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トランプとバイデン、悪はどちらだ。米大統領弾劾が無理筋な理由

9月25日、トランプ大統領は、自身に対する弾劾調査に対抗し問題とされる「ウクライナ大統領との電話会談」の内容を公開しました。これを受け、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、弾劾手続き実現の可能性は低いとした上で、反対に「弾劾を仕向けるバイデン側とウクライナの深い結びつきを示す事実」を紹介しています。

トランプ弾劾調査とバイデンの闇(★5年前に指摘)

アメリカ、トランプ弾劾調査開始で盛り上がっています。何でそんな話になったのでしょうか?BBC NEWS Japan 9/26から。

トランプ氏とウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は7月25日、電話で会談した。その中でトランプ氏は、バイデン親子を捜査するよう圧力をかけたとされている。さらにトランプ氏は、連邦議会が承認したウクライナへの軍事援助2億5,000万ドルについて、同じ会話で触れたとされている。トランプ政権はこの援助金の支払いを、9月半ばまで先延ばしにしていた。米紙ワシントン・ポストは23日、トランプ氏がミック・マルヴェイニー首席補佐官代行に対して、ウクライナとの電話の少なくとも1週間前に、ウクライナへの軍事援助4億ドルの供与を停止するよう指示したと伝えた。

つまり、トランプは、ゼレンスキーに、「バイデン親子を捜査すれば軍事援助をするが捜査しなければ援助しないと脅した可能性がある。

ところが、トランプ政権は電話会談の内容を公開しました。注釈がついていますが、是非ご一読ください。

● トランプ氏とウクライナ大統領の電話会談の全内容、注釈付き 
9/26(木) 21:23配信

これ、読んだのですが、何が問題なのかさっぱりわかりませんどこが圧力なのか。どこかの国の大統領が、別の国の大統領に、「汚職を調査してくれないか?とお願いして何が悪いのでしょうか?

この話、これから一時期盛り上がる可能性はありますが、民主党が勝つ可能性は少ないでしょう。なぜか?アメリカの弾劾手続きというのは、下院が訴追して、上院が判決を下す。トランプを解任するためには、上院の3分の2がそれを支持しなければならない

そうなのですが、上院は現在、共和党53議席、民主党45議席、無所属2議席。民主党が目的を達成するためには、共和党議員20人を「裏切らせる」必要がある。「絶対無理」とはいいませんが、「相当難しい」といえるでしょう。

私が今回書きたいのは、トランプのことではなく、バイデンのことです。いったい、トランプは何を知りたいのか

2014年2月、ウクライナで革命が起こりました。それで、親ロシアのヤヌコビッチ政権が倒れた。そして、親米政権が誕生した。その後、当時副大統領だったバイデンの息子ハンター・バイデンが、ウクライナのガス会社ブリスマの取締役になった

これどうですか?常識的に考えると、「怪しいよね」と思うでしょう。それで、ウクライナで捜査がはじまった。バイデン副大統領は、「ウクライナ新政府に圧力をかけ捜査を担当していたウクライナの検事総長を解任させたという疑惑。トランプは、ゼレンスキー・ウクライナ大統領に、「この件調査してよとお願いした。私的には、「バイデンの方がダメでしょ」と思います。

ちなみにこの件、2014年に出版された拙著『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」世界を動かす11の原理に書いてありました。手元にある方は、p159~p162を開いてください。でも、その為だけに、「クレムリンメソッドを買ってください」というのも何ですので、転載させていただきます。

ウクライナ革命、アメリカの狙いはウクライナの「資源独占」か?

