FRBの利上げの意味すること
米中貿易摩擦により需要増が期待できないので、企業は設備投資を控えてISM鉱工業指数が低下してきていたが、とうとう5月の雇用統計7.5万人増となり、予想18.5万人増から見ると非常に低いことになってしまった。
9年ぶりの低水準であり、一時的な現象の可能性もあるが、6月雇用統計も同様なら景気後退が明確になり、パウエルFRB議長も、7月の利下げを考えざるを得ないし、年後半にはQE4についても検討することになる。
この雇用統計により、ドル金利2.01%に急落し、ドル安円高で107円台に突入し、反対にNY株価を2.6万ドルまで上げた。と同時に、トランプ・ツイートで米国とメキシコが移民問題で合意すると言う。
景気の悪化は、貿易赤字の縮小にも繋がり、4月の貿易赤字は前月比2.1%減の507億9,100万ドルになった。モノの輸入が15カ月ぶりの低水準となり、民間航空機を中心とした輸出の落ち込みを相殺した。それと、5月米企業の人員削減計画の数が、前月比46%増と人員削減に向き始めている。米国もリセッションの方向になっている。
パウエル議長は、景気後退に直面して、金融緩和や量的緩和QEが、今や伝統的な金融政策になったと言い、金融緩和なしの政策に戻れないことを暗示した。流動性相場が永遠に続くことになり、実績相場に戻れないことがハッキリしたようである。景気維持のために、金融緩和政策を永久に行うという。
この発言で市場の雰囲気が変化した。利下げ催促相場になってきた。現時点は、利下げ期待から株価は上昇している。しかし、利下げが実施されると、次の利下げを催促する株価下落を起こすことになる。
米国は今後、利下げを複数回、繰り返した後、QE4になるが、利下げでの株価上昇は一時であり、その後催促相場で下落するので、QE4が始まるまでは、株を買ってはいけないようだ。米国株をしている人は注意が必要である。
日本で30年間金融緩和をしても、インフレが起きていないので、米国でも大丈夫であると見なしているが、日本は経常収支が黒字で、日本国債のほとんどを自国で消化できている。移民を入れて、労働賃金の上昇も緩やかにしている。観光客を増やして、景気を維持させている。
しかし、米国は経常収支が赤字であり、その上に米国債は、海外勢が消化している。その上に移民を止めて、労働賃金も上がっている。中国政府は米国への旅行を控えるように国民に勧告して、観光客も減少する。この違いで、どうなるのかが今後の見物である。
金利が下がりドル安になり、輸入物価が上がりインフレになる確率が高いように思う。ドル安ということは、円高になり1ドル=105円になる可能性もある。そして、もし、インフレになると、利下げはできず、ドル高にするために、逆に利上げが必要になる。
経常収支が赤字であるのに、減税をやりすぎているので、国債発行量を増やす壁建設やインフラ整備など財政出動もできないことになる。景気後退時のインフレ(スタグフレーション)になる確率も高い。
深刻なスタグフレーションになると、戦争経済で供給力を上回る消費を起こして解消するしかなくなる。米国経済が戦争を志向するような悪い方向に向かうのでないかと心配である。戦争が開始すると株価は上がることが知られている。
そして、豪州は金利1.5%から1.25%に下げたし、インドも下げ、ECBも利上げを来年から2020年まで先延ばしにした。このように世界的に利下げが始まった。