有能高名な経営者の共通点は、これまでもあらゆるところで語られてきています。そんな中のひとつに「大ぼらをふく」という面もあるとするのは、無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』著者の浅井良一さん。浅井さんは今回、日本を代表する経営者が口にしてきた様々な「大ぼら」を紹介すると共に、その効用を解説しています。
「大ぼら」をふく
日本電産の永守さん、ユニクロの柳井さん、そしてソフトバンクの孫さんの3人は「大ぼら3兄弟」なのだそうです。そのなか、最も「小ボラ」なのが永守さんだと本人が言っています。
永守重信さんは、仲間3人とゼロから創業し、今や世界一のモーターメーカーにまで成長させたのですが、その「社名」からして壮大で、「松下電器産業をも超えるような日本一の会社を目指す」として「日本電産」と名付けたと言われています。そして、最初に手がけたのは、なんと基本方針作りだったそうなのです。
その基本方針たるや「非同族企業」「いかなる企業のカサの中にも入らない」「インターナショナルな企業」の経営3原則であって、何故そこから始めたのかについて「永守イズムを記した冊子『挑戦への道』のなかに『始めにめざす目的、志をしっかりと掲げなければ、何事も成就出来ない』」とその意思を述べられています。
これも「ほら」なのか、上質なマネジメントの基本セオリーなのか。ところで、永守さんが目標にした「松下電器産業」の松下幸之助さんも、少し趣が異なるものの「大ぼら」のようなものがあります。“水道哲学”で「真の使命は、物資を水道の水のごとく安価無尽蔵に供給して、この世に『楽土を建設する』ことである」というものです。
日本電産もパナソニックも卓越したエクセレント・カンパニーであり、この両社の「大ぼら」と「卓越性」には、何か相関があるのでしょうか。
またドラッカーに言葉を手がかりに考えてゆきたいのですが、
「成果をあげる人とあげない人の差は才能ではない。いくつの『習慣的な姿勢』と『基本的な方法』を身につけているかどうかの問題である」
「卓越性」を実現させる経営者の「習慣的な姿勢」には、「経営の節目」ごとに時宜に適った「大ぼら」を宣言することもあり、宣言したらなら、それを有効に「卓越性」に導かなければなりません。また「大ぼら」こそが「卓越」を適えるための「道具」でもあります。
そうしたら「大ぼら」を実現するための「基本的な方法」とは何か。
「自らの強みを知り、得意とする仕事の仕方を知り、自らにとって価値のあるものを知ればよい。これに加えて、成果をあげるための原則を知ればよい。何に貢献すれるべきかを明らかにし、何に集中すべきかを定め『目線を上げればよい』」
が解答で、その含蓄をご理解ください。
さらに「大ぼら」の「効用」について、こんなことを言っています。
「自らの成長のために最も優先すべきは『卓越性の追求』である。そこから『充実と自信が生れる』」。
「ほら」には、3種類に分類される「ほら」があります。それは「志(こだわり)ぼら」と「欲ぼら」とそれらが混合した「混合ぼら」で、それぞれにはそれぞれの「効用」があるのです。大成功する経営者には「志(こだわり)ぼら」と「混合ぼら」の大家が結構多くいるようで、経営用語としては“ビジョン”とも言います。
今回の課題は、企業を大きく成長させるには「大きなほら=大構想」が必要だということで、「志(こだわり)ぼら」がないようでは、世界を相手にする「差別性」を実現させることはできなということです。この「大ぼら」ともいえる「大構想」の“マスター”は問われたら、それは「この世を楽土にする」と宣言した「松下幸之助」となりそうです。
ちなみに「混合型ほら」の代表者となると、草創期に従業員を相手に、「売上を豆腐のように一丁、二丁と数える(=1兆、2兆円)」と言い、会議の席では「これから始めるプロジェクトは、歴史に残るものになる。この会議はその始まりになる、歴史的会議だ」とそんなセリフをしょっちゅう言う「孫正義」ということになりそうです。
「卓越」せる経営者は、たえず継続して目線を上げます。また「一番になる」は、卓越するための必須の「習慣的な姿勢」です。
「京セラ」は京都市の西ノ京原町というところで創業したのですが、その始めから続けて、稲盛さんは自らの夢を繰り返し語ったそうです。「今に京セラをこの原町一の会社にするのだ。原町一になったら次は中京区一に、中京区一になったら京都一に、京都一になったら今度は日本一にする。そして、日本一になったら次は世界一だ」と。
なぜ、そうしたのかについては、それは「高い目標を設定する人には大きな成功が得られ、低い目標しか持たない人にはそれなりの結果しか得られません。自ら大きな目標を設定すれば、そこに向かってエネルギーを集中させることができ、それが成功の鍵となるのです」と心裏までも語っておられます。
日本電産の永守さんは、社名をブランド名や、海外子会社に使っている「Nidec(ニデック)」に変えるかもしれないと、株主総会で明かし、社長の世代交代も果たし、いよいよ「世界一」を完全視野に入れて、2030年度には売上高10兆円を達成しようと、また「“大ぼら”たる大構想」を披瀝しているのです。
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