いまさら人に聞けないイラン情勢。アメリカの目論見が外れた理由

 

それでもトランプ大統領とその政権は、まだアメリカ主導でのイラン包囲網の結成を諦めてはいないようです。その証としてポンペオ国務長官が、「有志連合の結成は急がない」と発言していますし、先日、日本を訪問したボルトン補佐官も“日本の特殊事情を理解する”と述べるなど、外交的なイメージに対するダメージコントロールを行っています。

しかし、そもそもどうしてここまでトランプ政権は反イランに拘るのでしょうか?内政的な事情(ロシア疑惑などから目を背けたい)、とにかくオバマ嫌い、大統領選再選へ向けたパフォーマンスの必要性など、いろいろな理由が述べられていますが、私は実際の理由はもっとビジネス的なポイントにあるのではないかと考えています。

その中でも、「国際原油市場のコントロール・覇権争い」、「中東諸国に対する武器輸出・販売の拡大」、そして「イスラエルへの過度の肩入れ」の3つが主な理由ではないかと見ています。

1つ目の『oil marketの支配』については、アメリカ国内でのシェールオイル・シェールガスの採掘に成功し、中東からの原油の輸入が実質不要になったばかりだけでなく、ついに原油・天然ガスの輸出国になったことで、これまでのアメリカのエネルギー政策に大きな変化が訪れたことが背景にあります。

その『変化』はアメリカの安全保障上の優先順位も大きく変えることなり、中東地域に米軍の大規模なプレゼンスが必要でなくなるというシフトが実質的にも心理的にも起きています。ゆえに、「アメリカがエネルギーを依存しない地域及び海域のパトロールや防衛に、どうして米軍のプレゼンスが必要で、それも他国の権益を守るためにアメリカ兵が命を懸けているのか」という見解に変わっています。これが『ホルムズ海峡における船舶防衛のための有志連合の結成』というアイデアに繋がります。

同時にアメリカが純粋にエネルギー輸出国になったこともイランへの攻撃を強めるきっかけとなっています。恐らく世界トップと言われる原油埋蔵量を誇るとされるサウジアラビア、イラクなどと比しても劣らないほどの産出量をイランは保有しているため、国際的な原油マーケットにおける発言力は強く、長年反米政策を貫いていることからも分かるように、国際エネルギー市場の新しい現実に直面しても、他の中東諸国(サウジアラビア、イラクなど)と違い、アメリカの言いなりにはならないという状況があります。

つまり、アメリカの新戦略にとっては、イランはやはり目の上のたん瘤と映るため、出来る限りそのキャパシティーを削ぎたいというのが、トランプ政権のアメリカの対イラン政策の心理的な背景だと理解しています。

次のポイントにも共通しますが、American first!を旗印に、『いかにアメリカを経済的に再度繁栄させるか』を主目的とするトランプ政権の外交戦略に鑑みると、それをイランが邪魔しかねないと勝手に思い込んで、イランへの一連の強硬手段に出ているのではないかと考えられます。

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