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東京ですら10軒に1軒が空き家。迫る「日本中が廃墟で溢れる日」

総務省の最新調査報告で、日本全国の空き家率が過去最高を記録する一方、新築住宅着工件数も増加中という事態が浮き彫りになりました。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、総務省の統計を更に掘り下げ、日本の住宅市場が抱える問題点を指摘しています。

空き家は29万戸増の346万戸、空き家率は13.6%

こんにちは!廣田信子です。

なぜ、都心部の高経年マンションに外国人が増え続けているのか」では、大都市、特に東京への人口集中はますます高まる傾向が顕著だという話をしました。

では、空き家はどうなっているか…です。

総務省は4月26日、2018年10月時点の住宅、土地統計調査の結果(速報値)を発表しました。全国の空き家は過去最高の346万戸、5年前の前回調査から26万戸(3.2%)増えました。住宅総数に占める空き家の割合空き家率過去最高の13.6%(前回より0.1%アップ)となりました。空き家率は、首都圏など都市部よりも人口減少に悩む地方で高くなる傾向が見られました。

都道府県別の空き家率(別荘など二次的住宅を除く)が最も高かったのは和歌山県の18.8%で、徳島18.6%、鹿児島18.4%が続いています。首都圏は、埼玉10.0%、神奈川10.3%、東京10.4%、千葉12.6%でした。人口が集中すると言われる東京でも1割を超える空き家があるのです。

空き家には、賃貸売買の予定がある住宅と将来の使い道が曖昧な「その他住宅」があります。空き家率の計算には、前者は含んでいません。前者のうち、賃貸用住宅の空き家は431万戸、前回から2万戸増えています。このことは、地主の相続税対策のための借家経営というビジネスモデルで、田舎や都市郊外に大量に建てられた賃貸マンションの空室が増えている状況とも合致します。

その一方、売却用住宅の空き家は29万戸と1万戸減っています。低金利の継続で、借りるより買った方が月々の支払が安い…というような感覚での住宅購入が好調だということしょうか。問題なのは、賃貸・売買の予定がなく、長期不在の住宅や取り壊し予定の住宅等の空き家が347万戸と前回調査から29万戸(9.1%増加したことです。

これに対し、空き家の増加幅は、13年調査の36万戸から今回調査の28万戸と縮小しているとした見方もありましたが、急速だった空き家増加のスピードが少し弱まっただけで、空き家が増加していることには変わりないのです。

4月26日に公表された18年度の住宅着工戸数は約95万戸と前年度より0.7%多くなっています。空き家が増えていても、人口が減少に転じても、どんどん新たな住宅が造られている現実は変わっていません。

供給過多だから老朽化が著しい空き家は放置される。今、全国の自治体がその後始末に追われているのです。15年に空き家対策特別措置法が施行されて以降、市区町村が修繕や撤去所有者に勧告した物件は昨年10月初めまでで908件、解体等代執行に踏み切った物件も118軒あります。解体費は所有者に請求するのが原則ですが、多くの住宅は持ち主すらわからないのが実情です。

マンションの空室が増えるのも、どんどん新しいマンションが供給されることが大きな要因のひとつです。空室の増加は、管理費等の滞納に繋がり、資金不足で維持管理ができないという悪循環を呼びます。

過去記事に書いたようにマンションではじめて解体等代執行に踏み切る事例が出ます。

「廃墟マンション騒動」に見る、日本中でアスベストが飛散する日

滋賀県野洲市の廃墟マンションです。現在手続きが進行中ですが、その実態はどうなのか、行政と区分所有者たちはどのような関係で手続きを進めるのか、来週、現地視察に伺う予定です。

こんなことになると、いかに大変なのかを知ってもらうことで、管理不全対策への自治体の本気の取り組みに繋がってもらえれば…と願います。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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