名ばかりの「美しい調和」。米とEUの板挟みで苦悩の安倍首相

arata20190704
 

大きな破綻もなく閉幕した、G20大阪サミット。安倍首相も議長としての役割を無事果たしたようにも見えますが、ドイツの有力紙が「G19+1」と揶揄したように、欧米諸国とアメリカとの間の「深い溝」に悩まされていたようです。元全国紙社会部記者の新 恭さんは今回、自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』でその真相を探るとともに、「首相はもっと強いリーダーシップを発揮できなかったのか」という不満を記しています。

G20大阪サミットで議長役、安倍氏を最も悩ませたこと

大阪での「G20」サミットは、「G19 + 1」サミットとなった。ドイツの主要紙、南ドイツ新聞はそう書いた。

プラス1とは米国のことである。サミットの首脳宣言はまとまったが、米国のみ協調できないテーマがあった。地球温暖化対策だ。

2020年に始まるパリ協定からトランプ大統領は2017年6月に離脱した。「非常に不公平だ」というのがその理由である。

温暖化ガスを「2025年までに05年比で26~28%削減する」とオバマ前政権が表明していた国別目標は、白紙に戻された。世界第2位のCO2排出国が抜ける影響や責任など、トランプ氏にとってはどこ吹く風だ。

安倍首相を議長としてまとめられたG20大阪サミットの首脳宣言。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に関する記述はこうなった。

*ブエノスアイレスにおいてパリ協定の不可逆性を確認し、それを実施することを決定した署名国は、完全な実行へのコミットメントを再確認する。

 

*米国はパリ協定から脱退するとの決定を再確認する。

昨年のG20ブエノスアイレス宣言とほぼ同じである。米国のパリ協定脱退を確認するが、他の19か国は目標達成をめざすという。

これについて「パリ協定」を主導するフランスのマクロン大統領は最悪の事態は避けられた」と語った。どういうことか。

マクロン氏はブエノスアイレス宣言より後退する恐れを抱いていたのだ。議長の安倍首相がトランプ氏に忖度して、パリ協定実行に向けた文章のトーンを弱めるのではないかと。

6月27日の共同通信の配信記事にはこうある。

フランスのマクロン大統領は26日、フランス大使館で演説し、大阪市で開かれるG20サミットの首脳宣言について「パリ協定について触れず、野心的な目標を擁護できないなら」署名しない可能性を表明した。マクロン氏はこの点について「レッドライン(越えてはならない一線)」と言及。大統領府当局者は記者団に、昨年や一昨年の首脳宣言に盛り込まれた内容より後退することは「受け入れられない」と説明した。

どうやら、マクロン氏が来日した時点で、首脳宣言文原案には、ブエノスアイレス宣言の「署名国はパリ協定が不可逆的であることを再確認し完全な実施を約束する」といった表現が含まれていなかったらしい。米国を孤立させないよう配慮した可能性があると共同の記事は指摘している。

print
いま読まれてます

  • 名ばかりの「美しい調和」。米とEUの板挟みで苦悩の安倍首相
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け