先日のトランプ大統領の訪日時にどのようなやり取りが具体的にあったのかは知る由もないところですが、安倍総理大臣がイラン訪問する旨を持ちかけた時、何かしらのディールが両首脳の間であったのではないかと私は見ており、恐らくトランプ大統領から安倍総理に対して、ある程度のフリーハンドとジャパンイシューの話し合いを許容するような動きがあったのではないでしょうか。
日本国内のメディアも海外のメディアも、今回の安倍総理のイラン訪問がbreakthroughとなるとは報じていませんし、恐らく私もそうはならないと考えていますが、今回の訪問は、日本外交にとってとても大きなチャンスを生んでいると考えています。
イランのアメリカに対する警戒感と対抗心が揺らぐことにはならないでしょうし、アメリカも国内外への体裁上、態度を緩和させることもないですが、今回、日本の安倍総理という【クッション】を入れることで、最悪の事態を防止するための“弁”が確保されたと見ています。
今回の訪問を受け、今後、日本とイランの間の交流は盛んになるでしょうし、恐らく安倍総理は、シャトル外交という名が相応しいと思われるほど、テヘランとワシントンDCを行き来し、東京に要人を招いて事態の打開を図るという【仲介役】の立場を確立できるものと考えます。
同時に、日本にとってもイランにとっても、経済的な利益は確保されますし、同じく友好的な関係にあるイラン周辺のアラブ諸国やイスラエルとの間にも、より強い信頼関係と絆が築かれるのではないかと期待しています。もちろん、今回の訪問できちんとそのきっかけを総理が作れるのであればという条件付きになりますが。
アメリカとイランの直接対話が現段階では非常に困難で、欧州諸国もすでに対アメリカ、対イランの影響力が著しく低下している中、日本がアラブ・中東地域の安定のために果たせる役割は、これまでになく大きいと思われますし、私も各国からそのような声を聴いています。
あとは日本政府および企業をはじめとする民間勢力が、この機会をいかに活かすことができるかです。いろいろと懸念もあるでしょうが、考えて迷っているくらいなら、まずは動いてみてほしいと期待しています。その先に見えるのは、日本が安定に寄与した新しい国際秩序かもしれません。
image by: 首相官邸