トランプ大統領が「日米安全保障条約は不平等だ」と不満を示した件。これについて、NYタイムズは「無知な意見」と断じ、概ね以下のような内容の記事を掲載した。
トランプ大統領はG-20サミットのため日本へ向かう前、FOXビジネスネットワークのインタビューで日米安全保障条約について語った。「もし日本が攻撃されれば、米国は第三次世界大戦を戦う。…しかし、米国が攻撃されても日本は私たちを助ける必要はない。日本人は米国への攻撃をソニー製のテレビで見ていればいい」。
トランプ氏のコメントは戦略的、歴史的無知を示している。安全保障条約は主に米国によって決定された。…日本は、米国に軍隊を駐留させる独占権を与えた。…日本はソ連と中国の共産主義に対する防波堤となった。
日本人にとっては当たり前のことだが、アメリカに日米安保についての知識を持ちあわせている人がどれだけいるだろうか。いかにトランプ氏でもNYタイムズの指摘する事実を知らぬとは思えないが、どちらにせよ、知らぬ人の被害者意識を煽って支持拡大につなげることができれば、それで満足なのだろう。
日米安保の破棄をちらつかせるようなトランプ発言が、参院選後の日米貿易交渉を有利に進めるための脅しの一つなのは確かだろう。G20サミットの直前に飛び出しただけに、よけい首脳宣言文の取りまとめにのぞむ安倍首相の心理を揺さぶったに違いない。
もちろん、今回のG20サミットの意義を否定するつもりはない。EUとの協議のなかで安倍首相が提案した「大阪トラック」のように、今回のサミットを起点として議論がスタートする課題もある。個人のプライバシーや企業の知的財産を守りつつ自由にデータを流通させるための国際的なルールづくりをめざす新しい交渉枠組みが「大阪トラック」で、当然、取り組まなくてはならないテーマだ。
ただ、議長国として、もっと強いリーダーシップを発揮できなかったのかという不満は残る。トランプ氏に対してだけではない。習近平氏に対してもだ。
ロンドン、ニューヨークに次ぐ世界3位の金融センターである香港の大規模デモは、G20参加国にとっても無関心ではいられないはずである。
香港の市民は大阪のサミットで中国政府に圧力をかけてほしいと訴えていた。中国が内政干渉と反発するのを承知の上で、安倍首相は議長として、香港の自由、人権を守る必要性をアピールすべきではなかっただろうか。
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