被災タワマン住民に伝えたい、震災でマンションの絆が深まった話

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台風19号による被害が日々伝えられる中、一部地域のタワーマンションの断水や停電状況が、どこかセンセーショナルな視線で報道されています。これを受け、無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者でマンション管理士の廣田信子さんは今回、自身が東日本大震災時に経験したマンションでの被災生活や、興味の視線に晒されながらも徐々に立ち直ったきっかけ等を記しています。

被災したマンションがんばれ!必ず体験は活きる!

こんにちは!廣田信子です。

台風19号の被害状況がどんどん明らかになります。川の氾濫で自宅が水没した方々が、呆然としつつも家の片づけを始めている様子に、心が痛みつつ、それでもどこか実感が伴っていない自分を感じてしまいます。

それなのに、マンションの方々が停電や断水、エレベーターが使えないことで、そこでの生活をあきらめ、親戚宅やホテルに避難している話を聞いたとき、残った方々が、みんなが力を合わせて泥をカキ出している様子を見たときには、自分の東日本大震災の時の体験が瞬時に蘇り、自分のことのように感じます。

3.11の翌日、ようやくマンションにたどり着いたとき、マンションの敷地は液状化で噴き出した泥に埋まっていました。断水で水が出ない、排水管もやられているので、手洗いもできない、トイレの水も流せない、2週間の被災生活が始まりました。マンション管理や防災に関わっている者として、この様子は写真にとっておくべき…と思っても、とてもその現状にカメラを向けられませんでした。

小さなお子さんがいたり、高齢者の方は、水が出ない、トイレが使えない生活にやはり親戚宅やホテルに避難しました。1階に仮設トイレが設置されましたが、和式の仮設トイレを高齢者や子供は使えないのです。

残った人間は、総出で敷地内の泥カキをしました。自然にリーダーが現れ、呼び掛けに多くの人が集まります。日常の生活を取り戻すために、みんなで力を合わせた時間は気持を前向きにしてくれるものでした。

水が使えないので、きれいに清掃はできず、泥は残ります。それが乾燥すると、細かい粒子となって舞い上がり、マスクなしではいられない状況になります。泥カキ作業で、泥だらけになって自宅に戻って、無意識に洗面所で手を洗おうとして、水が出ないことに気づくのです。

そんな生活を共有した人たちの仲間意識は、特別なものがあります。人が集まって住まいを共有して暮らしているマンションはいざというときには、心強いと改めて確信しました。

たくさんの遠方の知人が、心配して連絡をくれましたが、「ありがとう、大丈夫」と言いながら、そう、無事で大丈夫だった…でも日常はここにまだない…という気持ちは伝えようがありませんでした。そんなとき、同じマンションの人たちは、何も言わなくても、思いを共有できる存在でした。

私が、市内の写真を撮ることができたのは、被災から10日後でした。復旧のめどが立ったことで、少し客観的に現実を見られるようになったからです。それでも、傾いたままの戸建て住宅には、とてもカメラが向けられませんでした。

そのころには、身近な被災地を見ようとたくさんの方が浦安に入りバチバチ写真を撮っていました。「わ~すごいね。こんなに傾ている」…という会話に、胸が痛み、何だか腹も立ちました。昨夜は、そんな当時の気持ちが蘇って、なかなか寝付けませんでした。

今回、浸水被害にあったマンションの皆さんたいへんでしょうが、どうぞがんばってください。きっと、今回の経験は、管理組合をより強くするはずです。そして、被災すると、前向きに頑張っていても、どこか心が弱くなっています。

見学気分で訪れたり被災した人たちを傷つけるような言動はやめたいです。私も、知人の何気ない「だから、埋め立て地のマンションなんて買っちゃいけないって言ったでしょう」という言葉がグサッときました。被災から3カ月もたっていたのに(笑)。

こういうとき、近くにいて、傷みを共有し、手助けができる人間以外は、ただ、心で祈り、エールを送るしかないのです。

で、あとは、被災地への寄付ですよね!

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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