国際交渉人が予測した新型コロナによる世界の分断と新時代の到来

 

オンライン会議システムを提供するZoomは、その需要の拡大に追いつけず、新規に採用しようとするビジネスからの要望に応えきれていないという状況を生んでいますが、確実に拡大と成長に加速がかかりましたし、Skype BusinessやSlack、V-CubeやMicrosoft Teamsといったシステムは爆発的な利用拡大による成長を記録しています。

私も交渉や調停という仕事柄、本来は対面方式の仕事が主でしたが、現状下で移動を制限し、代わりにほとんどネットワークの遅延が起こらず、また追加のセキュリティーをかけたオンラインシステムで、紛争調停やビジネス上のディールの交渉などが行えるようになり、今後、仕事の仕方が変わりそうな予感です。

これまでの従来型の働き方や学び方のスタイルから、もしかしたらリモートでも十分仕事も学びも成り立ち、「十分これでやっていける」という気づきによって、予想よりも早くAIなどの恩恵を受けたNew Styleの経済に移行できるきっかけになるかもしれません。そうすれば、私たちの幸福度も改善されるかもしれません。もちろん、その前に新型コロナウイルスの蔓延が封じ込められることが条件ですが。

国際協調主義への回帰は実現するのか

また、今回の危機により、唯一成り立っている協調は、新型コロナウイルス感染に対するワクチン開発とウイルス情報の世界的なシェアでしょう。SARSのパンデミックが起きた2003年よりも、科学の知見とレベルは大幅に発展しており、その発展は、SARSやエボラの時よりも、ワクチン開発と対応をより容易に、現実的にしていると言えるでしょう。

すでにエボラ対策やHIV,インフル対策のために開発された既存のワクチンや薬剤が、新型コロナウイルスの蔓延の抑止に役立つというケースが発表されていますし、日本発の膵臓疾患のための薬も有効であることが発表されるなど、希望の光も見えるようになってきました。

トランプ大統領とドイツが、ドイツで開発中のワクチンを巡る小競り合いをするという、若干呆れてしまうような事態もありますが、もしかしたら、そう遠くないうちにワクチンによる大規模かつ急速な封じ込めが可能になるかもしれません。

希望は持っていたいですし、国際協調の有効性にかけたいと私は思いますが、今大事なことは、自国の利益のみをまず追及する最近の傾向を、今回の脅威を機にストップし、再度、世界が協力して脅威に立ち向かい、ともに栄えるという国際協調主義への回帰を目指すことかと考えます。

このままでは7月24日からスタート予定の東京オリンピックとパラリンピックの予定通りの開催が危ぶまれますが、もし開催できるのであれば、その機会をぜひ名ばかりの平和の祭典ではなく、本当に世界中がスポーツを通じてまとまり、また世界の平和のために心を一つにするチャンスにしたいと願っています。

私が今回書いたことは、めでたい妄想かもしれませんが、決して私は不可能だとは思っていません。とはいえ、まず大事なのは、新型コロナウイルスの蔓延がもたらす恐怖と相互不信を取り除くこと。そのためにも皆さん、しっかりと手を洗って予防すると同時に、自分から他人にうつさないための最大の努力と他者を思いやる配慮を忘れないようにしましょう。

一日も早く事態が収束し、今回の経験から学び、分かった新しい生き方を実現し、その利益を享受できる日が来るように祈っています。

image by: Evan El-Amin / shutterstock

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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