韓国の文在寅政権が苦境に立たされています。外交面では習近平中国国家主席の突然の訪朝決定により北朝鮮問題での発言力の低下は必至となり、内政に目を転じれば度重なる失政のため海外に逃げ出す企業が続出という惨状。今後韓国にはどのような行く末が待っているのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんが自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、各国を取り巻く状況を詳述しつつ分析しています。
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年6月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【日中韓】6月末のG20で没落していく習近平と文在寅
世界の外交が大きく動いています。日本で開かれるG20を前に、米中問題は言うまでもなく、アメリカとイラン、北朝鮮問題などで各国がさかんな動きを見せ始めています。
安倍首相は先週、イラン側の招きで同国を訪問し、最高指導者や大統領と会談しました。アメリカとの対立が深まるなか、イランとしても日本に対して仲介役を期待したのでしょう。
しかし、安倍首相の訪問にあわせたように、オマーン海上で日本のタンカーが襲撃され、アメリカはこれをイランの仕業だと断じました。もっとも日本はアメリカに対してその証拠の提示を要求しています。
もちろん攻撃主体がイラン側であった可能性もありますが、その場合、イランの穏健派ではなく保守派だろうと思われます。2014年に中国の習近平主席がインドを訪問した際、人民解放軍が中国との国境に接するラダック地方に突然越境してきて、中印両国の軍隊が緊張関係に陥ったという「事件」がありました。
当然、インドを訪問していた習近平の面目は丸潰れとなったわけですが、そのとき、習近平に不満を持つ人民解放軍が、習近平の顔を潰すためにわざと仕掛けたという説がありました。実際、習近平は人民解放軍を7大軍区から5大戦区へ大幅に改変、兵士も大幅に削減するという改革を断行しています。
そのような「前例」からすると、安倍首相の訪問中にホルムズ海峡で騒ぎを起こして、アメリカとの対決姿勢を強めたいというイランの保守派が仕掛けたという説も成り立つでしょう。
いずれにせよ、ホルムズ海峡が封鎖されれば、イランのみならず中東全体からの石油輸入がストップしますから、日本の野党も「安部外交の失敗」と揚げ足をとったり、代案もなく「反原発」ばかり言っていないで、もっと建設的な話をすべきでしょう。
今回のイラン訪問を「失敗」だとして大喜びしたのが韓国紙です。中央日報は「『外交仲介者安倍』誇示しようとしたが…米国とイランの間で困惑する日本」という見出しで、「『安倍首相の仲介外交失敗』が野党の主な攻撃材料になるものとみられる」と報じています。
● 「外交仲介者安倍」誇示しようとしたが…米国とイランの間で困惑する日本
しかし、そもそもイランと日本との関係は悪くありませんが、とはいえ日本がアメリカとのあいだの仲介者になる絶対的な必要性もないですし、隣国でもありません。日本のメディアでは、アメリカのパシリとなってイランを訪問して、イラン側から反発を食らったかのような報道や解説もありますが、もともとイラン側からの招待での訪問です。イランの招待に応じて訪問したことは、共同記者会見でロウハニ大統領も謝意を述べています。
もちろん、緊迫する米・イの関係のなかで、安倍首相への期待はイラン側にもアメリカ側にもあったでしょう。とはいえ仲介が成功する保障もないなかで、あえて安倍首相は訪問したわけですから、むしろ世界からの求心力は高まったと見るべきでしょう。安倍首相はG20を前にイランを訪問した唯一の先進国首脳という位置づけになるからです。
しかし、日本の野党やマスコミはこれを「失敗」として、大々的な政権批判につなげようとしています。
それよりも、「米朝問題の仲介者」を任じていた文在寅大統領の存在感が、最近まったくないと思っていたら、習近平の6月20日、21日での北朝鮮訪問が発表されました。言うまでもなく、G20を前に金正恩と会談することで、不調に終わった2月の米朝会談後の朝鮮半島問題のキャスティングボードを握ろうというのでしょう。
G20では米中経済対立も大きな焦点の一つですが、北朝鮮問題でアメリカへ何か恩を売ることができれば、米中交渉のひとつの武器になるからです。しかも、香港では刑事事件容疑者を中国本土へ引き渡すことを認める「逃亡犯条例」をめぐる反中デモが200万人にも膨れ上がってますます激化しているため、アメリカのポンペオ国務長官はこの問題をG20で提起するとしています。
