シリア情勢再加熱とイラク情勢複雑化。トルコとロシアの狙いは?

 

混乱極め、複雑化増すイラク情勢

このような多方面・多角的な衝突は、シリア国内はもちろん、内政不安定な隣国イラクの状況をもかき回しているようです。3月15日までには次の首相が指名される予定になっていますが、まだ成り手が決まらず、その力の空白は、イラクを地域勢力の衝突の場に変えています。

イランにバックアップされたシーア派組織と、サウジアラビアなどに支援されているスンニ派勢力、そして元イラク軍の実力者(実はISのコアメンバーでもあった)、加えて、トルコが毛嫌いし、サダムフセインも目の敵にしていたクルド人勢力が乱立する形で、イラクをめちゃくちゃにしています。

イラクは今、イラン、トルコ、クルド人勢力、そしてサウジアラビアと、米ロの争いの場となっていると言っても過言ではないでしょう。アメリカは、すでに米軍のイラクからの撤退を計画していますが、そのスケジュールが遅れ続けるのは、このような混乱の存在が理由でしょう。

そして、この混乱を最も喜ぶのが、イラク国内で一旦壊滅したとさえ言われたISの残党です。ISの残党は一旦北アフリカ諸国、特に同じく混乱が続くリビアに本拠地を移し、またLone Wolfといわれる一匹オオカミたちを世界各地にばらまくことで、ISの勢力の維持と拡大を目論んできましたが、その勢力が今、イラクに再集結しようとしているらしいのです。

ISは上記に挙げたステークホルダーすべてにとって“敵”と言えますが、かつてのようにISを共通の敵として協力することはもはやできず、それがISの台頭を許す悪循環を呼んでいます。

イラクで勢力を回復するようなことがあれば、確実にイドリブ県を巡る混乱で手薄になっているシリア国内の主要都市が再度、ISの脅威と攻撃にさらされる恐れがあります。それはまた、シリアを確保したいロシアにとっても脅威となりますし、国境を接するトルコにとっても、望まない不安定要因となります。

その不安定要因を取り除くために、エルドアン大統領はここでもまたEUに対する賭けに出ます。ニュースでも報じられている『トルコ国内のシリア難民を留めず、ギリシャとの国境を開放することで、EUに再度、難民の流入を起こす』という賭けです。

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