GSOMIA破棄で加速する米の韓国切り。始まった国際情勢の大変調

 

「今月末の国連総会時に、トランプ大統領とロウハニ大統領が電撃会談をして、緊張緩和につなげるのではないか」との希望的観測も出ていますが(これは先週号で、マクロンの打った大ホームランと表現しましたし、9月25日に開催する方向で調整中とのことですが)、イランの最高指導者ハーマネイ師の態度に少々軟化の兆しが見られるものの、大きな変化をもたらすような合意をする権限を、まだロウハニ大統領に与えていないだろうと思われるため、希望は持ちたいと思いますが、仮に会談が実施されたとしても、何か具体的な結果を生み出すのは期待薄ではないかと私は考えています。

ゆえに、現状維持もしくは、「今後、対話を継続する」という一見前向きな方向性を付けつつ、実際には何一つ進展はない、という現在の米中貿易戦争のような様相を呈するのだと思われます。

しかし、トランプ大統領としては、何か成果を欲していることは確かで、そのために「韓国切りを加速するように動き、アメリカ軍の軍事的なプレゼンスを北東アジア寄りにシフトさせる」という動きが感じられます。

在韓米軍の引き上げも視野に入れた対応を具体的に検討している中、韓国無き北東アジア地域のパワーバランスの維持のために、日本と協力しつつ、アメリカの軍事的なプレゼンスを重くするという動きです。

こうすることで膠着する北朝鮮とのディールメイキングに対しても圧力をかけることができますし、中国やロシアに対するにらみを利かせる効果もあります。韓国の日米韓同盟からの離脱によって引き起こされる大きなパワーバランスの変化と混乱を望まないアメリカとしては、考えうる策であると考えます。

ただ、この軍事的なプレゼンスのシフトは、欧州そして中東地域に及ぶ安全保障体制の変化も意味します。1991年の湾岸戦争以降、トルコにあるNATO軍基地は、中東地域に睨みを利かせる位置付けを得、その後のフセイン政権打倒作戦、アフガニスタン対応、イランへのプレッシャーといった数段階での重しとなって、それが欧州全域の安定のための“重し”としても機能してきました。

ただ、アメリカ政府が計画する米軍のプレゼンスのシフトは、このパワーバランスの変化を確実にもたらします。実際に、今回の有志連合への参加要請もその一環ですし、トランプ大統領が就任以降、ドイツをはじめとする欧州の同盟国に対して表明している「NATOを通じた防衛体制へのコミットメントの増加」(軍事的にも、NATO分担金という経済的な面でも)という要請も、米軍の国際展開の大幅なシフトチェンジを想起させる動きかと思われます。それが、今回のGSOMIA破棄問題で、一気に加速したのではないかと思われます。

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