現役アナウンサーが指南。3ステップで「会話への恐怖」克服術

 

物理的アプローチによるコントロール術

まずひとつめ、「物理的アプローチ」について。これは簡単に言うと、話す自分を何とかしようと思う前に、話す自分の環境から、話しやすい状態にしちゃう、ということです。具体的には、相手との距離や位置関係、モノの介在などを変えてみること、などが考えられます。

一番簡単なのは、相手との距離をとることです。例えば職場で上司に、「〇×君、あの件、どうなってる?」と声をかけられた時。すぐ近くまで行って、上司の顔を間近に大きく見ながら答えるのは、プレッシャーになる人にとっては、かなりのプレッシャーだと思います。そんなとき、物理的アプローチをとるならば、ちょっと離れた状態で、話し始めてしまうのです。

もっともこれは、重要かつ詳細な内容を遠くから話すわけにもいきませんから、自分の感想、思い、感情、要するにこういうことという「ざっくり結論」など、ちょっと遠い距離にもってこいの内容から、話し始めるわけですね。

「〇×君、あの件、どうなってる?」
 ・「あの件ですか、もう、ばっちりですよ!!」
 ・「いやいやもう、きつかったっスよ~」
 ・「あの後、先方の誰々さんが大変だったんですよ~」

とかね。

こういう話し方に効果があるのは、何より、声をかけた相手方(ここでは上司)が、あなたが近づいて話す前に、柔軟な話し方を準備してくれる、という点です。

実は、あなたを呼んで報告させようとしている上司のほうも、かなり身構えた状態なんですよね。ところがあらかじめ、離れたところから、ざっくり一言を言ってもらえると、その身構えが解け、しかも、話を聞く論点が絞られるので、心理的にも、内容の面でも、やりとりがとてもスムーズになるのです。

「ばっちりですよ!」と言っておけば、「ほうそうか、うまくいったか!」。「誰々さんが大変だったんですよ~」と言っておけば、「誰々さん、どうなった?」などなど。これ、呼ばれて話さなくてはいけない、考えようによっては苦しい環境のはずなのに、完全にこっちペースになってますよね。

しかもこのような、ちょっと離れた距離で話すということは、ちょっと大きい声で話すことになるわけですが、このちょっと大きい声で話すのが、精神的にも肉体的にも、とても良い効果を生み、それこそ緊張を集中に転換させるきっかけを与えてくれるのです。

そのほか、物理的アプローチとしては、相手との位置関係を変えて、正対するのではなく、斜めや、できるなら横に並んでしまう、相手と自分の間にモノをかます、など。例えば、見てほしい資料を自分と相手の間に置いたり、相手と横に並べるなら、その資料を相手と一緒に見る、など。両者の間にモノを置くことで、それがワンクッションになりますし、横に並んだり、共に同じモノを見たりすることで、話す両者が、いってみれば「仲間化」するんですよね。

このように、話す自分と聞く相手、その物理的な関係性を変えるだけでも、自分が話す時の気分が、まったく違ってくることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。

肉体的アプローチによるコントロール術

自分が自分が、と思い過ぎてしまうのが、精神的なプレッシャーになるのなら、その熱くなりすぎている頭部から、他の部位に意識を散らそう、というのが、肉体的アプローチです。

具体的には、

  • 深呼吸
  • 腹を膨らませたりへこませたりする
  • 肛門を締める
  • 屈伸
  • 筋肉や関節を整える柔軟体操
  • マッサージ
  • 拍手
  • 体をたたいたりつねったりして、痛覚を味わう

など。

もちろん、「〇×君、あの件、どうなってる?」と上司に呼ばれてから、柔軟体操をするわけにもいきませんから、その時々で、できることを、模索してみると良いと思います。

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