日銀の方策
しかし、日銀は世界的な利下げ方向でも、金利は-0.1%であり、これ以上の金利低下ができずに、金融緩和ができない状態であり、円高になりやすくなっている。それでも金融緩和をすると、日銀ETF買いの増額や国債買入れの増額しかない。国債はマイナス金利であり、それほどには買えない。
そして、日銀は、FRBより大胆で市場に日銀ETF買い介入しているために、株価が経済の体温計として機能せず、適正株価がわからなくなり、よって、市場参加者が減り取引量が減ってきている。この状態で買い増しても、市場参加者が居なくなるだけである。
市場参加者を増やそうと、金融庁は株による資産形成を促すが、国民はそっぽを向いている。
日銀は、市場を制御しようとして、株の買いしかしないことで、株の適正価格形成に失敗している。市場参加者がいなくなり、市場としての価値がなくなる方向である。事実、市場取引の7割を行う海外投資家は、持ち株を売却して魅力がないと市場から出て行っている。
どちらにしても、株価は景気後退なるので、下落トレンドになる。しかし、日銀ETF買いで株価は、あまり落ちないかもしれないが、逆に上がりもしない。過度な日銀介入で、株価が動かず、東京市場の緩やかな死の道に入ったかもしれない。
米中が冷戦状態に
米国は、台湾に戦車など武器を20億ドル超売却すると発表したが、これに対して、中国が強く反発している。このような米国の行動に対して、人民日報が「勿謂言之不預」(警告しなかったとは言わせない)と中国は、「開戦警告」を発表して、米国と戦う姿勢を明確にした。冷戦の開始を中国は宣言したことになる。少なくとも、持久戦に持ち込んで、トランプ後での解決を目指すようである。
そして、この宣言は、中国国内向けでもあり、米国への渡航の注意勧告などの指示に逆らう人は、非国民であるということになる。締め付けが厳しくなる。強力に習近平の独裁体制を確立するようである。大学の学問の自由も制限して、大学教授の共産党批判、政策批判でも拘束する事態になっている。
そして、中国はロシアとの関係を強固にするために、習近平国家主席がモスクワに飛んで、「中ロは世界の大国として、国連を中心とする国際体制を断固として守る」と連携強化を訴えた。プーチン大統領は「主な国際問題で両国の立場はほぼ一致している」と述べて、中国と中露同盟を確実にするようである。中国はロシアから地対空ミサイルや戦闘機などを積極的に購入しているが、より一層、安全保障面での結びつきを深めるようだ。
これに対して、トランプ米大統領は、G20後に対中関税を残り3,000億ドル分にもすると述べた。これに対して、中国はレアアースの対米輸出を制限する事やボーイング機100機購入キャンセルを検討している。また、米国の輸出制限をするココム的な仕組みを作り、そのリストに最先端の中国企業を入れたが、それに対して中国も「信頼できない」とみなす最先端米国企業のリストを作成するとした。このように、相手の制裁に対して、それと同等な制裁を行う状態になっている。ピンポン制裁とでもいうのであろうか?
このことを受けて、ベンチャーキャピタルも米中の先端企業に投資できなくなったようだ。先端企業投資が終わったことと、独占禁止法の適用も検討されて、FANG株の上昇も終わったようである。
同時に、世界的な景気後退になり、中国でも金融不安が出てきたようである。内モンゴル自治区の金融機関である包商銀行を政府の管理下においた。不良債権の回収ができずに倒産の可能性がありと判断したのであろう。この管理下に入る銀行が増えると、中国も金融恐慌の危険になり、米国との交渉を進めざるを得ないことになるかもしれない。しかし、反対に対米強硬策で国民をまとめて乗り切ろうとすると、より反米にシフトすることになる。現時点では、後者の可能性が高いと見る。
ということで、軍事的な面でも同様な対応になってきている。今後、米中間での冷戦が熱戦にならないように注意が必要になってきた。熱戦になったら、日本は米国側について、米国と中露との核戦争に巻き込まれることになる。それだけは避けるべきである。
2008年リーマン危機を乗り越えるための金融緩和が、永久化することになり、1929年の大恐慌ののち、1930年ストーム・ホーレー法がトランプ関税になり、1933年にルーズベルト大統領で社会主義化して、1941年第2次世界大戦に突入する歴史を繰り返していると見た方が良い。
ということで長期にわたる米中の冷戦というシナリオが「ニュー・ノーマル」になり、この冷戦で台湾、韓国、そして日本が負け組になる。米中に跨る世界的なサプライチェーンに深く組み込まれていたが、その崩壊で、再構築が必要になる。このため、一時的に3ケ国の企業収益が大きく減益になる。