中国の人権弾圧の現状が、思わぬ形で明らかになりました。先日英国で購入されたクリスマスカードに、中国の生産工場で強制的に働かされている外国人受刑者からの「SOSメッセージ」が書かれていたというニュースが報じられ、世界中から非難の声が上がっています。しかし、「中国ではこうした人権侵害は日常的に行われている」とするのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』でその証拠を列挙するとともに、ファシズム国家へと変貌を遂げる中国への警戒を呼びかけています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年12月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【中国】中国収容所から届く悲鳴
● クリスマスカードに「助けて」 英スーパー、中国での生産を停止
今年もクリスマスがやってきました。みなさん、クリスマスはいかがお過ごしでしょうか。せっかくのクリスマスですが、敢えてこの残念なニュースを取り上げました。このメルマガでは何度か中国の人権侵害問題を取り上げてきましたが、クリスマスに再びこのようなニュースに触れたことをとても残念に思います。しかし、中国共産党が一党独裁を敷いている限り、この問題は解決されることはありません。
イギリスのスーパーで購入したクリスマスカードに、中国の生産工場の人がSOSメッセージを書いていたというニュースです。
ロンドンに住む少女が、学校の友人にカードを送ろうとイギリスのチェーンストアのテスコで売っていたクリスマスカートセットを購入。何枚か書いた後、次のカードを開くと、買ったばかりのカードにすでに何か書いてありました。以下報道を引用します。
そのカードに、ブロック体の大文字で、「私たちは中国・上海青浦刑務所の外国人受刑者だ。意思に反して働かされている。私たちを助けてください。人権団体に知らせてください」と書かれてあったという。
さらに、このカードを手にした人に、英国人ジャーナリストのピーター・ハンフリーさんに連絡するよう依頼する文章が記されていた。ハンフリーさんは4年前、上海青浦刑務所に収監されていた。
ハンフリーさんはBBCの取材に対し、2013~2015年に上海で拘束されていた際、最後の9カ月間は今回のカードを書いた受刑者がいるとされる刑務所に収監されていたと説明。
「これは私と同じ時期に収監されていた受刑者仲間で、現在も服役中の人が書いたとものだ」とした。
また、メッセージの内容は多くの受刑者の声を反映したものだとの考えを示し、誰が書いたかわかるが名前は決して明かさないと述べた。
近年、こうした出来事はこれまでも何件かが発覚してニュースになっています。例えば、イギリスの激安ファストファッショブランド「プライマーク」は、二度もこの種のニュースが出ています。
ひとつは、2014年「プライマーク」で購入したズボンからメモが出てきたというもの。そのメモには、「SOS!中国湖北省の強制労働収容所に監禁されている者です。毎日15時間に及ぶ労働を強いられている。ここで縫製されたアパレルは海外に輸出されている」と書かれていたそうです。
● 英人気ファッションブランド、中国の強制労働収容所で製造か
もうひとつは、同じく2014年、全く面識のない二人の女性が買ったワンピースに、メッセージ入りのタグがついていたとのニュースです。そのタグには、英語で「FORCED TO WORK, EXHAUSTING HOURS(無理やり働かされている。それも信じられない時間)」「“DEGRADING” SWEATSHOP CONDITIONS(みじめな環境の工場)」と書かれていました。
● 【続報】「助けて!」メッセージについて Primark が調査報告を発表
2012年、アメリカのハロウィーンの飾りからは、遼寧省・馬三家の労働教養所に収容されている孫毅さんからの手紙が出てきました。その内容は、「この商品を購入したあなた様へ、この手紙を世界人権団体にお渡し頂けませんか。中国共産党政権の迫害を受けているここの数千人は永遠にあなたに感謝いたします…」というものでした。
