MAG2 NEWS MENU

精神科医が深読み。任天堂が「ゼルダの伝説」に込めたメッセージ

任天堂の超人気作といえば「マリオ・ブラザーズ」シリーズとともに名が挙がる「ゼルダの伝説」。ゲームを嗜まない方でも名前を聞いたことはあるのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『セクシー心理学! ★ 相手の心を7秒でつかむ心理術』では、著者で現役精神科医のゆうきゆう先生が、ゼルダシリーズの最新作である「ゼルダの伝説~ブレス・オブ・ザ・ワイルド」をプレイした感想を精神科医の視点で紹介しています。

ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルドへの精神科医によるツッコミ

あなたは、任天堂の作っている「ゼルダの伝説」というゲームをご存じでしょうか。これおそらく大抵の方が「はい」と答えるはず。

任天堂といえば「マリオ・ブラザーズ」が有名ですが、ほぼ同じくらいの時期に作られ、何シリーズも出ている超人気作です。マリオが1ステージごとに完結する純粋なアクションゲームとするなら、ゼルダは色々な武器やアイテムをゲットし、多くの敵を倒して、どんどん強くなることで、最終的に大ボスを倒す、というゲーム内容になっています。

自分自身もこのシリーズが大好きで、それこそ最初の作品からプレイしていたのですが、「ニンテンドー64」で3Dになり、めっちゃ酔って途中で挫折して以来、まったくプレイしていませんでした。しかし最近、ニンテンドーSwitchで、最新作の「ゼルダの伝説~ブレス・オブ・ザ・ワイルド」をプレイして、そのあまりの素晴らしさに感動しました。

まず、3Dにも関わらず、とりあえず酔いません。これは3Dの描かれ方の問題なのか、または自分自身の感覚が変わったからなのか不明です。もし自分自身が変わったという場合、それが成長なのか退化なのか謎です。色々と感覚が鈍くなっただけだったらどうしよう。

まぁ何にせよ、とにかく酔わず、すごく快適にプレイできたので、それは何より報告したい。過去作で酔った人もぜひ、と。

美しくリアルすぎる世界

そして何がスゴイかというと、一番は「3Dで描かれた、美しく壮大な世界」です。これホント、このゲームの特徴を何より表現してると思う。もうアレです。ゲームの中に、地球の一部がそのまま再現されてるのです。もちろん世界中ほど広くはないんですが、うん。たとえば東京の台東区くらいはそのまま再現されてる。え、ここアメ横?うわ、ここ不忍池だ!わぁ、上野動物園にはパンダもいる!みたいな。うん。場所の選定のせいでスケールが伝わらなかったら申し訳ありません。

さらにたとえば「山」があったら、その山を登れます。また「海」があったら、海を泳げます。

え、当然じゃない?と思う人もいるかもしれませんが、いや、それがすごくリアルなのです。たとえばゲームには、体力の他に「がんばりゲージ」という、自分をはじめとする小学生レベルの人にも理解しやすいネーミングのゲージがあり、登山や水泳中に、それが少しずつ減っていきます。そしてそのゲージがゼロになると、転落したり溺れたりする…という生々しい状況が表現されています。

ちなみにその場合、どちらも基本的に死ぬので、山登りや海水浴には気をつけろという任天堂の教訓が含まれてるような気がしてなりません。まぁゲームプレイヤーの大半は山登りや海水浴なんて行きませんので、あまり意味ある教訓かは分かりませんけども。いつか部屋の中でゲームしてるだけで、がんばりゲージが減って死ぬゲームを開発してほしい。ゲーム依存の治療のためとかに。頑張ってませんか。そうですか。

さらに世界の一つ一つが、美しく描かれているのも特徴敵です。特に水の描き方がリアル。光に照らされた情景が、感動的に綺麗です。

話はズレますが「大きな妖精」とかも出てきて、その人は「水商売30年」みたいな雰囲気の女性で、その描写もリアルなので、広い意味で水の描き方には徹底的にこだわってるな、って思いました。

他にも「火」もリアルに表現されており、草原や木を燃やし尽くすこともできます。自分自身、敵の巣にバクダンを投げ込んで焼き尽くす、というのが何より楽しく、自分の中に潜む危険性をあらためて再認識できました。でもたいていのプレイヤーがそれやると思う。

本題よりも充実した世界

ここで、このゲームには「最終ボス」がいて、その最終ボスを倒すために、数人の「中ボス」を倒したり、ミッションをクリアしたりしなくてはなりません。しかしその本道とは別に、クリアしなくてもいいミッションがたくさん存在します。本道でやることが5とするなら、本道以外のやることが100くらいあります。

たとえばクリアすると体力やがんばりゲージが増える「ほこら」というものが100近くありますし、また見つけると、武器を持つ量が増える「コログの実」という要素が、ゲーム内に1,000コ近く存在しています。もうどっちが本道か分からないレベルです。

また外を走っていると、鳥や動物がたくさんいます。敵ではないため何の害もないのですが、弓矢を使って撃つと肉が手に入ります。それもあり、もう見つけるたびにバンバン撃ってました。そのためゲームの後遺症として、鳥や歩いてる人を見ると撃ちたくなります。「人間は別ではないか」というツッコミが出るかもしれませんが、とにかくそう思ってしまうのでしょうがありません。後遺症というより純粋な病気ではないかと思います。

またゲームでは「高いところから飛び降りて、パラシュートのようなもので遠くまで移動する」という演出もありますが、現実でも、同じく高いところに来ると飛び降りたくなります。自分は108歳まで生きるつもりですが、万一にもそれ以前に死んだ場合、「あぁ、ゼルダの伝説にハマりすぎて実行してしまったのだな」と思っていただければ幸いです。やりません。

