習近平の誤算。新型肺炎の大流行で決定的になった世界の中国離れ

 

すでに韓国では、現代自動車が中国からの部品供給が滞り、2月4日以降、韓国国内3箇所にある全工場の稼働を順次停止することが報じられています。いま世界は、「世界の工場」中国と貿易関係を強めてきたことによる、サプライチェーンのリスクに直面しているわけです。

ただでさえ、中国という国は政治的思惑によって、経済を人質に取引相手国を脅迫するような国です。蔡英文政権の誕生後、台湾への中国人の観光旅行を禁止し、韓国では在韓米軍へのTHAAD(高高度防衛システム)の導入が決定されると中国国内の韓国企業を営業停止に追い込むなど、さまざまな嫌がらせをしてくる国なのです。

もともと台湾は日米とのトライアングル貿易でアジア・NIESの優等生だったのですが、中国のトウ小平が改革開放路線へ猪突猛進するに際し、台湾でも西進(中国)か南進(東南アジア)かといった、進出をめぐる論争がありました。西進、つまり中国へ進出(投資)する場合には、産業の空洞化が避けられないという予言・警告がありましたが、結局、そのとおりとなりました。

1990年代に入ると、台湾のIC、IT企業をはじめ、食品産業などが西進したため、台湾産業の空洞化が現実となり、債務国家だった韓国にも追い越されることになりました。台湾経済の不振により、日本の失われた20年に近いかたちで、カネ、ヒトが中国市場に吸い込まれて行ったのです。

しかも、情報統制や言論統制を強めているので、官製報道ばかりで正確な情報が入らないし、一度、進出してしまうと撤退も難しい。チャイナリスクはますます高まっているわけです。

中国に7店舗を展開しているワタミは、今回の新型肺炎を受けて、中国完全撤退を発表しました。ユニクロは中国の370店舗、無印良品は半数以上の店舗を休業とせざるをえませんでした。

ユニクロ、中国370店休業=無印良品も半数に拡大―新型肺炎

経団連など大企業の連合団体は、つねに中国の顔色を伺い、日本国首相が靖国参拝することも反対してきました。日本人の誇りよりも金儲けのほうを選んだということなのでしょうが、中国共産党一党独裁の国と手を組むことの恐ろしさをもっと理解するべきでしょう。

前回の「新型肺炎の流行で世界が気づき始めた『チャイナリスク』の巨大さ」でも述べましたが、一党独裁の国だから、正確な情報は出てこないか、官僚の忖度によって遅れるわけです。民主主義の国であれば、言論の自由は必要不可欠ですが、一党独裁国家にとっては言論の自由は決して容認できないものです。政権批判が革命につながる可能性が高いからです。

そのため、疫病や災害が起こっても、なかなか実態が表に出てこないのです。ずさんな対応、対処の遅さなどが批判の的になるとまずいからです。

今回、習近平が初動体制に誤りがあったと、過ちを認めた発言をしたかのような報道がありました。しかし、実際に原文を見てみると、どこも自らや共産党の過ちなど認めていません。それどころか、「世論操作強化」すなわち言論統制をさらに強めるように指示しています。

習近平指導部、対応の誤り認める 新型肺炎で初動に遅れ

なぜこのような報道が出るのか不思議です。日本のマスコミにはまだ中国への憧れを抱いている記者がいるということでしょうか。中国共産党は「絶対無謬」でなくてはならないのです。そうでなくては、一党独裁の正当性がなくなるからです。

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