● 止まらぬ良心の囚人への拷問 – 中国収容施設からのSOSレター 差出人が拷問の実態明かす
孫毅さんは、このニュースをきっかけに顔と名前がメディアにさらされたためか、その後インドネシアに逃れた後、謎の死を遂げたそうです。
最後にご紹介するのは、文字によるメッセージではなく、モノによるメッセージです。
アメリカの人気ファストファッションブランド「ZARA」で購入したワンピースに、ネズミの死骸が縫い込まれていたそうです。その商品を購入した女性は、そのワンピースを着用したことによって広範囲におよぶ湿疹を患ったということです。
このネズミ事件は、中国の製造工場で働いている人が抗議のために混入させたのではないかとの憶測を呼びました。
冒頭の、イギリス人ジャーナリストであるピーター・ハンフリーさんは、自分が中国の刑務所に収監されていた罪状に対して、全く心当たりがないと言っています。謎の死を遂げた孫毅さんは、法輪功のメンバーだったという理由で収監されました。
中国では、こうした人権侵害が日常的に行われています。以前このメルマガでご紹介したウイグル人問題もそのひとつです。北海道大学の教授が中国で拘束されたことも、最近では話題になりました。彼は幸運にも解放されましたが、日本人は不用心で騙されやすいというイメージがあります。そして、中国での人権侵害は中国が共産党に牛耳られている間は解決しません。くれぐれもお気をつけ下さい。
年末になると、このようなクリスマスカードをはじめ、中華世界の牢屋に収容され迫害された人々の話が外に漏れてきます。かつてはソルジェニーツインがソ連で収容され迫害されたことを記した『収容所群島』や、台湾の『台湾監獄島』という本もありました。
儒教国家と社会主義体制は、「全体主義」が理想ですから、異見や異論を絶対に許さないイデオロギーがあります。私も小中学生の頃は、「密告」を義務づけられ多様性は絶対に許されない社会でした。牢屋は、そうした社会が悪と判断した「犯人」たちで溢れていました。私はそうした人々から牢屋での話を聞く機会が何度かありました。彼らによると、毎日かわるがわる拷問されて、親族でさえ誰か分からなくなるほど顔が腫れ上がるそうです。
万里の長城の壁で囲まれ閉じ込められている中華世界は、私からみたら大きな牢屋です。そこに収容されている人々は、「中華思想」の人だけです。ウイグル人やチベット人は「洗脳(マインドコントロール)」する必要があるので、さらに狭い牢屋に入れられるわけです。
彼らはそこで、いかにして「中国人」になるかについて叩きこまれます。孫文がよく説いていた「同化」政策です。中華数千年の歴史の中で、いわゆる少数民族の存在は「同化力」の問題として中華文明の永遠なる課題です。
中国は「世俗国家」であり、昔から「宗教は人民のアヘン」だと考えられていたため、様々な宗教が迫害されてきました。仏教に対する迫害は「三武一宗の法難」として知られています。
キリスト教徒に対する闘いは「義和団事変(北清事変)」が有名です。イスラム教徒に対する「皆殺し」は、現在まで数十年続いている「洗回」運動と呼ばれています。中国のムスリム集団は中国語で「回族」と呼ばれ、「洗回」はムスリム集団殲滅の意味です。
20世紀以後の中国近現代史について、中国専門の学者でも誤解や曲解することがあります。20世紀前半に中国は「帝国」から「民国」へ、そして「人民共和国」へと国体がかわっていきました。
そして、「中国の振り子」という言葉がありますが、つねに大きく左右に振れ続けるのが中国です。「中華人民共和国」という国名は同じでも、毛沢東の社会主義と鄧小平以後の中国を同じと見る人は多くありません。明らかに左のコミニズムから右のファシズム国家へと変身しています。
そして、習近平の中国はデジタル管理国家化を進めており、右でも左でもない全体主義だけがそのまま残り、先祖帰りの儒教型国家を目指しているようです。一君が万民を統率する、しかも「民」は目を潰された奴隷を示します。儒教型国家とは奴隷社会でもあります。
中国は他国に対しても、威圧的で「中華思想」丸出しの行動が明白に出ています。21世紀の人類は、この「中国問題」を共通の課題として取り組まざるを得ないでしょう。
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