欧米メディアは概ね、安倍外交に無関心だったといえるが、なかには次のような記事を掲載した新聞もあった。
【ワシントン共同】米紙ウォールストリート・ジャーナルは14日、安倍晋三首相のイラン訪問中に日本のタンカーが攻撃を受けたことに絡み「中東和平における初心者プレーヤーが痛みを伴う教訓を得た」との見出しで報じた。…同紙は、タンカー攻撃で緊張が高まる中東情勢を踏まえ「日本の指導者による41年ぶりの訪問を終え、米国とイランの対立関係は以前より不安定になった」と論評。
なんとも冷ややかな見方だが、安倍首相の帰国後、アメリカとイランの緊張がいっそう高まっているのは事実だ。
米国はタンカー襲撃をイランの犯行と決めつけ、米軍1,000人の増派を発表した。これに対しイランは、低濃縮ウランの増産で核合意履行の一部停止をさらに進める構えをみせている。
イスラエルロビーの影響なのかどうか、理解できないトランプ大統領の核合意離脱と、それにともなう経済制裁。イランがミサイル発射実験を続けていることや、革命防衛隊の活動がイスラエルやサウジアラビアの脅威となっていることなど、核合意のアラを探せばいくらでもあるが、少なくとも現実的な平和維持策であるのは確かだろう。
オバマ氏がまとめたから気に食わないと言わんばかりの独断的な合意離脱に、米国以外の核合意当事国である英仏独ロ中の各国は反発しただろうが、具体的な対応策を示していないのも事実だ。
テヘラン大学のモハマド・マランディ教授は言う。「日本は原油の輸入を停止し、トランプ政権に従った行動をとっている。日本にできることは、アメリカに対して核合意に復帰し、約束を守るよう説得することだ」(NHKニュースウエブより)。
これがイランの日本に求めることだったはずである。だからこそ、ザリーフ外相が6月12日からイランとの友好関係を維持してきたトルクメニスタン、インドとともに日本を歴訪したのであろう。とくに安倍首相にはトランプ氏を説得するよう強く要請したに違いない。
ところが安倍首相は、トランプ氏にイラン訪問のお伺いを立てて了解をとっただけで、突っ込んだ話し合いなどできないままハメネイ師らに会ったとみえる。とどのつまり、合意の履行停止を進めようとするイラン側に自重するよう求めただけに終わったのだろう。これではとても“仲介役”とはいえない。
真夏の国政選挙目前で外交力を見せつけたいという安倍首相の思惑は見事に外れた。むろん、これでも安倍首相が国際舞台の主役級プレーヤーになったと喜ぶのは自由である。
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