないことを表明している丸山穂高衆院議員。その進退ばかりに注目が集まっていますが、肝心の「日ロ関係」に及ぼしてしまった影響はどの程度のものなのでしょうか。日ロ関係に詳しい国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、両国間の関係に限らず、日本と米ロ中の国際的な緊張関係までも確実に悪化させた現状について、詳しく解説しています。

丸山穂高議員の発言と国益

丸山穂高さんの発言について、たくさん質問が届いています

丸山さんは何をいったのか?

大騒ぎになっているので、皆さんご存知と思います。しかし、テレビを見てない人もいるかもしれません。一応、「どんな発言をしたか」、毎日新聞から引用しておきます。

丸山議員「戦争しないとどうしようもなくないか」 元島民との主なやりとり

毎日新聞 5/14(火)16:13配信

 

日本維新の会の丸山穂高衆院議員(35)=大阪19区=が国後島訪問中の11日夜、北方領土問題について元島民の男性に「戦争をしないとどうしようもなくないか」「(戦争をしないと)取り返せない」などと発言した問題。丸山議員と男性との主なやりとりは次の通り。

 

丸山氏「団長は、戦争でこの島(国後島)を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」

 

元島民「戦争で?」

 

丸山氏「ロシアが混乱している時に取り返すのはOKですか?」

 

元島民「戦争なんて言葉を使いたくないです」

 

丸山氏「でも、取り返せないですね。戦争しないとどうしようもなくないですか」

 

元島民「戦争なんぞはしたくありません」「先生、やめてください」

 

丸山氏「何をどうしてですか。この島をどうすれば良いですか」

 

元島民「それを私に聞かれても困ります。率直に言えば返してもらえれば良いと思います」

 

丸山氏「戦争なく?」

 

元島民「戦争はすべきでないと思います。早く平和条約を結んで解決してほしいです」

 

丸山氏「逆に関係なく平和条約が欲しいんですか」

 

元島民「それは政府の方々に任せているわけで、あくまで私たちは交渉をやりやすくする下支えのために交流している。我々の署名運動などを今やめて元島民があきらめたと言われたら大変だから継続してやります」

 

丸山氏「取材はするけど何もしない人(マスコミ)に言ってほしい」

 

※11日午後8時前、国後島古釜布の「友好の家」で。訪問団員の音声データに基づく

丸山さんの発言の影響は?

この発言で、日本維新の会は丸山さんを除名しました。丸山さんの発言は、どんな影響があったのでしょうか?

まず、明らかに日ロ関係に悪影響です。安倍総理は昨年11月、シンガポールで、「日ソ共同宣言をベースに平和条約交渉を行う」と宣言しました。これは、これまで絶対視されていた「4島返還から2島返還への大きな転換であり譲歩でした。うまくいくかはともかく、安倍総理は、熱心に領土返還交渉」をしています。

そんなときに、丸山さんは、「でも、取り返せないですね。戦争しないとどうしようもなくないですか」という。「交渉してもどうせダメなので、戦争して取り戻そう」と。この発言について、ロシア側は

丸山議員発言、ロシア上院委員長が批判

 

ロシア上院のコサチョフ国際問題委員長は13日、北方領土へのビザなし交流に参加した日本維新の会の丸山穂高衆院議員が「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」と元島民に発言したことは「日ロ関係の流れの中で最もひどい(発言だ)」と述べ、批判した。モスクワで開催された日ロ知事会議の会場で記者団に述べた。コサチョフ氏は「そのような挑発的な発言ができるのは、存在する問題の解決を望まない人々だ」と語った。

(共同)

日ロ関係が悪化すると日本の国益になりません。こちらを、熟読してください。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

中国の戦略は、日米、日ロ、日韓関係を分断し、日本を孤立させ破滅させること。だから、日ロ関係が悪化すれば一番喜ぶのは習近平なのです。

もう一つ。「戦争をやって取り戻す発言は中国韓国のプロパガンダに力を与えてしまいます。中国の「反日プロパガンダ」、骨子は、

です。そして、彼らは、その「証拠」として、

などをあげていました。たとえば総理が靖国を参拝されたのは、2013年12月26日。その約2か月後の2014年2月19日、米ブルームバーグには、「日本のナショナリスト的愚行、米国は強い語調で叱責を」という社説が載りました。何が書いてあったのか?

バイデン米副大統領が事前に自制を求めていたにもかかわらず、安倍首相は靖国参拝を断行した。非公開の場でのこの対話の内容はその後、戦略的に漏えいされた。恐らく、安倍首相の尊大な態度を白日の下にさらすためだろう

安倍総理の尊大な態度」だそうです。

米国は反論すべきだ。それも通常より強い言葉で切り返すべきだ。4月のオバマ大統領のアジア訪問は、中国政府の外交的冒険主義を容認しないことをあらためて表明する良い機会であると同時に、安倍首相の挑発がアジアの安定を脅かし、日米同盟に害を及ぼしていることをはっきりと伝えるチャンスだ。
(同上)

安倍首相の挑発がアジアの安定を脅かし」だそうです。

日本が何十年もかけて築いてきた責任ある民主国家として受ける国際社会からの善意を、安倍首相は理由もなく損ないつつある。首相が自分でそれに気づかないのなら、米国そして日本国民が分からせてあげられるだろう
(同上)

これは、「靖国参拝に対するアメリカの反応です今回の話とは関係ないと思えるでしょうか?私がいいたいのは、以下のことです。

とまあ、こういうことになっているのです。たとえば、安倍総理の「東京裁判は勝者の断罪発言。これ、正直私も、「その通りじゃないか?」と思います。しかし、こういう発言は、東京裁判史観をつくったアメリカと日本の関係を破壊します。それで、喜ぶのは習近平。だから、日本の特に上のポジションにある方は、「東京裁判は勝者の断罪」とか、「侵略の定義はさだまっていない」とかいってはいけない。

丸山さんの発言、自民党も日本維新の会も、マスコミも皆非難しています。もしこれを非難しなければ、「なんだ日本にはこういう発言が許される土壌があるんだ。日本は、今はおとなしくしているが、やはり環境がかわれば何をするかわからない国だ」と考えることでしょう。だから、除名を決めた日本維新の会は、日本の国益を守ったのです。

注意すべきは

そうはいっても、私たちも丸山さんのことをいえないかもしれません。いえ、皆さんはいえるかもしれませんが、私自身はいえません。というのは、私自身も「失言する可能性はあるからです。正直いうと、それが怖くてツイッターをしていません。動画の撮影していても、「あ、今のはカットしてください」ということがあります。

そう、失言リスクは誰にでもあります。そして、失言によって、とても大きなものを失うことになりかねない。今回の話、結論は、「私たちも気をつけましょう」「私が一番気をつけよう」です。

image by: 丸山穂高 - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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