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NY在住日本人社長が日本人ビジネスマンに問う「ゴールはどこ?」

会議を少なくするための会議がなかなか終わらない、日本のビジネスシーンの“あるある”ですね。メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者でNY在住20年、『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さんは、日本とニューヨークのビジネスマンの一番の違いは、ゴールにフォーカスしているか否かだと語ります。細かい発音や単語にこだわって外国語を学ぶ目的を忘れたり、企画書のクオリティを追求しているうちに商機を逃すなど、ニューヨーカーには見られない価値観のようです。

コンディションとリザルトの相違

日本での講演会や、ニューヨークにいながらにしてZOOMでの日本の人たちへのセミナーを通し、よく聞かれる質問はやはり、ニューヨーカーのビジネスの仕方、ひいては生き方、です。

みなさんすごく謙虚、だな、と思います。ニューヨーカーに、日本のビジネスマンの仕事の仕方をそう聞かれることはない。日本のビジネスマンを見習えよ、と思うことだって多々あるのに、いつだって彼らは自分たちがNo.1だと思っています。逆に日本のビジネスマンは少しでも「ニューヨーク流」のビジネスを参考にしようと、聞いてきます。もし「ニューヨーク流のビジネス」と言うものがこの世に存在するのなら、の話ですが。

もちろん、ニューヨークに比べ日本が劣っているところなんて何一つありません。逆もまた然り。どちらが上、ということもないと思います。ただ、日本の方と話をして、ニューヨーカーと明らかに違う価値観があるなぁと感じることもあります。この20年、その違和感を感じつつも、明確な言葉で説明できませんでした。ニューヨーカーと東京のビジネスマンの一番の大きな違い。それを最近、やっと的確な言葉にできるような気がしています。

それを僕は、勝手に「コンディション(条件)と、リザルト(結果)のディファレンス(相違)(というか、一貫性のなさ)」と僕は呼んでいます。←さっぱりわかんないよね、タイトルだけだと。

要は、何か事業をする中で、日本のビジネスマンは、その過程を驚くほど、重要視されます。重要視どころか、最終的なゴール以上にまったく別の価値観で切り取っていく。対するニューヨーカーは、めんどくさがり屋なのか、わがままなのか、ゴールそれ自体を当然の如くフォーカスしていく。(ここまでの説明でも、まださっぱりですよね、でも)これが僕が個人的に、一番感じる、ニューヨークと日本の違いなんです。

ということで、今からわかりやすい事例で、わかりやすく説明していきます。ただ…僕の(思っている)「わかりやすい例え話」は、うちの奥さんも、うちの社員も「余計、わかりづらい!」と不評です。「例え話で余計、わかりづらくさせるのって、社長くらいなモンです」と言われます。なので、さらにわかりづらくなるかもしれない例え話をひとつ。

例えば、僕は、生まれてから46年間、初対面やそう親しくない人、数回しか会ったことがない人に、次のセリフをよくよく言われます。おそらく数十回言われてきました。「B型で、女兄弟がいる末っ子だよね?」と。これ、本当によく言われます。笑いながら言われます。末っ子で、多分、お姉ちゃんがいるんじゃない?と。

理由は、お調子モノで、自己中心的。こだわりがあって、褒められ好き。甘え上手で、男女に関わらず、包容力のある人が好き。年上に可愛がられるけど、一貫性がない。だから、だそうです。確かに。すべて当たってる。100%的中。一つ残らず、ドンピシャです。

で、ここで重要なのは僕が「B型でもなく、女兄弟もいない」ということです。僕は0型で、末っ子だけれど兄しかいません。つまり、リザルト(結果)の方が外れている。と言うことは、その過程のコンディション(条件)が当たっていたとしても、ゴールに対しての意味がなくなってしまう。

条件がすべて該当しても、最終的に導き出す答えが違っているなら、その条件は見直さなくてもいいけど、関連性がないと結論づけなきゃいけないはずです。「いーや、そんなことはない、君はB型でお姉ちゃんがいるはずだ」と言われても、事実は違う。つまり、結論が出てるんだから、その過程の条件の方はもう、どうでもよくない?ってことです。

ほら、何が言いたいのか、わかりづらい例え話で、書いてる僕自身がわからなくなってきました。それでは、次こそ、わかりやすい例え話を。

外国語を勉強する人のゴールはどこ?

