MAG2 NEWS MENU

学校運営はデザインだ。教育現場をITでオーダーメイドする

欧米では小学生にタブレットを与え、リモートITで授業に参加させるケースもあります。日本でも「積極的な選択肢を学校教育に取り入れる」と学校理事が宣言し、通信制のN高等学校が設立されたりもしましたが、通信制はまだまだ少数派です。メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、学校こそITの多用でオーダーメイド化でき、幸せな未来を自ら掴む生徒に成長させられるのでは、と指摘。現代における理想の学校像を語っています。

スモールビジネス・デザインスクール

1. 大量教育からオーダーメイド教育へ

今の小中学校はチェーンストアに似ている。規格化された学校が全国津々浦々に大量に作られた。教師も大量生産された。指導要領というマニュアルも作られた。この手法は産業革命に対応したものだった。そして、高等教育や職業教育にも同様の手法が使われている。

その結果、規格化された人材が大量に育成された。ある時代においてはその手法は正解だったと思うし、一定の成果を上げたのも確かである。しかし、時代は変わった。ICT革命の波は産業構造を変革している。同様に、教育のインフラも変化している。規格化された教室、黒板、教科書ではなく、一人一人にタブレットを配布し、個々の進捗に対応できるようになった。インターネットによる授業なら、一流の教師の授業を何万人もの学生が同時に受けることも可能である。
大量生産からオーダーメイドへ。その流れは教育にも及ぼうとしているのだ。

2. ネット活用で学校運営をデザイン

私は20歳代から専門学校で非常勤講師を始めた。しかし、常に不満を持っていた。あまりにも講師料が安いのだ。とても生活できるレベルではない。正社員の教職員の給料は保証されているが、ある意味では派遣社員である非常勤講師は賃金が低く抑えられている。そこには、同一労働同一賃金の原則はない。

学生のために授業をしていても、常に搾取されているという思いは消えなかった。人に使われるのではなく、自分で学校を経営したい。いつしか、そんな妄想をするようになった。しかし、学校を作るのは難しい。学校法人ではなく私塾のようなものだったとしても、教室が必要である。会議室を借りるだけでも安くない。そして、学生や受講生を集めるには、広告宣伝が必要だ。

これらをネット活用で何とかできないのか。しかし、ネット会議システム、Eラーニングシステムも安くはない。そんなことを考えているうちに、ZOOMというネット会議システムに出会った。最低のコースは無料だが、かなりのことができる。その実証実験も兼ねて、ZOOMを使って、友人とネット会議を始めた。

3. 幸せのための小さなビジネスをデザインする

教育の目標は何だろう。これまでの教育では、役所や大企業の中で活躍できる人材を育成することだったと思う。競争を勝ち抜いた人は、中央官庁や大企業に就職できる。それが最高のゴールである。そして、日本のために働く。

そこに、個人の幸せという概念はなかったのではないか。中央官庁や大企業に就職しても、ストレスを抱え、ノイローゼになる人もいる。そういう人達は幸せとはいえない。

私は「個人の幸せ」を第一に考える学校を作りたいと思う。そのためには、競争に参加しないという選択もあるだろう。友人との出会い、異性との出会いも重要だ。単に知識を詰め込んでも幸せにはならない。

自分で考え、自分で行動する。他人に依存せずに、自分の人生は自分で切り開く。そんな人材を育てたい。そして、好きなことを仕事にして、社会に貢献し、社会と共生しながら、安定した生活を過ごす。誰にも強制されず、自由に生きていく。そんなイメージだ。

そういう人生を送るためには、大企業への就職ではなく小さなビジネスを起業した方が良いのではないか。そんな仮説を基に、起業の方法、人生の目標設定の方法、人生に必要な知識や考え方を得られる学校である。

4. スクーリングとZOOM会議ゼミ

個人の人生に対して、一人の人間が教えられることには限界がある。多くの人の意見を聞いたり、ディスカッションをしながら、自ら会得していく。これは学校でも職場でも同様だろう。学校での人間的成長は、教師による授業だけではなく、友人との議論や対話によって醸成されていくことは間違いない。その意味で、クラスメートを作ることは重要だ。インターネットスクールでもクラスメートの設定は欠かせない。

教師の主な仕事は、「問題提起」「情報提供」「コーチング」である。授業のイメージは下記の通り。
月に一回、スクーリングを行う。ここでは問題提起と情報提供を行う。学生間の交流も図る。ある意味で、クラス意識を持ってもらう。補足として、書籍の紹介、ブログやNOTEの紹介、動画の配信等も行う。

書籍の紹介は重要だ。大学を卒業する条件として、どれだけの書籍を読むべきか、という基準があれば、それをクリアするだけでもかなりの教育効果はあるだろう。書籍リストは大学に負けないレベルにしたい。学生からも書籍やWeb上の資料等を紹介してもらい、共有する。

スクーリングに出席できない人は、ZOOMで参加する。リアルタイムで参加できなければ、後からビデオを観てもらう。週に一回、ZOOM会議でゼミを行う。スクーリングに関する質疑応答、新たな問題提起と情報共有を行う。互いの顔も確認できるので、実際に会って話をしているのと変わらない効果が期待できる。

これを6カ月行い修了。最後に修了パーティーを行う。卒業生はSNSでグループを作成し、その中で情報交換したり、新たなコースの希望等を出せるようにする。それらの情報を基に講師を選定し、新たなコースを作っていく。今の段階ではリアルな学校に負けない教育ができると思っているが、いかがだろうか。

編集後記「締めの都々逸」

「書物読み込み 師と友がいて 議論 酒飲み 人となる」

学校って何だろう。何が揃えば学校になるんだろう。文科省は教授や講師、土地と建物、教室、研究室、図書館があれば学校が成立すると考えているが、これを実現するのは大変な資金が必要だ。

ネットを活用すれば、不動産はいらないのではないか。図書館もあるに越したことはないが、必要な図書リストを公開する方が現実的ではないか。

残るは教授陣だが、立派な学歴と業績があっても、その人の講義が役に立つとは限らない。偉い教授でも十年一日の如く、つまらない講義をしているのでは価値がない。そもそも、何年もの時間を束縛されて、高額な授業料を支払うだけの価値があるのかを考え直すべきだと思う。

そんなこんなで、今後は個人の学校や塾が増えるだろう。その先駆者になりたいものだ。(坂口昌章)

image by:Shutterstock

坂口昌章(シナジープランニング代表)この著者の記事一覧

グローバルなファッションビジネスを目指す人のためのメルマガです。繊維ファッション業界が抱えている問題点に正面からズバッと切り込みます。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 j-fashion journal 』

【著者】 坂口昌章(シナジープランニング代表) 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 月曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け