MAG2 NEWS MENU

「年金は払わない」そのことであなたに起きる最悪のケースとは?

「将来、払われるのか分からないから」という理由で増えている年金保険料の未納。このような人が多くなることで、今後どのような問題が起きるのか、みなさんはご存知でしょうか? 今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、年金未納が多くなると、どんな保険よりも強力な「社会保障」を受けることができなくなってしまうケースを紹介し、詳しく解説しています。

なぜ年金に強制的に加入させられるのか

公的年金には老齢だけでなく、遺族年金と障害年金があります。ほとんどの人は年金は老後に貰うものだって認識が強いですが、それなりに若い人にも年金受給者は居る。遺族年金は約500万人、障害年金は約200万人いる。遺族年金は人の死から始まり、障害年金は人の重い傷病(実際は初めてその傷病で病院に行った日。初診日という)から始まる。

こういう人生にとってかなり辛い状況から発生する年金なので、お話をする時とかはですね、お相手の気持ちにはかなり神経を使うもんです^^;

なお、死や初診日は保険事故という。保険事故が発生するから保険としての年金が請求により支払われる。これらの人生においての予測困難なものであり、保険事故は所得を大きく失う出来事だからです。

大黒柱となってるような人が死亡したら、残された家族の生活が危機に瀕する可能性がある。また、病気や怪我で長期の治療が必要になったら、多くの人は働く事が困難になってしまう。これらの年金はまあ、保険事故だなっていう事がわかりますが、老齢もまた保険事故となる。

やはり、老齢になると体力的に働く事が困難になり、また就職自体も非常に難しくなる。所得が得られにくくなってくる。長生きするのは良い事ですが、長生きというのはそういったリスクを抱えている。

だから、もしとても長生きする事になったら所得が得られにくいという危険性があるから、あらかじめ若い頃に年金保険料を納めて、長生きというリスクに備えようというのが老齢の年金。

将来年金貰えるか貰えないかの話になる時に、早死にしたら損じゃないか!っていう声があったりしますが、長生きという事態に保険をかけてるのであり、損とか得という話は適切ではない。長生きしないから年金保険料支払いたくないといっても、本当に早死にするのかどうかは誰もわからない。

もし、年金保険料をひたすら未納にしていて老後を迎えても、人道上は見捨てる事ができないから健康で文化的な最低限の生活が保障という事で何らかの支援を受ける事になるでしょう。

そういえば国民の40%くらいの人が未納とかいう話がたまに話題になりましたが、実際は95%くらいの人は未納じゃない。

国民の4割が年金を払ってない、は本当なのか? 年金のプロが検証(hirokiまぐまぐニュース記事)

厚生年金なんかは給与天引きされて未納にはできないから、この人たちは納付率100%となる。

さて、年金はよくメディアで不安を煽られる事が多いですが、そのせいでとんでもない損をしてしまう恐れがある。原則として遺族年金や障害年金は過去の保険料納付記録で貰えるか貰えないかが決まるので、あまり未納が多いとどんな保険よりも強力な社会保障が1円も受けられない事態になってしまう。泣くに泣けない事態を見ていきましょう。

1.昭和55年9月26日生まれの男性(今は39歳)

● 何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)

20歳になる平成12年9月から平成15年3月までの31ヵ月は昼間大学生だったが、国民年金保険料を未納にした。平成15年4月からは民間企業に就職し平成25年6月までの123ヵ月厚生年金に加入した。

年金保険料は払いたくなかったが、おおむね週の勤務時間が正社員の4分の3以上、かつ、月の勤務日数が正社員の4分の3以上を満たすと本人の意思に関係なく厚生年金に加入しなければならず、保険料は給与から天引きされるので徴収からは逃げられない。

平成25年6月30日をもって退職し、平成25年7月からは退職特例免除による国民年金保険料を免除した。免除申請は前年の所得(本人だけでなく世帯主と配偶者)により判断されるが、退職特例免除は本人の所得を除いて世帯主、配偶者のみの所得で審査される。退職直後は本人の前年所得が高くて免除できない事があるからですね。

平成25年7月から平成26年6月まで12ヵ月全額免除。平成26年7月以降も免除にできたはずが、申請に行くのが面倒でそのまま未納にした(退職特例免除は退職した年度の翌年度まで使える)。

平成30年2月18日(初診日)にかねてから体調の悪さで病院に行った。慢性腎炎により腎不全の一歩手前の状態だった。これでは透析になるという事で、さらに腎不全は障害年金が請求できるのではと教えてもらった。

障害年金は未納が多いと貰えない場合があるとの事で、平成30年2月27日に過去2年1ヵ月以内(平成28年1月まで)の保険料と平成30年3月分を納めた。さらに2月27日同日に2年分保険料を納める「2年前納」を申し込んだ(平成30年4月30日引き落とし)。


※ 注意

国民年金保険料の新規の1年前納や2年前納は2月末までの申し込みの4月末引き落とし。


2年前納は平成30年4月分から平成32(令和2)年3月分の24ヶ月分を一括で納めた。

さて、未納が多かった男性ですが、障害年金は請求できるのでしょうか。1年6か月経過した日(障害認定日という)の令和元年8月18日から請求可能。障害年金を請求する場合は初診日の前々月以前の保険料納付状況を見る。年金保険料納めなければならない月の3分の2以上(66.66%以上)は未納や滞納ではない事が必要。初診日の前々月以前(平成12年9月から平成29年12月までの208ヵ月)の納付状況をまとめる。

つまり、208ヵ月のうち未納ではないのは、123ヵ月+12ヵ月=135ヵ月。135ヵ月÷208ヵ月=0.649=64.9%<66.66%となり、障害年金は請求できない。

いやいや、平成28年1月に遡って平成29年12月までの24ヵ月納めたやん!そうすれば135ヵ月+24ヵ月=159ヵ月となり、159ヵ月÷208ヵ月=76.44%となって満たすんじゃないの??

…と思われそうですが、初診日以降に納めた分はすべて無効となる。それが過去分であろうと。年金は保険だから初診日前に納めた保険料納付状況を見る。初診日という保険事故が起きる前に自分でできる最低限の備えをしていたかどうかを見るというわけです。事が起きてから保険料納めたら後出しジャンケンになってしまう。そういうわけで、請求ができない。

もう一つの保険料の納付状況を確認する初診日の前々月までの直近1年間(平成29年1月から平成29年12月)に未納が無い事というのも、初診日(平成30年2月18日)以後に納めてるから使えない。慌てて納めたのは先ほど書いた、平成30年2月27日(初診日は平成30年2月18日)。よって保険料の未納が多くて請求できないというのはどうやっても助ける事ができない。せめて未納にしとくくらいなら免除制度を使っていてほしかった。

初診日が国民年金加入中なので、もし請求できていたなら国民年金から障害基礎年金が支給されていた。支給は令和元年8月の翌月分から、障害基礎年金2級定額780,100円支払われる。今は障害基礎年金受給者には障害年金生活者支援給付金月々5,000円(年額6万円)も令和元年10月分から始まった。給付金と合わせるなら年間840,100円の支給となる。

もし障害状態が10年続くなら8,401,000円の損、20年続くなら1,680万円の損、40年とかなら約3,300万円の損をする事になる。年金で損得はあまり語りたくはないですが、いざという時の社会保障を棒に振る事になるので今までの保険料納付状況には気を付けておきましょう。定期便とか年金ネットでも確認できるからですね。払えないならとりあえず保険料免除!がいざという時損しない鉄則です。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座 』

【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け