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首相とジャパンライフ元会長を繋ぐ「渡航記録」と「中元リスト」

前回、「安倍首相とマルチ商法『ジャパンライフ』を結んだ政治家の実名」で、悪徳詐欺商法の権化とも言われるジャパンライフの山口隆祥元会長を、安倍事務所が「桜を見る会」推薦者リストに入れた裏事情を鋭く抉った、元全国紙社会部記者の新 恭さん。新さんは今回、自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、野党の追求により外務省から提出されたとある「渡航記録」が改めて浮き彫りにした首相と山口元会長との関係性を記すとともに、桜の会招待者名簿の破棄等で国民の知る権利を踏みにじる安倍官邸を厳しく批判しています。

ジャパンライフ元会長と福田・安倍清和会人脈

今回も「桜を見る会」をしつこく取り上げたいと思う。何が問題なんだとか、もっと議論すべきことがあるだろうとか、野党の追及チームを批判する声が一部メディア、右派言論人、ネトウヨの間で盛んだが、それはとんだお門違いだ

野党の会期延長要求にも応じず、そそくさと閉会した臨時国会。衆参の各委員会では、さまざまなテーマで議論がおこなわれてきた。焦点のひとつだった日米貿易協定の承認案などは、トランプ大統領の言うなりではないかと疑って野党が求める資料の開示に政府が応じず、議論が深まらないまま、数の力で与党が押し切ってしまっただけのこと。官邸の傭兵のごとき自民党は「政府が提出した法案の大半が成立した」と喜んでいたではないか。野党が重要案件を無視して「桜を見る会」疑惑の追及ばかりをやっているかのような印象を与える言論は慎むべきであろう。

税金がどう使われているか、国民には知る権利がある。政府が国民に隠し事をするのが安倍政権で常態化している。これでは民主主義が成り立たないことは言うまでもない。

桜を見る会の招待者名簿なるものは、国家機密に属するはずもなく、野党が要求すれば、はいどうぞ、と出てきてしかるべきたぐいの文書である。

それを、やれシュレッダーで廃棄しただの、電子データも消去して復元はできないだのと、ウソ丸わかりの御託を並べてまで官邸や内閣府が包み隠そうとするのはなぜなのか。よほどの不都合が飛び出すのを恐れているとしか考えられない。

「桜を見る会」が実態として、安倍首相の支持者集会」であったことは疑いようもない。今春の宴で、安倍首相が「みなさんとともに政権を奪回してから7回目の桜を見る会になりました」、昭恵夫人が「これからも主人を応援していただくようお願いします」とあいさつした場面をネット動画で振り返ればこと足りる。

本来、政治的立場に関係なく、社会に功績、功労のあった人を招き、ねぎらうのが目的なのに、こんな非常識で恥かしい挨拶をして平然としていられるのは、イエスマンばかりに囲まれて“裸の王様”になっている証拠であろう。北のあの独裁者のごとく、自画自賛の酩酊政治に溺れ、毎年、新宿御苑で得意満面に我が世の春を謳歌してきたのではないか。

そんな体たらくゆえ、悪徳詐欺商法の権化ともいうべきジャパンライフの山口隆祥元会長を、2015年の「桜を見る会」で、総理枠の招待者リストに入れることに何ら疑問を感じることもなかったのではないか。

まんまとそれを受け取った山口元会長は総理のお墨付きの証として高齢者を安心させる材料に使い、次々に多額の老後資金を言葉巧みに奪い取って全国に被害を拡大させたのだ。

それにしても、なぜ山口氏が総理枠で招待されたのか、真相は、依然として謎のままである。安倍首相は国会でこう発言している。

「山口会長については、過去において私が招待された多人数の会合等の場で同席していた可能性までは否定しませんが、山口氏と一対一のような形でお会いしたことはなく、個人的な関係は一切ありません。私の妻は山口氏との面識はありません」

一対一で会ったことはない。多人数の場で同席したことは否定しない。微妙な言い回しではある。二対一とか、二対二なら、「多人数の場だ」と言い逃れできると踏んでいるのだろうか。

山口元会長はマルチ商法が社会問題になったころから永田町、霞が関界隈で知られ、国会の会議録に時折、その名が登場する。会議録検索をしてみると、「安倍晋三 山口隆祥」では1件だけヒットした。2017年4月5日の参院・消費者問題に関する特別委員会。大門実紀史議員の質問である。