ここまでの話だけでも、日本人には「かなりびっくり」でしょう。ウクライナ革命の動機についてプーチンは、「ロシア封じ込め政策の一環」としています。しかし、ロシアではもう一つ、「アメリカがウクライナの資源独占を狙った」という話が「定説」になっています。

 

私は、「アメリカの狙いは資源か?」と「?」マークをわざわざつけました。理由は、残念ながら日本語の資料がなく、「間接証拠」しか提示できないからです。しかし、興味深い話なので、書いておきます。

 

出所は、ロシア国営テレビ「RTR(エル・テー・エル)」の人気番組「ヴェスティ・ニデーリ(週刊ニュース)」(2014年5月18日放送)です。この番組、研究者の間では、「クレムリンのプロパガンダマシーン」と呼ばれていて、もちろん丸ごと信じるわけにはいきません。しかし、これからお話する件は私自身が事実であることを確認しています。

 

なんの話か?司会のキシリョフさんは、バイデン副大統領の次男ハンター・バイデンが「ウクライナに出張した」といいます。「ハンター・バイデンって誰だ!?」ですね。誰でも入手できる情報源として、バイデン副大統領をウィキペディアで検索してみましょう。そこには、こうあります。

 


ロバート・ハンター・バイデン:次男(1970年-)。

現在はロビイングを手がける事務所オルデイカー・バイデン&ブレアLLPの共同設立者ならびにアムトラックの経営委員会の副議長を務める。


 

お父さんは副大統領、さぞかし「ロビイング」(ロビー活動)もうまくいくことでしょう。キシリョフさんはつづけます。

 

「バイデン副大統領の次男が、ウクライナでシェールガス採掘権を取得している企業BURISMAに出張した」

 

BURISMA?日本人にはまったく聞きなれない名前です。しかし、いまの時代、どこの会社もインターネットにホームページ(以下、HP)をもっていますから、日本人でも確認することができます(Burisma Group)。

 

私は、この番組を見て、即座にHPを調べたのですが、「おお!」という感じでした。ありました。そして、即座に画像をパソコンに保存しました。そこには、「ハンターバイデンがBURISMAの取締役に就任した」旨(むね)のプレスリリースがあったのです。

 

残念ながら今は削除されていますが、BURISMAのHPを見れば、いまだにハンター・バイデンさんの存在を確認できるでしょう(北野註:5年経って、ハンターバイデンはすでに取締役ではないようです)。

 

キシリョフさんは、アメリカ合衆国副大統領の息子がウクライナのシェールガス利権の最中枢に入り込んだ件について、こんなコメントをします。

 


パパ(バイデン副大統領)は、政治的保護を与え、息子は、現場に行く。アメリカはウクライナ人に、「民主主義の重要性」を説きながら、本音は、「資源」を狙っている。アメリカは、資源のために戦うが、「自分で戦うこと」は「流行」ではない。戦いは、「原住民」(ウクライナ人)にやらせよう。


 

つづいて番組では、「ウクライナのどこに石油・天然ガスがあるのか?」が映し出されました。

 

西部、カルパトスカヤ。東部、ユゾフスカヤ。南部、プリチェルノモルスコークリムスカヤ。

 

ウクライナ西部は、当時から親欧米新政権が掌握していたので、問題ない。しかし、アメリカの「ウクライナ資源利権独占」を妨げていたのが、同国からの独立を宣言した、いわゆる「親ロシア派」の存在でした。

 

番組が放送された2014年5月18日当時、戦闘がおこなれていたのは、スラヴャンスク、クラマトルスク、ドネツク、マリウポリ。これらの諸都市には、いずれも油田・ガス田が存在している。つまり、ロシア国営テレビは、「アメリカはウクライナの石油ガス利権を狙って革命を起こしたと見ているわけです。

 

日本では、「トンデモ系」「陰謀論」的見解ですが、私たちは、少なくとも「バイデン副大統領の次男が、ちゃっかりBURISMAの取締役に就任した」ことは確認できます。 

 

私は、「事実だけを見ましょうと書きました。ハンター・バイデンさんが、BURISMAの取締役に就任したのは、「事実」。「アメリカが、そのために革命を起こしたのかどうか?」は、証拠がありません。

5年前の本に書いたこと。今さら世界的問題になって、驚きです。この話からわかることは何でしょうか?「クレムリン情報ピラミッドもたまには役立つ」ということ。

もう一つ、トランプ弾劾について。

ウクライナに圧力をかけたのはトランプではないジョーバイデンだ!

これは、別に彼が安倍総理に、「靖国に行くなよ!」と命令したから書いているわけではありません(笑)。

image by: Evan El-Amin / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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