いまさら人に聞けないイラン情勢。アメリカの目論見が外れた理由

 

そして、イランを用いた中東地域におけるアメリカの影響力の拡大を阻んでいる3つ目の理由は、トランプ政権の明らかに行き過ぎたイスラエルへの肩入れです。
寵愛するイバンカ女史の夫(つまり娘婿)がユダヤ人という理由に加え、ペンス副大統領を含む自らの支持基盤が親イスラエルのキリスト教福音派ということもあり、トランプ大統領は、大統領就任当初から明らかなイスラエル偏愛が顕著に見られます。

その証拠に、イスラエル・パレスチナにおけるとてもデリケートな宗教的なバランスの観点から、タブー視されてきた大使館のエルサレムへの移転を強行しています。さらには、イスラエル総選挙時には、汚職疑惑などで瀬戸際に立っているといわれたネタニヤフ首相と、彼が率いるリクードをあからさまにサポートしています。

外交面では、国連の場で「イスラエルに関する非難決議に対して拒否権を発動する」という昔からの“不文律”は変わっていませんが、至る所で親イスラエルアピールを行っています。その見返りに、ネタニヤフ首相はアメリカ製の武器の大量購入に署名していますし、トランプ政権が進める反イランの取り組みに対しても全面的なサポートを、直接的かつ間接的に行っています。

しかし、このあからさまなイスラエルへの偏愛が、トランプ政権の対イラン包囲網の目論見を狂わせる一因になっています。表面上、「イラン憎し!」で結束するサウジアラビアを筆頭とするスンニ派諸国ですが、同時に、歴史的にイスラエルの存在を認めない諸国でもあることから、イランという共通の“敵”はいるが、互いには同じく敵対視しているというジレンマが、イラン周辺国が対イラン対策をアメリカ側で徹底できない理由になっています。

今のところ、イランを封じ込めたいというアメリカの目論見は様々な理由で挫かれているように思われます。トランプ政権にとってはイメージへのダメージと映りますが、米国以上に焦燥感が漂っているのがイスラエルです。

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