「政治家や大臣に対するお中元リストというのもジャパンライフの関係者から、やっぱり良心的な方がいるわけですね、入手いたしまして、いろんな方の名前がずらっと並んでおります。野党の議員の名前も出ております。大臣経験者、あいうえお順ですから、最初に出てくるのは麻生太郎さん、二番目が安倍晋三総理ですね」

お中元リストに載っているからといって、安倍首相と山口氏になんらかのつながりがあるとは限らない。だが、首相の父、安倍晋太郎氏はどうか。晋太郎氏の秘書官をしていたのが安倍晋三氏である。

安倍外務大臣 山口隆祥」で検索すると、1986年2月10日の衆院予算委員会における松浦利尚議員(社会党)の質疑にたどりついた。

松浦議員はジャパンライフの山口氏が会長をつとめる健康産業政治連盟なる政治団体のファイルを持ち込んでいた。そのなかの事業報告書に関する発言。

「安倍外務大臣、これは書いてあるからしようがないですね。ここに59年度の事業報告があるのです、59年1月1日から12月31日まで。その中に前山口労働大臣、それから安倍外務大臣、それと山口隆祥会長とともにニューヨークを9月の22日に表敬訪問をしておると書いてある」

これに対して安倍外相はこう答えている。「それは山口代議士がたくさんの人と一緒に、ちょうど私が国連に行っておったときに紹介といいますか表敬に連れてきたことは、確かにその中に今の山口隆祥氏ですか、おられたことは事実です」

紛らわしいが山口代議士は、ジャパンライフの山口元会長と親しい政治家の一人だった。どのようないきさつにせよ、安倍外相が国連出席のためニューヨーク滞在中、もしくは飛行機のなかで、山口元会長と会ったことはこれでほぼ確認できた

「桜を見る会」の野党追及チームは外務省に対し「安倍外相の訪米に当時の安倍晋三秘書官が同行していなかったか」と問い合わせ、野党追及本部ヒアリングの席上で回答するように求めた。

12月6日のヒアリングには、いつも通り、内閣府の酒田元洋総務課長ら、首相や官房長官の威光におびえ、どんな質問にも、しどろもどろ答弁を繰り返す気の毒なお役人たちが顔を並べていたが、その一角に、外務省官僚が宿題に答えるべく座っていた。

「外務省、渡航記録出てきましたか?」との質問に外務省の担当者は苦り切った顔で、言葉を絞り出した。

「1984年、安倍晋太郎外務大臣が国連総会出席のために渡航した際の一行名簿に、当時、外務大臣秘書官だった安倍総理の名前が記載されております」

その瞬間、会場にどよめきが広がった。「ほら、出た」「きわめて重要な情報
だ」。

「山口元会長は一行の名簿には記載されておりません」。外務省の担当者はわざわざそう付け加えたが、「民間人が飛行機に同乗していても名簿には載らないだけのことだ」と野党議員らに一笑に付された。

ジャパンライフは福田赳夫元総理大臣とも付き合いが深かったらしい。テレビ東京に残っていた34年前のジャパンライフの社内報には福田元総理の年頭所感が掲載されているという。

福田赳夫元首相といえば、安倍首相の出身派閥清和政策研究会の初代会長だ。二代目会長が父、安倍晋太郎元外相である。こういう系譜をみると、ジャパンライフの山口元会長が安倍晋太郎元外相と話のできる間柄であったとしても不思議ではない。

いつかは政治的地盤を受け継ぐことを前提に、その安倍晋太郎氏に秘書としてたえず付き従っていたといわれる安倍晋三氏のこと。山口元会長と全く関係がないように言うほうが、かえって不自然なのではないだろうか。むしろ、政治の裏面を担う秘書として山口氏との接触は頻繁だったかもしれないのだ。

ところで、山口元会長に招待状を送ったのは2015年だ。今年ではない。山口元会長が招待されていたことは、かつて国会で取り上げられたこともある。いわば旧聞に属する。

政府は2015年、16年、17年はおろか、終わって間がない今年の名簿さえ、廃棄を理由にひた隠しにしている。今年の招待者のなかには、山口元会長以上に不都合な人物がいたということなのだろうか。

今年の招待者名簿の提出を共産党議員が要求したその日、間髪を入れずシュレッダーにかけて廃棄し、電子データも同時期に消去するという官邸と内閣府のドタバタぶりからは、なにがしか重大な新事実の発覚を恐れるような、緊迫した空気が漂ってくる。

何を隠しているのか。どうして国民の知る権利を無視するのか。安倍官邸は腐りきっている。もういい加減、往生したらどうか。

image by: 首相官邸

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