私的問題がありながらも安倍首相を最長在任期間に押し上げたもの

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「桜を見る会」にまつわる問題が政局を揺るがす事態となっているさなか、首相としての通算在職日数が歴代1位となった安倍晋三首相。以前にも「モリカケ問題」などがあり、長期政権の弊害を訴える声もありますが、反対になぜそのような政治家でありながらこれほどの長期政権を維持できているのでしょうか?軍事アナリストの小川和久さんが、主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』で、政治家・野中広務さんの行動を紹介しながら、自身の考えを伝えています。

政治家の「志」ということ

安倍晋三首相の在任期間が憲政史上最長になりました。

「安倍晋三首相は20日、第1次政権からの通算在職日数が2887日となり、歴代1位の桂太郎を追い抜いた。再登板から7年近くたっても政権基盤は安定しており、自民党総裁の任期が終わる2021年9月に向けて記録更新を続ける可能性がある。党内には続投論もくすぶるが、首相は総裁4選を否定。残り任期で憲法改正などの課題に道筋を付けたい考えだ」(11月20日付時事通信)

そのニュースを眺めながら、「政治家の志」について思いを馳せることになりました。私が一緒に仕事をしたり、付き合ったりしてきた政治家で「志」を感じた人がいないわけではありません。

例えば、当の安倍さん。第1次政権で着手した国家の司令塔・日本版NSC(国家安全保障会議)を第2次政権の最初の段階で実現しました。これが、外交・安全保障面での安定飛行の原動力となっています。

さらに、憲法改正。賛否の分かれるテーマですが、明確な志をもって、できるだけ多くの国民に支持される形で実現しようとしています。

これまた賛否の分かれる郵政民営化を実現した小泉純一郎首相も、明確な「志」を持っていたわけです。

首相ではありませんが、小渕恵三政権で官房長官を務めた野中広務さんも忘れることができない人です。野中さんの業績は、私が知っているだけでも1冊の新書版が書けるほどありますが、ドクターヘリの実現はその最たるものでしょう。

1998年の秋、野中さんは知り合って2カ月ほどしか経っていない私に尋ねました。「間もなく阪神・淡路大震災から4年になりますが、国民の安全のためになすべきことに、どういったものがあるでしょうか」

野中さんは阪神・淡路大震災の時の自治大臣です。日本の危機管理の後れを痛感させられた立場から、ずっと問題意識を持っていたことがわかりました。

私は、先進国の中で日本だけが実現していないドクターヘリについて説明しました。野中さんは小料理屋の割り箸の袋を開いて、その裏に小さな文字でメモをしていましたが、3日後、翌年4月からのテスト事業の予算を確保したと、ご本人が伝えてきました。

今でこそ57機が救急救命にフライトし、映画・テレビドラマの『コードブルー』として知らない人がいないドクターヘリですが、当時の日本には1機もなかったのです。

安倍さん、小泉さん、野中さんのように、自分は政治家として何をやりたいのか目標を明確に持ち、また、いま何をなすべきかを常に考えていて、それを実現するのが「志」というものではないでしょうか。

桜をみる会、森友学園、加計学園問題など、かなり私的な問題でイメージのよくない安倍さんですが、政治家の「志」という面からの評価もきちんとしておきたいものです。

与野党の政治家の皆さんは、いくら口先で「日本のため、国民のため」と言っても、国民に見抜かれていることを心に刻んで欲しいと思います。(小川和久)

image by: White House photo by Paul Morse [Public domain], via Wikimedia Commons, Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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