いまさら人に聞けないイラン情勢。アメリカの目論見が外れた理由

 

では2つ目のポイントである『中東諸国への武器輸出の拡大』という観点からはどうでしょうか。これについては、イランを過大に敵視し、その軍事的なキャパシティーを過大に宣伝し、地域にとっての脅威として周辺国に意識させることで、中東の周辺国、とくにサウジアラビアやアラブ首長国連邦といった国々にアメリカの最新鋭の武器を売りつけることに、ここまでのところ成功しています。

トランプ大統領はさすがビジネスマン!と言われる謂れですが、確実に中東地域での米国製の武器の売り上げは、トランプ政権下で大幅に増加しています。

これに気付いてのことか、異を唱え、最大のギャンブルをしているのがトルコのエルドアン大統領でしょう。アメリカからのF35の大量調達を約束していましたが、ロシアのプーチン大統領に近づき、S400の配備を迅速に進めてしまいました。報復措置として、トランプ大統領はトルコへのF35の販売を停止させていますが、トルコの地域における影響力と地政学的な位置付けを見てみると、トランプ外交のグランドデザインを狂わせているといえます。

これは、先ほど述べた経済的な利益への悪影響という観点はありますが、それ以上に気にしているのが、防衛システムの連携構築と、武器の保持・メンテナンスに関わる中長期的な経済的なベネフィットへの狂いでしょう。

イランの脅威を煽ることで、周辺国が自国防衛のために米国製の最新鋭武器を大量購入し、データシステムや連携などを通じて、中東地域の一大軍需利益圏を作るという狙いがあったようですが、今回の『トルコの離反』を受けて、その基礎が揺らいでいます

イランの背後にはトルコが存在して、その後ろにはロシアが君臨する」というイメージを周辺国に植え付ける結果になってしまうことで、イランに真っ向から対抗するために米国主導の有志連合への参加を検討したいが、同時にロシアベースの軍事システムのターゲットとされてしまうのは怖いという、こちらも“作られた脅威”によって、サウジアラビアなどは、有志連合への参加にしり込みしているとされています。

つまり、『米国製の武器を売りつける』というビジネスはうまくいったと言えるかもしれませんが、その先にあるグランドデザインを完成させるという野望は、イランの影にいるトルコやロシアによって、頓挫している可能性があると言えるでしょう。

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