世界人口爆発の原因は、高齢化だ
皆さんは人口爆発を防ぐ方法というと「途上国の出生率を下げること」だとお考えかもしれません。しかしそれは大きな間違いです。確かに途上国の出生率は高いのですが、死亡率も高いため、子ども人口はそれほど増えません。事実、世界の15歳未満人口はおよそ20億人で、すでに頭打ちになっています。今後も増える見通しはありません。
しかし、国連の推計によると、現在75億の世界人口は今後も増え続け、2100年に110億に達すると見られています。ここから分かるのは、人口爆発の原因は子どもの増加ではなく、「人類の寿命が延びるから」だったことです。
2100年には、高齢者人口は現在の3倍になっていると推計されています。現役世代2人で1人の高齢者を支えている計算になります。すなわち、21世紀とは、地球規模で高齢化が進み、現役世代がどんどん足りなくなる時代なのです。グローバル企業が無人運転やドローン配送の開発を進めているのは、ドライバーが絶対に足りなくなると分かっているからです。「AIやロボットに人間の仕事が奪われる」として無人化に反対する意見もありますが、それどころの話ではなく、今後あらゆる分野で「人間」が不足していきます。無人化は、すでにやるやらないではなく「やるしかない」ところまで追い込まれているのです。
子ども人口が相対的に減っているので、若者不足はすでに始まっています。現在世界的に初任給は引き上げが続いています。トップクラスのプログラミング人材は、新卒で数千万の年俸を提示されます。日本もこの流れと無縁ではいられません。NECでも、初任給1000万を提示して話題になっていますが、賃金を大きく引き上げなければ、日本のトップ人材は全員海外で就職してしまいます。
これは一握りのエリート人材に限った話では済みません。オーストラリアは最低賃金が高いことで有名です。円換算で時給1500円ほどになります。祝日の場合。3800円にもなります!
もちろん、厳密にこのルールが守られているとは限りませんが、それでも他国とは比較にならない高賃金であり、移民や出稼ぎ労働者が殺到しています。平均年収は日本の1.5倍にもなります。日本の最低賃金は東京ですら1000円に達していません。先進国で最低レベルです。今のまま賃金が上がらず国民負担ばかりが増大し続ければ、日本の若者が雪崩を打ってオーストラリアに逃げ出すのも時間の問題です。
いったんこの「Xデー」を迎えてしまえば、政府の推計をはるかに上回るペースで高齢化が加速するため、もはや完全に手遅れになります。
若者の海外流出を防ぐには、賃上げしかない
今世界では、減り続ける労働力の熾烈な「奪い合い」が繰り広げられています。韓国が最低賃金を一気に2割近く引き上げて話題になりましたが(今は日本より高額)、そこまでしないと若者が海外に出て行ってしまうからです。
本来、世界で最も賃上げに力を入れねばならない国は、他ならぬ日本です。現役世代が減り続ける中で社会保障を維持するためには、1人当たり賃金を上げ続けるしかないためです。
「出稼ぎ外国人を増やせば賃上げは必要ない」という意見もあるでしょうが、すでに述べたように、そもそも国内の賃金が低ければ、誰も出稼ぎに来てくれなくなります。「賃金が低すぎる」ことこそ、高齢化の真の原因だったのです。少子化はあくまで二次要因に過ぎません。高齢化対策のためには、子育て支援よりまず賃上げが最優先です。
そもそもいくら出生率が高まっても、国内の賃金が低いままだったら、成長した子どもたちは皆オーストラリアにとんずらしてしまいます。
もちろん少子化を放置しておいたら日本人が絶滅してしまうので、それはそれで対策が必要ですが、高齢化とは別の問題として認識する必要があります。では具体的にどこまで賃上げすればいいかというと、答えは明快です。
「世界一になるまで無制限に上げ続ける」
です。高齢化率が世界一高い以上日本は、世界で最も良い条件で現役世代を集めなければならない社会です。移民政策に反対の人も多いかもしれませんが、日本の在留外国人は、すでに総人口の2%に達しています。これは「さいたま市総人口の2倍」です。これだけの労働者がみんな日本から去ってしまえば、もはや社会が成り立ちません。今後も政府は外国人の受け入れを増やしていく予定です。日本はすでに立派な「移民大国」なのです。
オーストラリアの高齢化率は15%ほどで、日本の半分程度にとどまっています。これは、英語圏最高の高賃金に惹かれて、世界中から若者が移民してくるためです。若者が増えれば、出生率は自然に上がります。高齢化が進まないので、現役世代の負担は軽く、ますます賃金として還元することが可能になります。日本もこの成功ケースを真似ればいいのです。
世界中から若者が殺到する国を目指せ
中途半端な賃上げでは英語圏のオーストラリアに勝てません。迷わず「賃金世界一」を目指すことです。もちろん、英語の公用語化も進めていく必要がありますが、それはあくまで補足に過ぎず、まずは賃上げが先決です。
賃金世界一はやるやらないではなく「やるしかない」のです。他に高齢化を解決する方法はありません。問題は残された時間がそれほど多くないことです。こうしている間にも高齢化は進んでいます。せめて10年以内、遅くとも15年以内には、世界最高の賃金を実現し、若者が世界から殺到する状況を生み出す必要があります。
参院選で一応の勝利を収めた自公政権は最低時給1000円を目指すと公約に掲げていますがこれは「通過点」に過ぎません。時給1000円でフルタイム労働しても年収200万円程度です。ここから税金や年金が引かれるので、生活保護を受けたほうがよほど楽な暮らしができます。最低時給1500円、年収300万円程度は、決して法外な水準ではなく、人道上もできるだけ早期に実現しなければなりません。これは現役世代と高齢者「両方が得をする」真の国民的政策です。みんなで力を合わせて必ず実現させましょう!
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