経済面では、このエネルギーの世界的覇権争いが大きなカギです。安全保障面同様、イラン側は、アメリカ側からの批判はただの言いがかりとの考えのようですが、アメリカにとっては、湾岸戦争以降、下がる一方の国際的な覇権を取り戻したいという政策の柱があるため、それを邪魔するものは徹底的にたたくか、一方的にプレッシャーを強めるという戦略のようです。(注:米中貿易戦争や核戦力、多国間の枠組みなども同じ)。
イランがここで突出したターゲットになるのは、安全保障および経済の両面で、常にアメリカが抱く【もし、隣国イラクの混乱に乗じて、イランがイラクを取り込むことがあったら、世界最大の産油国はイランになり、中東におけるサウジアラビアの影響力は地に落ち、アラビア半島の勢力地図および覇権はイランに移る】のではないかという、妄想にも似た脅威です。
そのために、アメリカはイランを敵対視し、国内のユダヤ人勢力の後押しもあり、イスラエルに肩入れし、そしてイランに反対するスンニ派の国々を突かず離れずの姿勢でサポートするようです。それにイランは真っ向から対抗しているため、緊張状態が激化していくという図式です。 今週に入り、その緊張状態は極限状態一歩手前まで高まっているように思います。イラクの首相が米・イランの間での仲裁を買って出ていますが、両国からは歓迎されていません。アメリカにとってイラクは、まだイランの影響がどの程度浸透しているのか測りかねていますし、イランにとってのイラクは、どうもアメリカの傀儡に映っているからです。
今のところ、特段、効果的な解決策、つまりアメリカとイランの双方が、【揚げた拳を下ろす】ためのきっかけが見つからないでいます。 22日にはトランプ大統領は、北朝鮮に対しても『次のいかなるミサイル発射も許容しない』と発言し、対決姿勢を再度鮮明にしていますが、ここにイランとの衝突もありうるとしたら、アメリカの軍事的な戦略ももしかしたら破たんしかねません。(通説では、2正面で戦争を行うことは不可能とされるから)。
もしそうなったら、日本を含むアジアの安全保障のバランスも、欧州における安全保障のバランスも、世界中で緊張の中で保たれている安全保障も、一気に音を立てて崩れ去るかもしれません。
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