ジャーナリストの伊藤詩織さんが、TBSの元ワシントン支局長でフリージャーナリストの山口敬之氏から性的暴行を受けたとして慰謝料1100万円の損害賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所は、山口氏に330万円の賠償を命じる判決を言い渡したと、NHKニュース、共同通信、時事通信などが伝えた。反訴が棄却された山口氏は同日記者会見し、判決を不服として「控訴する」と話したという。
時事通信によると、鈴木昭洋裁判長は、意識のない原告に対し、山口氏が合意なく性行為に及んだことや、伊藤さんが意識を回復して拒絶した後も行為を継続しようとしたことを認めた。一方で、山口氏が伊藤さんの著書や記者会見などでの発言により社会的信用を傷つけられたとして求めた1億3000万円の賠償については請求を棄却している。
この山口敬之氏の性的暴行疑惑については、安倍政権の関与や大手メディアの忖度、警察官僚主導の事件もみ消しなど、多数の「闇」が報じられている。MAG2 NEWSでも複数の記事で性的暴行のみに限らない山口氏の疑惑や安倍政権関与について伝えてきたが、今一度山口氏絡みの疑惑や伊藤さんの孤独な闘いを振り返ってみよう。
性的暴行疑惑と警察権力の闇
そもそもの発端は、伊藤さんが就職相談のために山口氏と会食したことに遡る。アルコールで意識を失った伊藤さんを無理やりホテルに連れ込み、望まない性行為を強要した山口氏に対し、伊藤さんが被害届を出したというものだ。この被害については、ホテルの防犯カメラやタクシー運転手の証言など多数の証拠が存在している。
問題はここからだ。詳細は「どこも報じない、山口敬之氏「疑惑」の背後でうごめく権力の闇」に譲るが、準強姦容疑で取られた山口氏への逮捕状が、警視庁刑事部長・中村格氏からの指示で逮捕直前に取りやめとなり、嫌疑不十分で不起訴処分に。その背後に安倍官邸が絡んでいるのではないかという疑いがかけられたのだ。
山口氏不起訴に政権関与の疑い
「海外からも疑問、詩織さん性的暴行事件になぜ日本は沈黙するのか」にある通り、山口氏はニューヨーク・タイムズ紙に「安倍晋三首相の伝記作家」という肩書きを付けられるほど安倍首相と懇意にし、安倍政権擁護の著書を記している。コメンテーターとして出演したテレビ番組等でも、森友問題などで政権に向けられる疑念を交わしてきた人物だ。
一方の中村格氏も、2012年から2年余り菅義偉官房長官の秘書官をつとめ、官邸人脈との太いパイプを持っている。「性的暴行疑惑のアベ友ジャーナリストを見逃した警察官僚の出世欲」でも事件当日の防犯カメラの映像について触れているが、これほどまでに証拠が揃い、逮捕寸前というところまで来て覆ったというのは不自然すぎやしないか。
「#MeeTo」運動の広がり
伊藤さんは、山口氏不起訴を不服として検察審査会に申し立て、顔と名前をさらして記者会見をしたのだが、時を同じくして過去の性暴力やセクハラ被害をSNSなどでカミングアウトする「#MeeTo」運動がアメリカから伝播したことで、この事件はネットメディアを中心に話題となった。
また伊藤さんは著書『Black Box』の中で、日本の捜査当局の不透明さや性暴力を受けた人々が直面せざるをえない社会的システムの不備の現状などを自身の体験から綴っている。
日本の隠された恥
これを受け、イギリスのBBCが「Japan’s Secret Shame(日本の隠された恥)」として伊藤さんの事件を取り上げ、性被害について声をあげにくい日本社会の問題を放送。その中で被害者に対する激しいバッシングやセカンドレイプとも言える誹謗中傷が相次いでいることを伝えたが、現役の女性国会議員が「女として落ち度があった」と伊藤さんを非難したり、安倍昭恵夫人がFacebookに上がった山口氏のセカンドレイプ的反論に「いいね!」を押していたことも忘れてはならない。
このようなセカンドレイプ的なバッシングや国家的な「闇」と闘った末に伊藤さんが勝ち取った判決。これを受けて伊藤さんは、「たくさんの方に支えられて来たからこそここまで来られました。今回の判決で、1つのピリオドをつけられたと思います。しかし、勝訴したからといって私が受けた傷はなかったことにはなりません」と涙ながらに支援者に感謝している。
判決後の伊藤詩織さんの支援者へのコメントです。 pic.twitter.com/GOULWZCnQG
— 瀬谷 健介 @BuzzFeed (@dondon_01) December 18, 2019
伊藤さん勝訴の報道を受けて、Twitterでは「久しぶりに希望に触れた」「かろうじて日本国の正義が保たれていると感じた」などと、安堵する声も多く挙がっている。山口氏側は「法に触れる行為は一切していない」と控訴する方針だというが、政権関与があったか否かについても明らかにして欲しい。
