最低賃金を極限まで上げると高齢少子化が一挙解決できるワケ

 

地域おこしに大学は不要

これは意外に思われるかもしれません。大学ができれば大勢の学生が数年は住むので、地域に雇用と消費が生まれます。そのため大学誘致を最初に考える関係者も多いでしょう。しかし、大学どころか高校すらない山奥の無医村が、Uターン政策を成功させた事例があります。それはレタスの産地で有名な、長野県川上村です。信濃川(千曲川)の源流であることが村名の由来です。

川上村の高齢化率は25%で、全国平均をやや下回ります。山奥の農村としては異例の若さです。なぜかというと、川上ではほとんどのレタス農家で息子が後を継いでいるからです。農業従事者の3割が50歳未満です(全国平均は1割未満)。一戸あたりの平均年商は2500万になりますが、経費もかかるので所得はそれほどでもありません。それでも息子たちが跡取りを嫌がらないのは、半年にも渡る農閑期が関係していると思われます。レタスは半年ほどしか栽培できないので、秋から冬にかけて川上のレタス農家は毎年ロングバケーションを楽しみます。長期の海外旅行も問題ありません。

確かに農繁期は毎日「午前1時起き」という忙しさですが、それさえ乗り切れば半年も遊んで暮らせます。さらに村に高校が無いため、子どもたちは中学を卒業すると村外に下宿しながら通学します。子育てからも早めに解放されるわけです。川上は無医村でありながら健康寿命日本一の自治体でもあります。半年肉体労働して半年遊ぶというリズムが長寿に寄与しているのは間違いないでしょう。高齢者が元気なので、現役世代の負担は軽く、ますます楽ができます。そんな親の姿を見てきた子どもたちは、自分もこんな人生を送りたいと、都会からUターンしてくるわけです。

つまり「好条件の仕事・生活さえ用意できれば、大学が無くても若者はちゃんと戻って集まってきます。川上村はそれを証明した絶好のモデルなのです。いくら大学を誘致しても、好条件の雇用が無ければ学生は卒業後地域に残ってくれません。肝心なのはあくまで「産業創出」なのです。

もちろん、川上にも課題は多くあります。農家の跡取りはたいてい息子なので、娘は地元に帰ってきません。そのため若い女性が極端に少なくいわゆる「嫁不足」に悩まされています。中国人実習生を過酷な条件で働かせていたとして処分を受けた組合もありました(現在この組合は解散)。またレタス以外の産業がほぼ存在しないため、Iターン希望の若者も皆無です。農地は限られているので今さら新参者に参入の余地はありません。いずれは野菜工場で安いレタスを大量生産できる時代がやってくるはずです。そうなった時、川上が新たな産業を立ち上げられなければ、南牧村と同じ道を辿ることになるでしょう。

過疎化最大の要因は都市部との「所得格差」

地方の過疎化・高齢化がどんどん悪化している最大の要因は所得格差」にあります。地域によっては平均所得が東京の半分くらいしかありません。それでは若者が地元に残らないのは当たり前です。若者の一極集中を防ぐのに最も効果的な対策は、最低賃金を全国一律に統一することです。

そもそも国際的に最低賃金は全国一律が当たり前です。地域ごとに定めているのはごく一部の国だけです。東京都の最低賃金(時給)は985円です。これは、鹿児島の761円に比べて2割以上も高くなっています(ちなみに平均900円以上は東京・神奈川・大阪のみ)。しかし、全国の平均賃金が東京と同等になれば、若者たちもわざわざ上京しようとは思わなくなります。国が統一しなくても、各自治体が東京と同レベルの最低賃金を条例で定めればいいのです。地方で最低時給985円ならかなりの好条件ですから、若者が近隣からも殺到してきます。しかも物価は安いので、都会よりも生活レベルは上がります。東京から若者を呼び戻すには「東京以上の待遇」を用意すればいいのです。実にシンプルな話です。

しかし、これだけでは地域格差が解消されるだけで、全国の高齢化は解決できません。そこで必要になるのは最低賃金を引き上げ続けることです。かつての経済学では、生産性の向上によって賃金の引き上げが可能になると考えられてきました。しかし今日では、それは因果関係が逆であり賃金を上げると生産性(GDP)が向上する」ことが判明しています。日本では特に、サービス業の生産性の低さが課題です(先進国最低レベル)。サービス業は賃金が低いため、せっかく人を育てても定着せずにどんどん辞めてしまい、常に新規採用と新人教育を続けなければなりません。これが膨大な生産性のロスとなっています、現場を知っている人ならよく分かるはずです。

しかし、賃金が上がればスタッフの定着率も上がるため、採用教育コストを大幅に削減できるわけです。まして、今後も社会保障負担は上がり続けるので、若者の海外脱出を防ぐには賃金をひたすら上げ続ける以外に方法はありません。稼げる国になれば、海外の若者も日本に移住したがるようになります。そこまでしないと高齢化は解決できないのです。

ただ、確かに一気に15%以上の引き上げを行うと失業率が上がると分かっているため、段階的に引き上げていくことが必要です。(中略)最低賃金引き上げが今の日本にとって最優先の経済政策であることは間違いないでしょう。

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