まず、老齢厚生年金は12ヶ月早く貰うから12ヶ月×0.5%=6%減額。60歳からの老齢厚生年金は240,835円×94%=226,385円に減少。老齢基礎年金は60ヶ月早く貰うから、60ヶ月×0.5%=30%減額。60歳からの老齢基礎年金は708,591円×70%=496,014円。よって60歳からの年金総額は
- 老齢厚生年金(報酬比例部分)226,385円+老齢基礎年金496,014円=722,399円(月額60,199円)
月額で2万円も下がってしまいましたね…^^;。これが年金の繰上げの辛いデメリットです。
でもそれだけではないですね。この女性は糖尿病を患っていましたよね。年金の繰上げを令和元年7月にしていますが、その後の令和3年8月に糖尿病性壊疽により脚を切断する事になったとします。脚の切断で「一下肢に著しい障害を残す」事になり、おおむね障害年金の2級相当になる。初診日から1年6ヶ月時点(平成30年7月13日)は特に日常生活に支障はなく、障害年金には該当しなかったが、時が経過して悪化すると障害年金の「事後重症請求」ができる。
※注意
初診日の属する月の前々月までの間に一定の保険料の納付要件が問われるが、この女性の場合は直近1年に未納が無いから納付要件は満たすという事で話を進めます。
しかし、年金の繰上げを令和元年7月にやってしまってる事により、障害年金の事後重症請求は不可となる。どうしても障害年金を請求したいならこの場合は初診日から1年6ヶ月の時点の認定日による障害年金を請求するしかないが、日常生活に支障が無かったなら3級も厳しいでしょう。
というわけで今後悪化しそうな病気がある人は年金の繰上げは気を付けなければならない。なお、年金の繰上げをしなくても65歳になると障害年金の請求は基本的には不可となる。
次に、この年金の繰上げをしていた妻の夫が病気により急死した(妻はまだ62歳だったとします)。夫死亡により遺族厚生年金70万円+中高齢寡婦加算585,100円=1,285,100円(月額107,091円)が発生。妻はまだ62歳のために、自分自身の老齢の年金か、遺族年金の受給かを選択しなければならない。まあ…遺族年金のほうが遥かに多いですよね^^;せっかく早めに年金貰おうと、年金の繰上げをしたのに結局遺族年金を貰う事になった。
65歳になると妻は自分の老齢の年金と遺族厚生年金を併給する事ができる。なお、中高齢寡婦加算585,100円は65歳を機に消滅する(妻が老齢基礎年金貰うまでの繋ぎ)。よって、65歳からの妻の年金総額は、
- (遺族厚生年金70万-妻の老齢厚生年金226,385円)+妻の老齢厚生年金226,385円+老齢基礎年金496,014円=1,196,014円(月額99,667円)
※注意
遺族厚生年金を貰う場合は自分の老齢厚生年金分が引かれて支給されるから上記の計算みたいになる。先あて支給という。
というわけで、もし遺族厚生年金が発生した場合は、65歳までは自分の老齢の年金とどちらか選択受給となり、65歳から併給して貰うにしても単に老齢の年金額を減らしただけの結果になるのでこの辺も十分に留意しておく必要があります。
それでは今日はこの辺で!
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