先日、ニューヨークはハーレムで、ある恩人が亡くなりました。彼は日本人ですが、何十年もハーレムで活躍し、アポロシアターの顔になり、多くのソウルミュージシャン、R&Bシンガーに愛されていました。日本人史上最大にハーレムという街に貢献し続けました。そんな彼のメモリアル葬に出席し、日本人として唯一、スピーチをさせてもらいました(日本でいうところの弔辞を読ませて頂きました)。

ハーレムのど真ん中にある有名な教会。多くのブラックの方々が見守る中、10分ほど僕の不細工なカタコト英語で、故人との思い出、そして、どれだけ故人がハーレムに貢献したか、どれだけ故人がアメリカ人にも日本人にも愛されたかをスピーチしました。終わると同時に、参列者の皆さんがスタンディングオベーション。拍手してくれ、中には涙ぐんでくれる人も見えました。

壇上から降りると、次のスピーチに控えていた有名なソウルミュージックの歌手であるでっかい黒人のおばさんが、僕を不意に抱きしめ、涙ぐんだ声で「素晴らしいスピーチだったわ」と言ってくれました。故人の人望と天国からの笑顔まで届いた気分になれた夜でした。

で、そのスピーチの様子をうちの社員が動画で撮っていたらしく、後日、それを見た日本の共通の友人と電話で話した際、いきなりこんなアドバイスを言ってきました。「RとLの発音が曖昧だよね。thの発音も聞き取りづらかった。あそこはEveroneではなく、Everydodyって単語使った方がいいかも」ちなみに、その彼女は英語を話せません。というか現在、英会話学校通い中。勉強中だからこそ、そういった点が気になったのでしょう。

確かに、彼女のいう通り、僕の英語の、特にRとLの発音はわかりづらい。thの発音も苦手です。everybobyという単語がその場で適切だったかどうかはなんとも言えませんが、彼女の指摘はあながち間違いではありません。正しいと言える。

ただ、日本人が英語を勉強する理由はなんでしょう。ゴールはどこでしょう。人によっては、編入を希望する大学のTOEFLのスコアの為とか、TOEICでハイスコアをとってサラリーを上げる為、という人ももちろんいるでしょう。でも、外国語の習得の基本ゴールって「他言語の外国人とコミュニケーションをとる」為、というのが、最も基本的な目標ではないでしょうか。

彼女が英語の勉強するのは、アメリカ人とコミュニケーションをとる為という最大の目的があることを僕は知っています。たとえて言うなら。たとえば、として。「ハーレムの教会で、現地のニューヨーカーの前で、彼らに愛された故人を偲んで、心のこもったスピーチをして、彼らに喜んでもらう、泣いてもらう」言ってみればそれがゴールなのでは?

その為にこそ、英語を習得するのではないでしょうか。あえて言うなら、そのリザルト(結果)の前に、RとLの発音なんてどうでもいい。どうでもよくないかもしれないけれど、どうでもいい。

会議を減らそうという趣旨の会議をする、という笑い話があります。会議、それ自体が目的ではなく、会議には、会社を潤わすという最大の目的があるはずです。

日本人は、僕も含め「結果より、その過程が大切だ」と言われ、育てられてきました。もちろん、1000%賛成です。その通りだと思う。でも、あまりに、その言葉を生まれてこのかたずーっと聞かされ続けてきて、「結果なんてどうでもいい」と無意識にでも思わされていないだろうか。

条件ばかりに話が集中。会議のための会議

日本の大手飲食店がニューヨークに進出する際に、コーディネートをした時、あまりにいい物件が掘り出し物として出てきました。どう考えても、手付金だけでも払って、この物件を抑えた方がいいと僕は判断しました。

日本側の窓口の担当さんは「まずは、その店に面したストリートの通行量と、そのエリアの趣向を調べてレポートにまとめてください」の一点張りでした。物件を抑えるのはそのレポートの提出後、それを元に日本側で会議に会議を重ね、検討に検討を重ね、稟議に稟議を重ねた後だ、と。

お客様なので、言うことを聞くしかない。結果、その物件がなくなっても、それはそれで仕方がないと言います。僕たちはその窓口の担当の彼が気に入りそうな、「アメリカ人でも使わないビジネス英語」をできるだけ多く使用してレポートを作成しました。

「ホント、いいのかなぁ、こんなことやって」と多少の罪悪感を感じつつ、ポテンシャルターゲットにリーチするアトラクティブなプロダクトをスタッフみんなでブレインストーミングしつつ、メイクドラマしてオブザーびんぐしていきますとか、なんとか、かんとか。彼の上司の社長から電話がかかって「そんなことやってないで、とっとと物件抑えてよ!」と言われるまで。

どうして、ぶれいんすとーみんぐして、メイクドラマして、オブザービング、するのか。表紙がキレイでナウでスタイリッシュでとれんでぃなレポートを作成するのか。リザルト(目的)はひとつ、「ニューヨーク進出を成功する為」です。コンディション(条件)はコンディション(条件)でしかない。日本に出張に行くと、みなさん、この条件の方ばかりに話が集中している印象を受けます。

バカでわがままで勝手なニューヨーカーは、すぐにリザルト(結果)を出したがる。でも、時間という有効資源も重要な要素を持つビジネスでは、こっちの方が正解なはずです。で、結果が出ない場合に、条件を見直す。適材適所の削ぎ落とされた条件が浮き彫りになる。

