危機管理の専門家がクルーズ船の下船対応を危惧。反論にもひと言

 

2番目の「現場は法律に阻まれている」ですが、これも、「だから、どうするんだ!」と言いたい。官僚機構が法律を守って仕事をするのは当然です。しかし、法制度が十分でない結果、適切に対応できないケースはそこかしこに見られます。法制度の改正を待っても構わない場合ならともかく、国民の生命財産に関わる場合は、それでは困ります。法を守って国が滅びる結果になりかねないからです。そこで政治の出番です。

1977年9月の日本赤軍によるダッカ日航機ハイジャック事件の時、要求に従って600万ドルの身代金を支払い、6人の収監メンバーを超法規的措置で釈放した福田赳夫首相は、「一人の生命は地球より重い」という言葉を残しました。これは、テロリストの要求を受け入れてはならないというテロ対策の鉄則を無視し、テロリストの同様の犯行を助長するような姿勢だと、国際的に批判されましたが、新型肺炎は違います。日本国民の安全を図り、世界に貢献するためにも、政治は前に出なければなりません。

安倍首相は、数週間~数か月の期限を切って超法規的措置を講じ、その間に与野党を挙げて特別措置法など必要な法制度を整えるのです。それが政治のリーダーシップというものではないでしょうか。それができないでいるとしたら、役人におんぶに抱っこの傀儡政権という汚名を残すかも知れません。

日本本土から離れた場所で戦争が戦われているのに、非常事態だからということで超法規的措置を講じるといったことは、絶対にあってはならないことです。しかし、新型肺炎は国民全員が最前線に置かれているのと同じような有事なのです。それを座視することは政治の責任放棄です。

3番目の、「加藤さんを過大評価してませんか」には、こう答えておきましょう。「ほかに誰がいるの」。加藤さんは専門家ではないから、ときどき間違いもするし、肝心の厚労省自体の対応も問題があるから、批判が出るのは当然です。その矢面に立つのは大臣です。「先が読めていない。危機管理ができない」といった罵声も浴びます。

しかし、その肝心要の大臣が、腹が据わっていて、頭脳も明晰な人物でなかったら、どんなに混乱した事態が生じるか、わかったものではありません。いまの自民党を前提とする場合、ほかに適任者として誰がいるのでしょうか。

とにかく、色んな意見が飛び交うのは結構なことですが。無責任な言辞は、時に腹が立つこともあります。聞いた風なことを言うんじゃない!と、みんなで空に向かって怒鳴ってみましょう(笑)。(小川和久)

image by: A Periam Photography / shutterstock

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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