発達障がい者の支援で強調される「二次被害の防止」とは何か?

 

このセミナーでの私の役割は実践者としての立場からの講演であったが、その前提として「発達障がい」の定義とその教育の重要性をどんぐり発達クリニックの宮尾益知院長が「2E」の概念とともに説明してくださった。
2Eとは「Twice Exceptional」の略で「二重に特別な」の意味。この特別な2つは、先天的に平均よりも顕著に高い能力を持っている、という「チャレンジド」と、自閉症スペクトラム(ASD)、学習障がい(LD)、注意欠陥多動性障がい(ADHD)に分かれる「発達障がい」である。

これら2Eは一般社会といわれる環境への適応は苦手なため、支援が必要でもあり、適切な支援がなければ不登校となる可能性も高くなる。そのために必要な教育は同化ではなく、本人が居場所と思える空間を確保し、自分の興味を広げていくことであるという。そのためのサポート材料として宮尾院長は「同様の子供たちとの学校生活」「尊敬できる先輩、教師、医師の存在」を挙げた。

私は、2Eへの教育は小さな世界での理解を進めることではなく、社会全体の「寛容性」を多様性への受容の中で展開するプロセスには欠かせないリトマス試験紙だと考えている。

発達障がい者の支援及び教育について、冒頭の発達支援研究所の山本所長も強調するのは「二次被害の防止」。障がい特性によって被る被害を受けつつも、その被害により自己肯定感が低下し社会に背を向けてしまうことにならないように、「自己肯定感」を低下させる二次被害を防ぐのは、この社会の喫緊の課題だ。

昨今問題が可視化されている引きこもり対応にもつながる。二次被害を食い止めたり、被った二次被害をリカバリーするのが就労移行支援事業などの福祉サービスの領域だが、一次被害に対抗するのは、社会の変革と障がい者への「教育」という新しい考え方だと思っている。

発達支援研究所のホームページを開設しましたので、是非ご覧ください。

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