走り回ることの喜び

何にせよ、ゲーム時間の90%くらいは、ただ荒野の中を走り回ってるだけなんですけども、それでもぜんぜん飽きません。「ゲームといえば敵と戦うのがメイン」みたいなイメージがあるものですが、ここでは敵が存在しない荒野を走るだけで、十二分に楽しさや発見を感じられるわけです。ゲームのサブタイトルが「ブレス・オブ・ザ・ワイルド」で、日本語にするなら「野生の息吹」ですが、本当に、「野生の世界を感じる」ことこそが、このゲームのメインテーマであり、そして何よりの醍醐味ではないかと思います。

ちなみに「コログの実」を見つけるためには、思わせぶりな配置の石を動かしたりして、小さな謎の生き物を発見する必要があります。ここで「石を持ち上げたら、その下からその生き物がでてきた」という場合、その後で必然的に持ち上げた石を降ろすわけですが、その際に降ろした石がその生き物にゴツンと直撃し、生き物が「ウッ」という苦しみの声をあげる、という心憎い演出もあります。そんな!そんなつもりなかったのに!

純真無垢なプレイヤーの99%が強制的な加害者になるため、良心の呵責で悩んだ彼らは「いやこれはミスではない、こういう世界なのだからしょうがない、よし、もっと敵を倒そう」みたいな思考をし、さらにゲームにハマっていく…。そんな制作者さんの狙いがあるとしたら言い過ぎでしょうか。言い過ぎです。

何にせよ世界を歩くだけで楽しいゲーム。これは本当に感動的でした。冗談抜きで、今までにプレイしたゲームの中でも、インパクトと強烈さではベストに入るかもしれません。

主役はゼルダでなくて…?

それはそうと、このゲームのタイトルは「ゼルダの伝説」で、このゼルダは、ヒロインの名前です。お姫様です。よくパッケージにも出てる主役の少年は「リンク」です。あれがゼルダだと思ってる人も多いかもしれませんが、あれはリンク。リンクがどれだけ頑張って伝説を残しても「ゼルダの伝説」ですから、切ない状況ですね。

「マリオ・ブラザーズ」が、「ピーチ・シスターズ」になってるようなものです。姉妹誰やねん。またはドラえもんの夏休み映画が、必ず「のび太の○○」とタイトルがついてるのにも近いかもしれません。ドラえもんがいくら活躍しても、のび太のおかげ。悲しい。ちなみに自分が夏休み映画のドラえもんだったら、必ず冒険に出木杉くんを連れていきます。たぶん上映10分くらいで全部解決する。

話がものすごくズレましたが、とにかくリンクくんが、ゼルダ姫のために頑張るゲームです。そして今回、設定として、「以前に最終ボスに滅ぼされた時代から、100年たった世界」という内容になります。

そしてリンクは100年のあいだ眠っており、当時の記憶がまったくありません。そのため少しずつ思い出しつつ、状況を把握していく…ということになります。これ、非常にウマイなぁ、と。リンク=プレイヤーで、「思い出す」ということを通じてプレイヤーが今の状況を理解していけるわけですから、リンクに感情移入しやすくなっています

より道と本道の関係性

そしてこの「思い出す」ためには、世界の中で特定の地点に立つ必要があり、それが全部で12コほどあります。この地点は「そこの風景写真」から推察する必要があり、「あ、西郷さんが見えるから上野公園だ」とか「いつも本日閉店って叫んでる人がいるから、アメ横のあのお店だ」など考えなくてはなりません。重ねて、台東区のせいで伝わりづらかったら申し訳ありません。何にせよ、色々と記憶を思い出していくわけですが、そこではゼルダ姫とリンクのドラマが描かれています。

非常に美しく素敵なやりとりもあるのですが、中には「ゼルダ姫が自分の力をうまく操ることができず、リンクに八つ当たりする」という切ない記憶もあり、ていうかその比重が結構多く、それでいてゼルダは「リンク助けて、早く最終ボス倒して」とプレッシャーを掛けてくるので、リンクとしては「あぁ…」と、本道を思い出して、軽く冷静になります。あ、ほこら探したり、コログの実を集めたり、ムダに敵を燃やして楽しんでる場合じゃないや、みたいな。

これある意味、休日のお父さんとかに通じるかもしれません

休みだから色々と遊んでると、上司から「明日のプレゼン資料、大丈夫?」と催促されたり、給与や出世の状況について奧さんにプレッシャーを掛けられてハッとするかのような。そんな状況を象徴しているのではないかと。ゲームでは普通にやれば最終ボスは必ず倒せますが、現実では上司も奥様も倒すのは至難の業なので、現実の方がよりハードかもしれません。

何にせよ、ゼルダの伝説、現実にも通じる非常に含蓄深いテーマも含み、素晴らしいゲームだと思いました。ゼルダも、もといリンクも頑張ってるんだから、僕たちも頑張らないと、みたいな。

人生のがんばりゲージが減るのと全力で戦いつつ、ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

image by: Jair Fonseca / Shutterstock.com

大和まや・ゆうきゆうこの著者の記事一覧

「100億円手に入れた人と、事故で重傷を負った人。半年後により幸福を感じていたのは、どっちだと思いますか?」。この中に、あなたの知らなかった驚きと感動がある。恋愛と仕事を成功させる秘訣。悩む前に、1号だけでも読んでみてくださいね。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 セクシー心理学! ★ 相手の心を7秒でつかむ心理術 』

【著者】 大和まや・ゆうきゆう 【発行周期】 週に1度、宝石が届きます。

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け