消費者の目が厳しいことなどもあり、日本では苦戦を強いられることの多い海外発の小売り店。そんな中、2016年にフランスから上陸を果たした冷凍食品専門店が、消費者からの支持を得て着実に店舗数を増やしています。どんな戦略が日本にマッチしたのでしょうか。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』でMBAホルダーの青山烈士さんが分析しています。
価格競争の避け方
今号は、人気の冷凍食品専門店を分析します。
● イオングループのイオンサヴールが展開しているフランス発の冷凍食品専門店「ピカール」
戦略ショートストーリー
冷凍食品を重宝している方をターゲットに「フランス全国で920店舗以上を展開しているノウハウ」に支えられた「おしゃれで便利」等の強みで差別化しています。
フランス発の冷凍食品専門店として注目を集め、幅広い品揃えで来店者を楽しませ、動画を活用して、購入者をフォローすることで、消費者から支持を得ています。
■分析のポイント
「ピカール」はフランスを含めて、ヨーロッパで1,000を超える店舗を展開していて、日本でも2016年の上陸から店舗数を増やしています。
過去にも、海外から多くの小売り店が日本に上陸してきましたが、苦戦をしいられてきました。この理由には、日本の競争の激しさや日本の消費者の目の厳しさがあげられています。「ピカール」は、品質を保証するために1年間に55,000回の製品分析を実施するなど、自社に非常に厳しい目を持っていますので、日本の消費者の目にかなっているのでしょう。
また、スーパーは生鮮食品を扱うので、海外の企業が日本に参入する場合、農産物などは、日本国内から仕入れる必要がありますので、仕入れのネットワークを構築しなければなりません。しかし、ピカールは冷凍食品を輸入しているので、こういった障害がありません。このことも、ピカールが店舗数を増やしている要因と言えるでしょう。
輸入品であることは、こういったメリットもありますが、輸送コストがかかるため、その分、売価が高くなるというデメリットもあります。このデメリットを克服するためにポイントとなるのが、価値の訴求です。
消費者は、価格と価値の関係が
- 価格 > 価値 であれば、買う確率は低くなります
- 価格 < 価値 であれば、買う確率が高くなります
「ピカール」が、高い売価でも人気がある理由としてはここでしか買えないものを扱っていること、こだわりの商材を扱っていること、などがあげられます。つまり、顧客視点でみたときに、価格が高くても、それに見合う価値があると判断しているということです。ここが、どの企業も概ね同じものを売っている既存のスーパーとの違いとも言えます。
同じものを扱っていれば、価格競争に陥りやすいです。海外から日本に来た企業も価格競争になってしまえば苦戦は避けられないでしょう。「ピカール」の場合は、冷食専門店という、日本ではまだ定着していない業態ということもあり、既存企業と異なる価値を提供することで、競争をうまく避けながら、着実に店舗数を増やしています。
今後の「ピカール」が国内でどのような存在になっていくのか注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):冷凍食品専門店
- 競合(お客様の選択肢):スーパー、コンビニ など
- 状況:国内の冷凍食品の市場規模は拡大傾向のようです。
■強み
1.おしゃれで便利
- 全商品を下ごしらえ済み、または調理済みで提供
- さまざまなシチュエーションに対応できる商品ラインナップ
2.安全、高品質で美味しい
- 遺伝子組み換え生物原料不使用
- 硬化油脂不使用
- カット野菜は旬の時期に収穫
3.選ぶのが楽しい
- バラエティに富んだ品揃え
- フランス料理を中心に、食卓を華やかにする商品が多い
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
- 品質管理研究所では品質を保証するために、1年間に55,000回の製品分析を実施
- フランス全国で920店舗以上を展開しているノウハウ
- ナチュラルな製法へのこだわり
- 商品開発チームが、毎年200の新商品をリリースし、200種類の既存商品を改良
上記のような、こだわり、ノウハウなどが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- 冷凍食品を重宝している方
- 安全な食品に関心のある方
- フランス料理が好きな方
◆戦術分析
■売り物
「冷凍食品専門店」
- 全取扱商品数は1,100種類(店舗取扱商品数は、約300種類。店舗によって異なります)
→野菜や肉料理・魚介類からパン、デザートまで、ファッショナブルでバラエティに富んだアイテムを直輸入でお届け - 毎年200の新商品をリリース
■売り値
例)
- 「ミニクロワッサン(10個入り)」:630円(税抜き)←人気商品
- 「食いしん坊のミニエクレア(12個入り):1,480円(税抜き)
■売り方
- 「6」のつく日はクロワッサンの日
→1袋100円引き - YouTubeにてピカールチャンネルを展開
→ピカール商品のオシャレで便利な利用シーン、上手な調理方法を動画でお届け
■売り場
- 「ピカール」は都内に9店舗、神奈川に2店舗展開
- 総合スーパー「イオン」内に展開する「プティピカール」は都内に2店舗
- ネット通販(公式ホームページ)
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
image by: 『ピカール』公式ホームページ