いまさら人に聞けないイラン情勢。アメリカの目論見が外れた理由

 

イスラエルとイランは長年地域におけるライバル関係にあり、軍拡競争でも双璧をなしています。両国とも恐らく核戦力を保持し、信頼できるミサイル技術も備えているとされていますが、その長年のライバル関係故、もし中東地域において両国が軍事的に衝突することになった場合、どのような被害が出るのか、互いの実力を知り尽くしたうえで、かなり詳細に分析されています。

その分析上の脅威の状況が、今、間近に迫っているのではないかと、イスラエル当局が焦り出しているといわれています。それゆえでしょうか。このところ、直接的なイラン批判は控え、できるだけ偶発的な衝突が起こる可能性を限りなくゼロに近づけようとしています。その証が、アメリカが呼び掛けた有志連合への参加を見送るという判断だと思われます。

これまでに挙げた大きく分けて3つのポイントから、トランプ政権が目論む反イランの戦略は頓挫していると言わざるを得ないと考えます。

しかし、まだトランプ大統領とその側近たちが、大統領選に向けた“成果”獲得のために過度にイランを刺激するようなことが続くのであれば、中東地域で起こるどんな小さな偶発的な衝突も、一気に周辺国に飛び火し、中東地域全体を巻き込んだ大戦争、そして、中東に利権を持つ欧米諸国とロシアなどを巻き込んだ世界大戦に発展する危険性があるかと思います。

6月中旬に安倍総理がテヘランを訪問し、米イラン間の仲介を試みるシャトル外交をスタートさせました。タンカー襲撃事件などもあり、若干フォーカスがずれてしまった感がありますが、日本がアメリカの同盟国でありつつイランの友人であるという“特別な位置付け”を維持し、我慢強く仲介の任を完遂できれば、だれも望まない次の世界大戦の火種を消すことに貢献できるかもしれません。高まる一方の中東地域での緊張を目の当たりにして、紛争調停官として、そう願っています

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