新型コロナウイルスの危険性について昨年12月に警告した李文亮医師(34)が7日未明、ウイルス感染が原因で死去したと日本経済新聞、朝日新聞、テレ朝ニュース、BBCなどが報じた。李医師の警告は、当局による「原因不明の肺炎患者発生」の発表より早く、訓戒処分を受けていた。死を報じた中国メディアは、記事やツイートを削除しているという。
当局発表前からネットで警告した医師、新型肺炎で死亡https://t.co/nL74bv8IWC
昨年12月末に、市当局が「原因不明の肺炎患者発生」を発表する以前から、「市場で重症急性呼吸器症候群(SARS)が確認された」などとネット上で警告。警察当局は「デマを流した」として一時拘束した。 #コロナウイルス pic.twitter.com/Vh9qaFuF7m
— 朝日新聞デジタル編集部 (@asahicom) February 6, 2020
隠蔽を目論む当局からの脅迫
李医師は昨年12月、原因不明の肺炎に気づき、150人ほどの医師が参加するチャットグループに「華南海鮮市場で7名がSARSに罹り、我々の病院の救急科に隔離されている」と警告のメッセージを送信。防護服を着用し、感染を防ぐようアドバイスしていた。
しかしこの警告は、当局が「原因不明の肺炎患者発生」を発表するよりも早く、4日後には「社会の秩序を著しく乱す」「虚偽の発言をした」として告発する内容の書簡を中国公安省の職員から突きつけられる。
書簡には、「我々は厳粛に警告する。頑なに無礼な振る舞いを続けたり、こうした違法行為を続けるのであれば、あなたは裁かれることになるだろう。わかったか?」とも記載されており、李医師は「はい、わかりました」とサインした。武漢警察は「デマを流布した」として8名を一時的に拘束している。
ヒトヒト感染も隠蔽
当局は、発表から数週間「新型ウイルスに感染した動物に接触した人にのみ感染する」「ヒトからヒトへの感染はない」と主張していた。しかし李医師は、「ヒトからヒトへの感染は明らかにあった」と財新記者からの取材で回答。
李医師は、1月8日ごろに閉塞隅角緑内障で入院していた患者の症状が眼圧が正常に戻っても回復しないことから、肺部分のCT検査を行ない、原因不明の肺炎である基準を満たしていたと気づく。その後、患者の世話をしていた娘も発熱を起こしたことを確認しているのだ。李医師は、この患者が移送された当日に咳が出始め、翌日には発熱。何度か検査を受けたが、「陰性」の反応しか出なかった。感染が確認されたのはその約10日後。そして7日未明、所属していた病院が死亡を発表した。
新型コロナウイルスによる肺炎での死者は、65歳以上が8割といわれている。一方、亡くなった李医師は33歳。果たして適正な処置は受けられていたのか…これまでの隠蔽工作を見ていると、どうしても疑ってしまう。
李医師の死を隠蔽
李医師の死を報じた中国メディアは、記事やツイートを削除。WHOも追悼ツイートを削除している。
李医師死去を報じていた人民日報はじめ、中国メディアは次々に記事やツイートを削除しはじめています。
独自報道や論評を禁じた通知が出たとの情報も。
病院から危篤情報が出ているためか、他の… https://t.co/vTZ3cAIOg2
— 林哲平 Teppei Hayashi (@hwhayashite) February 6, 2020
李氏の死去を巡っては、中国共産党の機関紙で人民日報系の環球時報が先に報じた。しかしその後削除され、現在治療中との記事に差し替えられたため、情報が錯綜していました。
— ブルームバーグニュース日本語版 (@BloombergJapan) February 7, 2020
WHO公式ツイッターには失望しかない。深夜に李医師の死去を悼むツイートをしておきながら、削除した。
— Noriko Padmakshi (@niningasih) February 7, 2020
※本記事内のツイートにつきましては、Twitterのツイート埋め込み機能を利用して掲載させていただいております。
source:日本経済新聞、朝日新聞、テレ朝ニュース、BBC
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