多分、僕たちは「結果ばかりを早急に求めても、うまく行かないよ」と言われ続け過ぎたのだと思います。高校の部活時代、大学受験、社会人の新人研修時代。「焦って結果を求めても、失敗する」「急がば回れ」「日々の見えない積み重ねこそ大切」と。

これも、「結果より過程が大切」という理屈同様、僕は1000%賛成です。焦って、結果ばかりを求めても失敗します。その通り。…でも、失敗しちゃダメなのかな?(笑)

焦って、まずは結果を求めよう。で、失敗してその経験からスタートする方が、もはや、今の時代、効率がいいんじゃないかなと思ってしまうのです。僕がお会いした日本のビジネスマンの方の多くが、過程、過程ばかりで、結果を求めてるようには見えない。なんなら、無意識に結果が出ることを避けているんじゃないかな、と思ってしまうほど。

数字のいっぱい入った企画書を作成している限りは、その最中は「仕事をしている感」もあって安心だ。ダイエットも今、体重計に乗らない方が嫌な数字を見なくて済む。体重計に乗らない限りは、「今、ダイエット真っ最中」。

渡米当初、ブルックリンで同世代の日本人男性とアパートをシェアしていました。僕がリビングでテレビを見ながら、缶コーヒーを飲んでいたところ、それを目撃した彼は「えええ!缶コーヒーなんて飲んでる!!!知ってた?缶コーヒーってコーラより100mlあたりの砂糖の量多いんだよ!!そんなの飲むなんて!!!」と注意されました。

へー、そうなんだ…と少し反省した数時間後、寝室から寝ぼけた顔でリビングに出てきた彼は「のど渇いた…」と冷蔵庫からおもむろに2リットルのコーラのペットボトルを取り出して、その場でゴクゴクとラッパ飲みして、寝室に戻って行きました。彼は毎日2リットルのコーラを飲んでいました。アパートを解約する際、糖尿病になり、治療の為に日本に帰国しました。

すべてはゴール、リザルト、結果、結論の為

たまに飲む缶コーヒー、その一場面を見て、100%正しいコンディション「缶コーヒーはコーラより糖分高い」を声高々に叫ばれても。なんの為に、「缶コーヒーはコーラより糖分高い」という情報を仕入れるのか。なんの為に、「RとLの発音」をマスターするのか。なんの為に、「最新のアプリを駆使して読みやすいレポート」を作るのか。

すべては求めているゴール、リザルト、結果、結論の為です。健康に生きる為、外国人とコミュニケーションする為、ニューヨーク進出事業を成功させる為、のはずです。いつの間にかありがたい情報を仕入れることが、thの発音をマスターすることが、会議で「ウイン-ウイン」というセリフを連発することが、それ自体が目的になっているように見えなくもない。パーティーに参加して、偉い人たちの名刺を集めては自慢する同僚は、最後までその偉い人たちに、顔すら覚えてもらえずじまいでした。

経済的に裕福になる、が最終目標なら宝くじで当選すれば達成なはずです。絶対そうなはずです。でも、その可能性が低いから一生懸命働かなきゃいけない。弁護士になるのが夢ならば、まずは司法試験を受ける。合格すればラッキーだ。でも、心配しなくても簡単には合格しないから、何が足りなかったのか、把握した上で一生懸命試験勉強をする。

一般的に先にコンディション(過程)があって、その延長線上にリザルト(結果)があるように思えますが、逆だとそろそろ気付いた方がいい。たどり着く最短距離は、まずリザルト(結果)があって、その延長線上にコンディション(条件)がある。

ニューヨーカーは、やたら焦って結果を求めます。悠長に何度も何度も会議をしない。結果が出なければ、それにフォーカスして会議をする。まずは白か黒かとりあえず判定する。

以前、弊社編集部のデザイナー二人に、書店で見かけたデザイン系の雑誌、というかムック本を手渡しました。「テキスタイルについて、すごく参考になることが書いてある。こことここのページを週明けまでに読んでいて欲しい。なるべく早めにマスターしておいて」と。一人は、横浜出身の女の子。一人はドイツ出身のニューヨーカー。

ありがとうございます、と横浜の方は、せっかく社長に頂いた本と、キレイにそのページに折り目をつけ、冒頭の「はじめに」から読み始めました。オーケー!ボス!とニューヨーカーの方は、そのページをビリビリ破って、ファイルに入れ、残りをゴミ箱に捨て、ウインクしてきました。

うーーーん、どっちも嫌だけど。ビジネス上選ぶなら、破った方。(いや、せっかく社長からのギフト、いらないページとはいえ、捨てるか?フツー、と思わないでもないけど)。週明け、完璧にマスターしてきたのも、彼の方でした。

image by: Luciano Mortula – LGM / shutterstock

高橋克明この著者の記事一覧

全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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