国際交渉人が説く。米国のイラン対応がエスカレートする真の理由

 

次に考えられる理由は、エネルギー政策における覇権争いです。皆さんご存知の通り、シェールガスおよびシェールオイルの算出が本格化したことで、アメリカはかなり久しぶりに世界のエネルギー輸出国になりました。これは、アメリカの中東へのエネルギー依存を“なくした”というようにも表現でき、アメリカは【エネルギー安全保障を確実なものにした】と言えます。

トランプ大統領とその政権がずっと掲げるAmerica First!が、【アメリカ国内が潤えばよい】という意味であるなら、ここで『おめでとう!』で終わりなのでしょうが、トランプ政権の『野望』はもっと大きく、【アメリカを1位にしたい】という目論見です。

ここで、中東地域における【アメリカの目論見】を邪魔するのがイランであるとの認識でしょう。イランの石油生産能力をフルキャパシティーまで高めた場合、国際的な原油マーケットにおいて、イランはアメリカと競り合うことが出来る稀少な存在となり得ます。 天然ガスまで含めると、イランの他にはロシアの存在がありますが、対ロシアでは、ノードストリーム2(天然ガスの海底パイプライン)の建設を邪魔しようとするだけで、国際政治上の力の均衡を考え、大きくは対決姿勢を取ろうとは考えていないようです。

しかし、イランは違います。これには安全保障上の見解と経済的な側面があります。安全保障面では、先述のイスラエルに関わる要素以外に、同じ産油国でもアメリカに“従順”なサウジアラビアや、今やアメリカがコントロールしているといっても過言ではないイラク(イランの隣国)、そして、オイルマネーで潤うUAEなどの【アメリカの同盟国をイランから守る】という目的があります。(注:別にイランは悪者ではないのですが)。

【核戦力を保持しているのではないか】と予てより噂されているイランが力を背景にした暴挙に出ないようにする、というのがどうも建前のようです。しかし、実際には、イランの様々な情報源と話してみても、これまでにイランが【恐れられているような野望】を持ったことはないようです。『地域が安定しており、それぞれが主権に基づいて共存している限り、イランは他国に関心はない』のだそうです。

しかし、実際には『つねにイスラエルから敵対視され、その背後にいる米国から敵視され、それにつられてスンニ派の諸国から敵対視され、攻撃を受けている限り、自衛のために、イランは“するべきことをする”』のだそうです。

アメリカが軍事的なプレゼンスも高める中、イランも大いに反発する姿勢で、今のところ、安全保障面での懸念は下がることはなく、厳しくなる一方です。

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