先日掲載の記事でもお伝えした通り、ガザ紛争の停戦案受け入れを拒否し無辜の市民を殺戮し続けるイスラエル。国際社会から大きな批判を受けながらも攻撃の手を緩めないネタニヤフ首相ですが、もはや解決の手立てはないのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、ガザを制圧できる軍事力を持ちながらとどめを刺すことなくパレスチナ人をいたぶり続けるネタニヤフ氏の思惑と、アメリカがイスラエルを見捨てられない理由を考察。さらに多くの国々が反イスラエル網に参加し始めた事実を紹介しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:戦争の長期化が生み出すもの‐国際秩序の崩壊と無秩序の混乱
中国とロシアの接近を警戒。なぜアメリカはラファへの本格侵攻停止に聞く耳を持たぬイスラエルを見捨てられないのか
「紛争解決に向けた様々な努力は、出口も見いだせないまま、暗礁に乗り上げてしまったように感じている」
これはイスラエルとハマスの間に立って、間接交渉を行い、戦闘の一時休止と人質解放に向けた合意に向けた協議を仲介するカタールのムハンマド首相兼外相が、ドーハで開かれた経済フォーラムの場で吐露した内容です。
「先週末まで我慢強く行われていた折衝は、途中、合意に向けた機運が高まり、ついにブレークスルーが生まれるのではないかと思われた時もあったが、イスラエルとハマス双方の要求が相容れない状態になった。その時、イスラエル軍によるラファへの攻撃が起こり、交渉は完全に空中分解した。和平協議をしている最中の軍事作戦の強行は完全なディール・ブレイカーであり、正直受け入れられない」と不満を述べたうえで、「正直、どう進めればいいのか考えることさえできずに混乱しているが、少し頭の整理をして、また仲介に携わるつもりだ」と交渉の継続にも言及しています。
同様のことは、実はトルコ政府がロシアとウクライナの間に入って、停戦協定の仲介を行っていた際にも起きています。
直に顔を合わせた上で、トルコの仲介の下、停戦に向けた協議をトルコで行っていましたが、事前の約束に反し、双方とも互いに軍事作戦を小規模ながら実施し、話しながらできるだけ自分たちに有利な状況を作り出したいという思惑が、ロシアによるウクライナ侵攻初期の段階での解決に向けた扉を閉ざしてしまいました。
その後、起きたことは話し合いのチャンネルが、水面下のものも含め、閉ざされ、互いに多大な人的犠牲を強いながら、戦争は長期化し、完全に戦況は膠着状態に陥り、血で血を洗う凄惨な状況になっています。
私自身、最初は「ロシア軍がウクライナ国境に集結しているとはいえ、それはただの脅しであり、国境を越えて侵攻することはない」と予想して、大きく間違え、その後も「ロシアの軍事力をもってすれば3日ほどでウクライナ全土はロシア軍の手に落ちてしまうだろう」と再度見込み違いをしてしまいました。
気が付けばもうすぐ開戦から2年3か月。ウクライナによる反転攻勢も失敗に終わり、徐々に態勢を立て直したロシア軍有利な戦況が続いていると言われていますが、決定的な状況にはならず、戦いは出口の見えない長期化の様相を呈しています。
ロシアは、これまで2年強、事あるごとに核兵器使用に言及して欧米諸国(NATO)の本格的な介入に対する威嚇を行っていますが、もちろんロシアが容易に核兵器を用いることもなく、精密誘導ミサイルなどで大規模攻撃を一斉に仕掛けるわけでもなく、耐用年数を超えたようなミサイルや爆弾の在庫を使ってのらりくらりと“負けない程度”に戦争を継続しているように見えます。
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