Twitterの反応
時に警察も、司法も、身近な人でさえも、性被害にあった人を守れないことがあるのだと、心が折れそうになる判決や出来事が、今年は相次いだ。でも、変えていける。変えていきたい。今年の最後に、そう思えた。https://t.co/n3BdiMFBXG
— 安田菜津紀 (@NatsukiYasuda) December 18, 2019
さすがに今度酷い判決が出るようなら「ブラックボックス」どころではない。日本の司法・検察が腐敗したことを証明することになる。
真っ当な結果になりますように。https://t.co/tolddgKjL5— 凡人エリック (@No_Zey_2020) December 17, 2019
伊藤詩織氏に対する山口氏の賠償が認められ山口氏の1億円を超える反訴は棄却です。事実経過から妥当と思います。控訴されるでしょうがそれにしてもこの案件で逮捕・起訴がない事は可成異様に感じられます。刑事司法迄もが権力で歪められるなら日本は最早法治国家ではありませんhttps://t.co/DqdbDSLrPu
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) December 18, 2019
伊藤詩織さんがこの一連の件で負った心の傷と経済的損失(海外移住だって、日本で暮らしてるとバッシングが絶えないからだ)をひっくるめるといくらになるんだろう 1100万円の損害賠償請求に対して330万って安すぎるよな(一方山口敬之の請求の1億3000万円の反訴の厚顔無恥よ)
— シュン太郎ちゃん (@nakanishico) December 18, 2019
よかった。
大切な判例を、作ってくださった。“ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんから性行為を強要されたとして損害賠償を求めた民事訴訟の判決公判が東京地裁で開かれた。
山口さんに慰謝料など約330万円の支払いを命じ、山口さん側の請求は棄却。”https://t.co/4uikKswEIy— シオリーヌ(大貫詩織) (@shiori_mw) December 18, 2019
かろうじて日本国の正義は保たれていると感じます
わたしは、東京地裁(鈴木昭洋裁判長)の判断を尊重します。
— 飛行機雲見たか(都心低空飛行反対) (@hikokigumomita5) December 18, 2019
— cocochan (@cocochan000700) December 18, 2019
伊藤さんが性被害を公表したことは名誉毀損だとした加害者に対し、東京地裁が「彼女が自分に起きた被害を公表したことは性犯罪被害者を取り巻く状況の改善につながると考えたもので公益目的。名誉毀損には当たらない」としたこと。
久々に”希望”に触れて、涙が止まらない…
— () (@mlookslike_) December 18, 2019
被害届提出から4年、逮捕状を国に取り消され、バッシングで日本に住めなくなり、名前も顔も世界に晒されて330万円…。勝訴は心から祝福したいが本当に残念な国だ。
伊藤詩織さんと元TBS記者の民事訴訟、「合意ない性行為」認め山口敬之さんに330万円の支払命令 東京地裁 https://t.co/WcCLKsTINk
— ヒトミ⭐クバーナ@海外・全国取材ライター (@hitomicubana) December 18, 2019
より国に近づく第二審では判決が翻るのではないだろうか。自然とそう思えてしまうことがとても腹立たしい。そして何よりも合意なき性行為の慰謝料はこんなにも安いものなのか。 https://t.co/JdV3sNlPYE
— 宇野克郎 (@UKSound) December 18, 2019
日本の司法に道理が通った。
大きな、大きな一歩。私には想像もできない痛み、苦しみとともにこれまで声を挙げ、たたかってこられた伊藤詩織さんに心から敬意を表します。
伊藤詩織さんと元TBS記者の民事訴訟、「合意ない性行為」認め山口敬之さんに330万円の支払命令… https://t.co/hrP3pwl4Q1
— ️抛舟⚙️ (@DarthVajra) December 18, 2019
言葉は悪いが、どのツラ下げて控訴する?往生際があまりに悪い。このレイプ犯はどこまで詩織さんを傷つける?相変わらず有本香や小川榮太郎など安倍友桜を見る会グループが判決に異を唱える。厚顔無恥とはこのこと。この件でも分かるように絶対に官邸が絡んでいる。許せない。 https://t.co/ECU0qPXM83
— 渡部 深雪 (@mipom11) December 18, 2019
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