「武器の70%を提供」の衝撃。ガザ「停戦」への努力を台無しにした米国の無責任

 

イスラエルとの国交断絶を宣言する国々も

それには何としてもイスラエルによるラファへの本格侵攻を止める必要があり、それと並行してイスラエルを戦闘停止に向けた協議のテーブルに就かせるという難題にアメリカは向き合わなければならなくなっています。

ラファへの本格侵攻を止められないことは、つまりバイデン政権の対イスラエル・中東外交の失敗を印象付けることになってしまいますが、今、アメリカ政府内で問題になってきている大きな焦りと答えの出ない問い【イスラエルはこれからもアメリカにとって必要な戦略的パートナーなのか?それともアメリカを中東に引き戻す重荷になってしまったのか】に向き合うと同時に、ネタニエフ首相に対する“恐れ”も抱いているようです。

国務省の高官が呟いたのが「ネタニエフ首相は保身のためにアメリカの忠告に一切耳を貸さず、我が道を突き進み、アラブ・パレスチナ・ハマスこそがイスラエルの存在を深刻に脅かす存在と確信して、圧倒的な力を用いてその排除に動くのではないか。その場合、アメリカはイスラエルを支持することはできないし、ましてやイスラエルの愚行の責任を負わされることがあってはいけない」という内容でした。

そしてさらには、「イスラエルは今、自らの手でホロコーストを再現し、アメリカはイスラエルの最後の友好国としてそれを目撃し、世界から激しい非難を受ける恐れがある。それを何としても食い止めないといけない」と述べていました。

その見解は実はグローバルサウスの急激な反イスラエル傾向を加速し、「イスラエルとハマスの戦いは、もう中東の地域紛争に留まらず、国際社会の分断のシンボルになっている」という見解に代表されているように思います。

すでに南アは国際司法裁判所(ICJ)に“ガザ侵攻はジェノサイド”と訴えており、それに加えて「ラファへの侵攻はガザのパレスチナ人の生存を脅かすことは明白であり、ICJはイスラエルに対して緊急的な停止命令を出すべき」と主張し、それにトルコ政府と、仲介役であるはずのエジプト政府も訴訟に参加する状況になってきています。

またエルドアン大統領(トルコ)の反イスラエルに拍車がかかり、ついに「イスラエルはテロ国家であり、ネタニエフ首相はヒトラーだ」と痛烈な非難を行っていますし、G20の議長国ブラジルのルラ大統領は「イスラエルが行っているガザ侵攻こそがホロコーストであり、ホロコーストの被害者たるユダヤ人が今度はホロコーストの実行役に成り下がっている状況に重大な懸念を抱くとともに、最も激しい表現で非難する」と反イスラエル勢力の波が広がっています。

そして5月1日にはコロンビア、ボリビア、ベリーズ、チリがイスラエルとの国交断絶を宣言し、比較的親イスラエルだったインドやアルゼンチンも「イスラエルとの関係は継続するつもりだが、イスラエルによる行き過ぎた行動は非難に値する」と反イスラエル網に参加し始めています。

中ロはこれを機に、グローバルサウスの国々との連携を深めるべく、パレスチナ寄りのスタンスを示し、これまでにファタハ(パレスチナ自治政府)とハマスの代表を北京とモスクワに招いて今後について協議することで歩調を合わせようとしています。

イスラエル支持のはずの欧米諸国も分断が鮮明になってきており、ハマスはテロ組織という認識は堅いが、イスラエルの過剰な行動と攻撃には同調できないという姿勢が、現在、全米40以上の大学のキャンパスでのデモやフランスのENAやローザンヌ大学、シドニー大学などでの大規模な反イスラエル、そして自国政府のダブルスタンダードに対する非難の声が強まってきています――(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2024年5月17日号より一部抜粋。続きをお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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