桜井 「もう、自分たちでやるしかないなと。確かに杜氏たちが来ないと聞いた時はショックでしたし、新しい人を探さなければいけないとも思いました。
しかし、これまでも業界の慣例を無視して、私はもっとこうしてほしい、ああしてほしいといろいろと注文を出してきました。杜氏もそれを受け入れて一緒につくってきましたが、もう1度そんな関係を一から築くことが億劫でしたし、それをよしとする杜氏が現れるか分かりませんからね」
──それで自分たちでつくろうと決意した。
桜井 「はい。社員たちがフル稼働で酒づくりに挑戦しました。もう毎日とんでもない失敗ばかり起こっておかしかったですよ(笑)。
一度、発酵中のもろみの温度を棒温度計で測っていたら、その中に落としてしまったと。たまたま私は外出していましたが、電話がかかってきて『社長、どうしましょう』って(笑)。もう国税庁やら、あちこち相談しましたが、結局搾ったら割れずに出てきたので、ほっとしました(笑)。
その年から杜氏制度を廃止して、自社社員による酒づくりが始まったのですが、おかげで冬場だけでなく、年間通じて酒づくりができる体制を敷くことができました。
蔵内を年中5℃に保つよう設備投資もしましたが、生産能力がぐんと伸びましたよね」
──ピンチを飛躍のきっかけにされたのですね。
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