子どもの頃からゲームやスマホに夢中になりすぎることに、精神面への悪影響を心配する声がありますが、科学的な裏付けはあるのでしょうか。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、テレビ、ビデオゲーム、コンピューター、読書に費やす時間と精神病体験の関連性を長期間にわたって追跡調査したカナダの研究結果を紹介しています。
メディア使用時間と精神病症状
◎要約:『思春期のメディア使用時間は、種類によってはその後の精神病症状に影響するかもしれないが、介在する要素としての早期の精神疾患や対人関係の問題を含んでいるかもしれない』
ゲームやスマートフォン、コンピューター等のメディア使用時間による精神状態への影響が指摘されてきました。今回は、思春期における各種メディアの使用時間の経過が、その後の精神病症状の経験に対してどのように影響するかを調べた研究をご紹介します。
思春期のメディア使用時間と精神病症状の関連
Trajectories of Adolescent Media Use and Their Associations With Psychotic Experiences
カナダのケベック州における研究 the Quebec Longitudinal Study of Child Development(1998-2021)を元にしており、1,226(58.2%女性)の対象者を含んでいます。
12、13、15、17歳における週ごとのテレビ、ビデオゲーム、コンピューター、読書の時間を調べて、23歳までの精神病症状の経験を調べています。
結果として、以下のような内容が示されました。
- ビデオゲームの使用時間が長いグループでは、短いグループに比較すると、12歳時点での精神状態や対人関係の問題が多くなっていました。
- ビデオゲームの使用時間が長いグループでは、23歳までの精神病症状の経験が多くなっていましたが、上記の要素を調整すると影響は少なくなっていました。
- コンピューターの使用時間が15歳を頂点とするカーブを描くグループでは、使用時間が短いグループに比較して精神病症状の経験が多くなっていました(+5.3%)。
メディアの長時間使用が直接的な影響を与えているとは考えにくい結果でしたが、広い意味での精神状態や対人関係との関連は否定できない内容でした。
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