2020年4月、民法の改正によって、「身元保証書」の取り扱いが大きく変わります。そもそも身元保証書があまりピンとこないかもしれませんが、民法によって定められた「企業と身元保証人との契約」です。法的効力を持つ大切な契約なので、人事労務担当者はきちんと知っておくべき情報といえます。そこで、無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』の中では、この改正で何が変わったのか、具体的に契約書をどう変更すればいいのかを解説しています。
身元保証契約の極度額
改正民法第465条の2第1項に基づき、身元保証契約書や土地建物賃貸契約書の個人根保証契約の保証人に責任は、極度額を限度として履行責任を負い、極度額の定めがなければ、その契約は無効となる。
顧問先にこのアナウンスをすると、では身元保証契約書をどのように変更したら良いのか?という問い合わせが多くなった。
深田GL 「民法が改正されて、身元保証契約の書面、変更しないとダメだろ。あれって、うちの事務所の原本、もう変更したっけ?」
E子 「いやぁ~、まだやったと思うよ。私もしてないし、誰かもしてないと思う~」
深田GL 「そうや、新米くんにしてもらうっていうのは?」
新米 「え?なんですか。ボクにできることはやりたいです」
E子 「身元保証契約書だけど、極度額の定めが入るようフォーマット変更しておいてよ」
新米 「あ、はい。わかりました。ところで、そもそも身元保証人って、お金持ちになってもらわないと意味がないっていうことはわかるんですけど、具体的にはどういう…」
深田GL 「え?今までの契約書みてたらわかるやろ?しっかり見てる?」
新米 「あ~。そういえば、書いてありました。印鑑証明書を出してもらうとか、仕事持ってるか、自宅持ってる人とか…」
深田GL 「そうや、書いてあることはしっかり見て、気づいて、そこから学ばなあかん…」
新米 「学ぶ…。何を?」
E子 「はぁ~?!書いてあることはしっかり読む。読んで覚えるだけでなく、自分で仮説を立てて実証もすること!それをいつもする、何回も繰り返す!頼むわぁ」
新米 「すみません…そこまで考えたことありませんでした」
深田GL 「じゃ、質問だよ。身元保証人は自宅所有者を原則としているのはなぜ?」
新米 「それは、お金を持っていない人に保証人になってもらっても いざというとき、困るからですよね」
深田GL 「そうだね。本人が会社に多大な損害をかけて、逃げた、おまけに保証人も行方知れずになってしまった…なんてことになったら、身元保証契約の意味がないよね?」
新米 「お二人ともいなくなってしまう??そっかー、そう言えばそういうこともあり得ますね」
E子 「では、身元保証人に単に押印してもらうだけでなく、印鑑証明書をつけてもらう意味は?」
新米 「身元保証人になってもらうにあたって、本気かどうか、本気度をみせてもらう!?ってことなんですかねー」
深田GL 「(笑)確かにそれもあるかもだね。ただ、署名押印っていっても本人が書いているかどうかってわからないだろ?」
新米 「へっ?どういうことですか?違う人が書くってこと…ですか?」
所長 「そういうこと、それと同じことが昔うちにもあったんだよ。社労士試験の合格者を採用し、父親の署名押印、印鑑証明の提出があった。 特にコメントがなかったので、そのとおりだと思っていたら、たまたま面談で保証人の話題になって、父親が書いたのじゃないっていうんだ、驚いたね」
新米 「誰が書いたんですか?」
所長 「お母さんだったんだ」
新米 「あらぁ、お母さんだったんですか」
所長 「後から知ったけど、身元保証人以外の人が署名していることって、現実には多いそうなんだ」
新米 「それって、署名じゃなくて、記名押印ですよね。日本って、署名にまだそういう感覚を持っている方が多いんでしょうか」
深田GL 「そうかもしれないね。ところで、職務担当や勤務地の変更や昇格等を会社は身元保証人に通知する義務があるだろ。通知を怠ったとしても、責任追及ができなくなるわけではないけれど、損害賠償額が減額となる可能性はあるよね。」
新米 「連絡がつかないこともあるんじゃないですか」
所長 「そういうこともあるだろうね。で、今回のフォーマットには身元保証人のメールアドレスを記入してもらえるようにしておいてほしいんだよ」
新米 「メールアドレスですか?」
所長 「そう。身元保証契約書に身元保証人のメールアドレスを記入してもらい、そこにメールすれば内容証明で通知したのと同じ効果があるんだよ」
G社社長 「え?、そうなんですか~?それは知りませんでした。メールアドレスが書けるようにしておきます」
深田GL 「通知書のフォーマットも頼むよ」
新米 「はい、わかりました」
所長 「あと、会社の本人に対する管理監督の過失の有無が問われると、下位者が被った損害全額を身元保証人から取れない場合もあるから、不始末があれば、その都度始末書を取っておく等の労務管理は必要であることは、顧問先さんにはしっかり伝えていくようにしてくれ」
全員 「了解です」
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