自分も日々も、変えられる。精神科医が紐解く映画「キングダム」

 

純粋にストーリー的に感動した重要な点

貧しいときの前向きさ

マンガのストーリーは「秦の始皇帝と友人である信の一生」なわけですが、この映画で描かれているのは、「若いころの秦の始皇帝=秦王反乱を行った弟を討つ」というところまで。そして主役である信は、当初は奴隷だったところ、全力で立身出世を願い、結果的に、王と合流します。そのため映画の9割くらいの時間、彼は王を助けるため、様々な敵と全力で戦っていたわけですが…。

個人的に一番素晴らしいと思ったのは、映画開始から10分くらいの、彼がまだ奴隷として働いていたときのシーンです。

奴隷としての仕事は、主に「山からマキを集めてくること」。しかし彼はそこで、自ら大量のマキを背負って、山の中を歩いていました。それには主人も驚くほどでした。目的はもちろん「体を鍛えて、強い男になるため」です。

シーンとしては数秒ほどではありましたが、僕の心の中に、一番強烈に残っています。そのインパクトは、映画の9割を占める「王と合流したあとの、敵とのバトルシーン」以上です。なぜか。

実際、立身出世を願っていた彼が、王と共に戦えることになったら、それは頑張って当然です。おそらく、誰だって全力で戦うはずです。目の前にハッキリと出世のチャンスがあると分かりますから。ここで頑張るのは「当然」なのです。偉いことではありますが、誰でもやれることなので、そこまで偉くない。

しかし「王とまだ会ってもいない、しかも奴隷という立場である」というときに「将来の成功を夢見て奴隷の仕事であるマキ運びを全力で前向きなトレーニングに変えていく」というのは、誰にでもできることではありません。

おそらく大半の人なら、「何で俺は奴隷なんだ」「こんな人生イヤだ」なんて考えてスネたり、「マキ運びなんてイヤだ、俺にはもっとふさわしい仕事が…」なんてグジグジ考えて、ただ日々を怠惰に過ごしてしまうのではないでしょうか。

しかしすべてを将来のためと考えて、自分なりにアレンジしたり、自分なりのゲームやミッションのようにとらえて、前向きに立ち向かう…。それができる人こそが、何より成功に近づいていくわけです。

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