失敗なら国際秩序崩壊も?米が安倍首相に期待する仲介役の重要度

 

そこで最後の望みを与えられる存在は、地域のバランサーであるトルコになりますが、こちらも最近、エルドアン大統領が行っている危険な火遊び(米ロ間のライバル関係を弄ぶ)ゆえに、以前のように、その影響力を発揮できないかもしれません。その一番の理由は、アメリカ/NATOとの間にできてしまった深い溝です。

公式にはなっていませんが、イスラエルとイランの核戦争に備えて、抑止力としての核戦力が両国に向けて配備され、有事の際には無力化のために使用されるらしいという役割が、トルコのNATO戦略基地に与えられていると言われますが、アメリカとNATOとの確執を見ると、今もそのcounter-balanceとしての役割を担っているか否かは分かりません。

では、もう一つの大国であり、最近関係が近しくなっているロシアはどうでしょうか?ロシアとしては中東地域への参画に出遅れたトラウマから、地域への進出の足掛かりとしてイランやトルコを用いていますし、両国に戦力の供与も行っていますが、いざ、イランとアメリカ・イスラエルの衝突が起こった場合、イランやトルコの後ろ盾として参戦してくれる可能性は皆無でしょう。

それは、イランも、北朝鮮も、そしてベネズエラも、ロシアにとっては、アメリカの軍事的なプレゼンスを分散させるための“コマ”に過ぎないからです。恐らくトルコも同じかと思われます。ロシアは、睨みは聞かせつつ、アメリカの軍事的な戦力分散が起こったら、恐らく本当の懸案事項であるウクライナの攻略を本格化させることになるでしょう。この件については、また別の機会に。

ただ、ロシアのそのような戦略を読み解いているのか、今週に入って、アメリカの対イラン戦略の“変化”が見られます。ボルトン補佐官やポンペオ国務長官のイランに対するhardlinerの意見は変わりませんが、トランプ大統領自身は、『誰も悲劇を見たくはないだろう』と【軍事的な行動がもたらす破壊的な結果】に言及して警告はしていますが、訪日に際して『望むなら話し合いに応じる用意もある』と対話の可能性にも言及するなど、事態のエスカレーションの回避に動いています。

後で触れたいと思いますが、今回の訪日時に『安倍総理による米・イラン間の仲介に期待している』と発言したことも、仲介嫌いのアメリカ外交からするとサプライズ以外何でもありません。このトランプ大統領の“軟化”は本心か、それともdeal makingのための“エサ”なのかはなかなか読み切れません。

print
いま読まれてます

  • 失敗なら国際秩序崩壊も?米が安倍首相に期待する仲介役の重要度
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け