● トランプ氏、習近平氏に香港デモ問題提起へ G20で…国務長官表明
もちろんこれに対して中国は反対を表明し、一方的で先入観に基づいた根拠のない非難を行い、中国の内政に干渉するなら断固反対する」と反発しています。
こうしたさまざまな対立軸があることから、中国としては突然の訪朝を決めたのでしょうが、はたして思惑通りにいくでしょうか。逆に言えば、追い詰められた窮余の策という感じが否めません。
とくに香港問題は来年1月の台湾国政選挙・総統選挙にも影響を及ぼすでしょう。台湾では「今日香港、明日台湾(今日の香港は将来の台湾だ)」という言葉がよく持ち出されるようになっています。民主国家である台湾では、中国との「平和的統一」が地獄への道だという意識が高まっているのです。
そして言うまでもなく、「明日の台湾は、明後日の沖縄」でもあります。中国が台湾を取った次の狙いが「琉球回収」であることは、明らかだからです。
私は5月末の段階から、香港のデモについてはメルマガで論じてきました。一時は香港に諦観が広がっていましたが、しかし香港人は諦めなかったようです。
● 中国化という地獄。一国二制度の甘い罠で餌食にされた香港の絶望
● 香港200万人デモが証明した、中国「一国二制度」のまやかし
それはともかく、習近平の訪朝で文在寅大統領は北朝鮮問題ではまったく発言力がなくなってしまうことでしょう。
もともと2月の米朝首脳会談が物別れに終わった後、韓国は北朝鮮に再度の南北首脳会談を申し入れましたが、まったく無視されていました。北朝鮮からすると「言っていたことと違う」ということなのでしょう。文在寅は「6月開催も不可能ではない」と発言し、南北首脳会談実現でG20での存在感アップを狙っていましたが、中国に先を越されてしまった形です。しかも北朝鮮からの招待です。G20前の南北首脳会談は日程的なことを考えるとほとんど無理でしょう。
● 6月中の南北首脳会談 「物理的に不可能でない」=文大統領
しかも、G20における日韓首脳会談について、すでに5月中旬から、西村官房副長官は「困難」だと発言しており、韓国にとっては絶望的な状況です。韓国は「主催国と二国間会談を行えない唯一の国」になりそうです。
いわゆる徴用工判決をめぐり、日本政府が韓国政府に設置を要請していた仲裁委員会についても、韓国政府は応じる姿勢を見せておらず、韓国側が拒否すれば、日本政府は国際司法裁判所へ提訴する方針を表明しています。そうなれば、日韓首脳会談など絶対に不可能になるでしょう。
● 韓国、応ぜぬ見通し 徴用工判決めぐる仲裁委員任命、18日に期限
すでに韓国では経済破綻について「来るべき時が来ている」と論じています。外国からの対韓直接投資が今年の1~3月期で前年同期比35.7%も減少しているのに対して、韓国企業の海外直接投資額は同期比44.9%も増加しているのです。
つまり、外国からの投資が大幅に減る一方で、海外へ逃げ出す韓国企業が増えているということです。しかも韓国の大企業のみならず、中小企業までもが海外に生産基地を移していると報じられています。韓国政府による無理な最低賃金の引き上げや、さまざまな規制が完全に裏目に出たかたちです。
もっとも、文在寅大統領はわざと韓国経済を崩壊に導き、北朝鮮との経済格差をなくして統一しやすくしている、という見方も出ています。そういえば、国際的な孤立も、北朝鮮とスタイルを合わせているのかもしれません。北朝鮮からも無視されて国際社会での存在感がなくなることで、韓国内で「北朝鮮こそ正当政権」という雰囲気を醸し出すという、深謀遠慮があるのかもしれません。
話は変わりますが、先にも述べた日本の輸送船襲撃は、シーレーンの重要性を再認識させる事件でもありました。多少の誤差はあるものの、台湾海域を通過する日本の船舶は毎日平均300隻にものぼります。
南シナ海や東シナ海だけでなく、台湾海域も日本にとっては、生命線そのものです。アメリカの故トルーマン大統領は、朝鮮戦争(韓戦)当時、アメリカ第7艦隊を台湾防衛のために派遣しました。当時、マッカーサーは台湾を不沈空母にたとえ、その重要性を本国アメリカにアピールしていました。
ますます混沌としてきた世界情勢のなかで、日本にとって台湾は日本生命線であり、台湾海峡を含むシーレーンを守ることの重要性に、もっと日本の政治家も気づき、手を打つべきです。
image by: 문재인 - Home | Facebook
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